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キータ国とドーンテン一族と勇者様【2】

 素朴な事を考える私がいる中、三位決定戦が開始され、


「参りました」


 秒で決着がついた。


 …………。


 これは、どんな茶番かな?


「……なんだ、これは?」


 私は眉を寄せた。


 理由は言わなくても分かるだろう。

 審判が『初めて下さい!』と叫び、そのままクラウチング・スタートして闘技場の外へと全力でダッシュしようとした瞬間……女神イシュタルが降参を告げて来たからだ。


 これに審判はポカンとなってしまった。

 クラウチング・スタートのポーズを取った状態のまま身体をフリーズさせていた。

 地味に格好が悪かった。


「……へ? あのぅ……本当に良いのですか? あなたは確か一年生ですし、この試合での勝敗は来年のシードにも左右されますよ?」


 審判はかなりアセアセとした顔になって言う。


「……だからこそ、ですよ? 本来なら来年のシード権になるべく関わらない様な部分で棄権しようと思っていたのですから。ただ、棄権だと御本人の経歴に傷が付くかも知れませんし……だから、ちゃんと出場して降参したと言う形を取りたいのです」


 すると、イシュタルは笑みのまま審判へと答えた。


 この話しを耳にした時……ああ、なるほど……と、私は納得する。

 

 そう言えばイシュタルは言っていた『借り物の身体』と。

 この言葉には、一切の捻りなんてないのだろう。

 普通に額面通り、誰かの身体を借りている。


 ここらを考慮するのであれば、本戦の……しかも三位決定戦まで進める様な実力なんぞ、元来であるのならなかったのだろう。


 ……ともすれば、彼女の身体を借りた駄賃代わりに、イシュタルが幾ばくかの能力を与えたりする可能性があるが、そこを差し引いてもユニクスの様な反則的な能力を与える……なんて事はしないだろう。


 極論からすれば、これは彼女の事をしっかりと考慮した上での降参宣言だった。


 仮に三位決定戦に勝利した場合、イシュタルが借りている彼女は、本戦シードからの参戦となる。

 その時、果たして彼女はしっかりと戦う事が出来るのか?

 状況次第によるが……かなり無様な負け方をする羽目になってしまう危険性だってあるのだ。


 今後のアフターケアを考慮するのであれば、彼女の持つシード権はなるべく低くしていた方が良い。

 極論からして、女神イシュタルがやっている事は、決して間違いではないな。

 彼女の実力がどの程度なのかは分からないが、確実に言える事は今の成績はイシュタルが立てた物であって、彼女ではない。


 だから、この判断は正しい。


「…………勝ったんだお?」


 他方、その頃、アリンはぽへ〜っとした顔になっていた。

 完全に放心状態だった。

 

 まぁ、無理はないかな?

 アリンは誰よりもイシュタルの強さを知っていた。

 正確に言うのなら、誰よりも先に気付いたと表現した方がより妥当かな?

 私以上に、イシュタルの中に存在する、底知れない能力を私よりも先に気付き……恐れていた。


 やっぱり、前世が人工邪神であった事が大きいのかな?

 ここに関しては、私も定かではないんだが……恐らく、ここが大きいんじゃないのかな? と思う。


 結果、アリンは戦闘が始まる前から、早くも白旗ムードだった。


 闘技場に向かわせるのも一苦労だったぞ?


 やれ『か〜たまは、娘が可愛くないんだお!』とか『あんな化け物を相手にすりゅ、アリンの事を考えないんだおぉぉぉぉっっ⁉︎』って、目に涙を溜め込んで、ギャンギャン喚きに喚いては……中々闘技場へと向かってはくれなかったんだ。


 気持ちは分かるけど……イシュタル様だって手加減はするだろうし、怖いのならサッサと降参しても構わないとアリンに伝え、更に限定人形をもう一体買う『検討』をしてやると言った辺りで、ようやくアリンは重い腰を上げた。


 ………全く、困った娘だ。

 いつの間にか、うちの娘が物欲の権化と化してしまった気がして、母親としてはかなり心配で仕方ないのだが、素直に闘技場へと向かってくれたので、今回はヨシとする。


 ま、それにだ?


 私が言ったのは『検討』であって。

 決して『確約』はしていない。


 ふふ……これ以上、無駄な出費をしてたまるか!

 一体だって、七万もするんだぞ? 七万もっっ!


 ただでさえ、人形仲間のお姫様から、似た様な物を無駄に貰って来ては、部屋を散らかして仕方ないのだ!

 部屋を散らかす悩みのタネを、七万も出してわざわざ買ってやろうとしているんだから、今回はそれで満足しておけ!


 ま、それだって本当に買うか分からないけどなっっっ!

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