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加護と剣聖杯と勇者様【24】

 話を戻そうか。


 ポイントは、この波動がかなりの曲者だと言う事だ。


 光の波動を受けると、闇の攻撃に弱くなり……逆に闇の波動を受けると光の攻撃に弱くなる。

 これは人間に対して有効な代物……と言うのが正解なんだろうか?

 実際の所は、私も分からないが、人間の場合は光と闇の両方を持っている。


 だからなのだろう。

 光の波動を受けると、心の中にある光の要素が増幅してしまう。

 すると、光に対する免疫の様な物が出来る反面、闇の攻撃に対する免疫力が減少すると言う、※トレード・オフ現象が発生する。


 ま、もしかしたら、私達の世界だけの話かも知れないがな?

 しかし、心が光属性になったのなら、光に対しての防衛力が生まれてもおかしな話じゃないし、それに相反する闇の攻撃に対しての防衛力が落ちてもおかしな話じゃない。


 この現象を上手に活用すると、光の攻撃を数回行った後に闇の攻撃を展開すれば、私に普段以上の有効打を与える事が可能になってしまうと言う部分だ。

 

「……やってくれるねぇ」

 

 私はニヤリと笑みを作りながら言う。


 スキルは、既にレベル8を発動させていた。

 ……正直言って、レベル8まで上昇させた事でユニクスの攻撃を『ようやく完封』する事が出来たりもするんだがな?


 後からやって来る、光ないし闇の刃を含めて全部ガードする事が出来た背景には、私個人の身体速度を爆発的に上昇させていたからに他ならない。


 ユニクスの攻撃をかわし……かつ、その一瞬後にやって来る光または闇の刃を消し飛ばすと言う行動を取る事が可能だったのは、レベルを8まで上昇させ、身体速度スピードでユニクスを圧倒していたからこそ可能にしていた。

 これで、ユニクスの動きが今の私と同等であったのなら、間違いなくレベル8では対抗する事が出来なかったであろう。


 ユニクス本体と、その刃と言う二つを相手にしている様な物だったしな?

 

 結果的にではあるのだが、ユニクスはイシュタルから貰った聖魔一体の爪によって、格上の動きをする相手ですら、対等に戦う特殊能力を得た。


 常時発動パッシブの時点で反則的だと思ったのに、更に反則的な武器まで無償提供されるとか……本当に本当に勇者はズルい! ズル過ぎるぞっっ!


 ……と、こんな事を考える私がいるのだが、古来から勇者と言うのは全人類の希望だ。

 他の人類よりも女神がえこ贔屓しまくって、公認チートにも近いレベルで強くなってしまう存在の見本みたいなヤツだ。


 そう考えるのなら、この程度の反則は仕方ない事なんだろう。


 でも、私にもえこ贔屓してくれないですかねぇ?……神様?


 こんな事を考えていた……その時だった。


 ユニクスは後方へと大きく間合いを取った。


 ……?


 いきなり後方に、逃げた?


 私は少し違和感を抱く。

 確実に何かを狙っている。


 もしかして、爪から放たれる光ないし闇の刃を私へと連続で飛ばすつもりだったのだろうか?


 ……いや、もしそうであれば、別に離れる必要はない。

 至近距離からやって来る爪の攻撃が出来ると言うメリットを、自分から捨てる事になってしまうし……フェイントで蹴り技を入れていたりもしていたから、そう言った攻撃を一切捨ててしまう事になってしまう。

 つまり、近接攻撃がメインであったユニクスが、わざわざ『自分から後ろに下がる』必要性など、皆無に等しい筈なんだ。


 それなのに……どうしてか、ユニクスは素早く後方に下がった。


 ……何をする気だ?

 私が片眉を捻っていた時、ユニクスは両手を突き出すと、そのまま両腕をクロスさせた。


「即席の思い付きですが……威力はありますよ、リダ様? 覚悟して下さい?」


 聖魔一体! 十字じゅうじ混合刃こんごうば


 次の瞬間……ぐぅぅっ!


 巨大なペケ字の刃が私を襲う。


 今度は光と闇を同時に……キッチリ50・50%にした状態で、私へと飛ばして来た!

 

 十字の状態になっていた刃は、私の元にやって来る途中で回転を始め……最終的にはドリルの様に尖った状態になっていた。

 

 ドォォォンッッッッ!


 私は即座に魔導防壁を張り、グルグルと高速回転して来る光と闇の刃を押し返そうとして見せた……見せたんだけど……な、なんだぁ? これはっ⁉︎


 私の予測が正しいのなら、光と闇、それぞれ単体であればそこまでの威力があるとは思えない。

 ……いや、正確に言うと、どちらもかなり強烈なエナジーと破壊力を誇示している事は間違いないのだが……視点を、レベル8の私と仮定するのなら、そこまでの脅威と言うレベルではなかったのだ。


 所が、どうだろう?

 光と闇……この二つが、均一に……かつ規則正しく高速回転しながらやって来ると、想像を絶する威力を私に与えていたのだ。


 まるで、これは……高温から低温へと瞬間的に発生した時に生まれる金属疲労であるかの様だ。


 基本的に物体は、熱を与えると熱膨張によって膨らむ。

 ここから瞬間的に熱を奪う……つまり、瞬間冷却すると突発的に物体は伸縮するのだが、一瞬にして熱膨張から伸縮されると、物体がその急激な環境の変化に耐えられず、元来の強度を保っていられなくなってしまう。


 これの光と闇バージョンを、ユニクスは私へとやって来たのだ!

 まさか、熱学的な物が光と闇の二つにも備わっているとは思わなかった!

 厳密に言うと、結果として熱学と同じ物に変わる様な、魔導的な作用が発生するとは思わなかった。


 簡素に言うと、私が張った魔導防壁は……高速回転している光と闇の超高速攻撃により、元来ある防御力を大幅に下回ってしまったのだ!

※トレードオフとは、一定のメリットが発生する事で同時に発生するデメリットの事。


一例として、人間の喉がある。

猿から人間への進化途中で声帯をより複雑にし、言語を発音可能にした(メリット)のだが、複雑な声帯が生まれた事で、喉の構造が狭くなってしまい、食べ物を喉に詰まらす(デメリット)が発生してしまった。


この様に、メリットを代償にデメリットが発生した時に使う言葉をトレード・オフと言う。

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