加護と剣聖杯と勇者様【25】
……っ! こ、これはマジでヤバいっ!
全力で張り巡らした魔導防壁が、ガリガリとその防御力を削られて行く……っ!
ドリルの様な形をしているのは、きっと対象となる防壁を打ち破るのに最も適切な形であったからだろう。
先端が尖っている方が、より貫通度が高まる。
それは、槍の先端が尖っている理由と同じだ。
……つまるに、何もかもが理に叶った攻撃を、しっかりと効率良くやっている事になる!
「……ふ、ふふふ」
やっぱり凄いよ……お前は。
ミシミシィィィ……ッ!
私が発動している魔導防壁が、悲鳴を上げるかの様に軋み始める。
このまま行けば、ぼぼ確実に魔導防壁は破壊され……そして、私は光と闇の刃によって身体を貫かれてしまうだろう。
当たる場所は……胸元かな?
心臓に風穴が開く……そんな角度だ。
自慢にもクソにもならないが、下手すれば即死級だ!
ユニクスは、私を本気で殺す気かっ⁉︎
……だが、しかし。
私は思うのだ……ユニクスは、ユニクスなりに私へと自分の全力を……その全てを有らん限り全て吐き出して来た! と。
ユニクスなりの礼節を、私へとしっかりと見せたと言う事だ!
それなら……私もユニクスへと見せなければならない!
「あははははっっ! 凄いぞ、ユニクス! まさか、今の私をここまで追い詰めるとはなっ!」
私は笑った。
その瞬間、ユニクスは『びくぅっっ!』っと、猫の様に飛び跳ねた。
余談だが、観戦席で見ていたフラウやルミ……選手席で見ていたアリンもまた、似た様にびくぅっっ! っとした態度を見せていたらしい。
なんでか?……って?
これは、私なりに『本気で戦いますよ!』と言うサインでもあったからだ。
別に、わざとやっている訳ではないのだが……なんと言うか、自分でも無意識の内にやってしまうんだよな?
フラウは『魔王の笑い』とかほざいてた時があるけど……それは違うとだけ述べて置こう!
そこはともかく……だ?
見せてやろうじゃないか、ユニクス!
「これが……会長の力だっ!」
超龍の呼吸法 レベル9!
現状での最大レベルにまで上昇させた瞬間……身体から、とんでもないエナジーが吸われて行くのを感じる!
おぉぉ……ぐぅ……あぁぁっ……これは、かなり笑えないなっ!
しっかり意識を保っていないと、立っている事も出来ない!
だが、とてつもない勢いで吸われているエナジーに相反する形で、私の能力は著しく上昇していた!
もはや、8とは比較にならない。
その理由に、私は魔導防壁を『わざと』消し去っていた。
何故か?
理由は、わざわざ口で説明するまでもないな。
バシィィィィッッッ!
次の瞬間、私は片手で高速回転して来る光と闇の刃を払って見せた。
「……なっ⁉︎」
ユニクスは唖然呆然。
なんらかの防御手段ないし、回避手段を取って来るとは思っていたかも知れないが、まさか弾き返して来るとは思わなかったらしい。
しかも、片手でアッサリと。
その気持ちは分かるぞ?
レベル8の時点では、魔導防壁が破られた後、どうにか頑張って避ける事ぐらいしか出来ないだけの威力があった事は間違いないからな?
だが、レベルが一つ上がれば、完全に能力は爆発的に上がるんだよ。
その分、リスクも段違いに上がるんだけどな!
ドンッッッ!
私は地を蹴り、ユニクスとの間合いを瞬間的に縮めた。
恐らく、ユニクスの目には、私の姿は映らなかったのではないかと思う。
自分で言うのも変な話しだが、もはや科学的に考えると不可能にも等しいだけの速度が出ていた。
恐らく、光速の半分程度は出ていたんじゃないのか?
そして、瞬発的に光速の半分程度の速度をゼロ加速で出した瞬間に、あちこちから爆風が巻き起こり……地を蹴った部分に、巨大なクレーターが出来上がっていた。
私的には、これでもまだマシだと思えたよ。
普通の地面であったのなら、地を蹴った瞬間に底も見えない程の大穴が出来て、私も思った様なスピードを維持をするが出来なかったからな?
多分、これも女神イシュタルの効果なのだろう。
そう考えると、女神様の能力ってのは素晴らしいな!
お陰で、私は私としての実力を遺憾なく発揮する事が出来たのだから!
スドンッッッ!
……っと、私はユニクスの腹部へと鉄拳を叩き込む!
「……ぐ…ぼぉ…ぉ……っ!」
ユニクスはノーガードの状態で、私の鉄拳を受けていた。
確実に感じた、手応えのある一撃であった。
しかし、これでは終わらない。
ユニクスには『全てを守り抜く勇気』により、一撃だけは絶対に耐えられると言う、ふざけた常時発動能力が存在しているからだ!
更に『何者にも屈しない勇気』により、自分の能力を最大限に引き出している状態へと、自動的に変換されて行く。
本気で面倒なスキルだな、おいっ!




