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キータ国とドーンテン一族と勇者様【7】

 ……あ〜。


 まぁ、やっぱりと言うか、なんと言うか。


 いや、うん……まぁね?

 これまでの流れと言うかさ? そう言うのがさ、やっぱりあってさ?


 破滅の女神と言うワード自体も、一回ばかり小耳に挟んでいたから、何となく……うん、本当になんとなぁ〜くその名称がユニクスの口から出て来るのは予想していたんだ。

 

 だけど、可能であればもっと面倒ではなさそうな代物が良かったんだけどなぁ……?


 私は何とも複雑な心境に陥ってしまう。

 それとなく予測はしていたし、相応の厄介事が発生しているとも思っていたけど……やっぱり実際に面と向かって言われると……普通に良い気分はしない訳で。


「……それで、だ? 破滅の女神とやらがどうしたんだ?」


「はい……その女神は、今から約5000年程前にキータの地を荒野に変えた、悪魔の様な存在で……その力は悪魔王をも軽く凌駕する……との事です」


 ……なるほどなぁ。


「そうなるのか……」


 ユニクスの話しを聞いた私は、眉をよじって頷きを返す。

 やっぱり超弩級の厄介事だったぞ……くそ。


 冷静に考えれば、かなりとてつもない問題が発生していても、なんらおかしな事ではない。

 女神イシュタル本人が、わざわざユニクスの元へと現れては、公認チートにも等しい、とてつもない勇者の力を与えて行く筈がないからだ。


 それにしても、やっぱり勇者って高待遇過ぎるよなぁ……。

 まぁ、その代償として、ふざけた問題を神様から押し付けられる訳なんだが……。


 果たして、私は真剣な顔になって答えた。


「それ、私関係なくね?」


「もちろん知ってますけどぉぉぉっ! そこは重々承知してますけど! でも、私如き若輩者の勇者には、絶対に無理な話しじゃないですか! 荷が重過ぎて過積載しちゃってるじゃないですかっ⁉︎ リダ様の力がなかったら死んでしまいますよっ!」


「分かった……華々しく散って来い!」


「何でそこまで笑顔で薄情な台詞が言えるのですかっ!」


 えぇい、やかましい!

 私はもう、これ以上の面倒事はたくさんなんだよっっ!


 聞けば聞く程、危険な香りしかやって来ない現状に、私はどうしても素直にイエスと言う言葉を口にしたくない衝動に駆られてまなかった!


 けれど、この調子であるのなら、間違いなく私はユニクスの話しに頷かなければならないのだろう。

 何だろうな? この、やたらと理不尽極まるシチュエーションは?


 だって、さぁ?

 私はユニクスの様に反則的な能力とかを、女神様から貰っている訳でも、何でもない訳じゃん?

 なのに、同じ様な形でやれと言われている訳だよ?


 もう、完全に理不尽極まるじゃないかっ!


「取り敢えず、話しを整理しようじゃないか……今回の一件は、勇者ユニクス様が、女神イシュタルに能力を与えられ、その勅命ちょくめいを受けた」


「その言い方が正しいのかは、私としてははなはだ不本意な部分が相当数ございますが……言葉としては間違いございませんね」


「女神の命を受けた勇者ユニクスは、キータの国へと旅立ち……そして、世界を恐怖におとしいれるだろう破滅の女神を討伐する。めでたしめでたし」


 ……と、言う話しの内容だよな? これは?


「……そこが大きく問題であると、私は申し上げたいのですが……」


 私の言葉に、ユニクスは不満タラタラな状態のまま声を返す。

 特段、不服になる様な事はなかったと思うのだが?


「私は何かおかしな事を言ったか? 言った覚えはさらさらないぞ?」


「確かにリダ様の言葉には一切の間違いはございません。話しの内容を極めてシンプルにすれば、主な要点はそこだけと述べても過言ではないでしょう……しかし、です!」


 そこまで答えたユニクスは『くわわっっ!』っと、無駄に気合いを入れた状態になってから、再び口を開いた。


「そこには、ラヴとロマンスがございません! 時の英雄伝や、勇者のお話には必ずラヴ&ピースな内容になると相場では決まっております! よって、私には絶対無敵のヒロインが必要なのです!」


 ヒロインと言っている時点で、何らかの矛盾を感じないのか? お前は……?


「そんな物は、単なるお話の世界だけだぞ、ユニクス? 現実と言うのは時に非情だ……ついでに言うのなら、英雄伝だって現実をありのまま書いているのかと言えば、実際はそうでもないだろう? 普通に考えてみろよ? 伝記に描かれる勇者は、かなり都合の良い奇跡とやらが良く起こってたりするけど……勇者だって、ただの人間だからな? 勇者だの英雄だのに有利な現象とか起こる物なのか? 起こる訳がないだろう?……ラヴ&ピースだってそうだ! そんな物は伝記を作った人間が後から作り出した偶像に過ぎないのだ!」


「そんな生々しい現実なんて知りたくありませんでしたっ!」


 私の正論に、ユニクスは至極感情的な顔になって叫び返していた。

 もっと現実ってのを見ろよ! 勇者なんだからっ!

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