加護と剣聖杯と勇者様【23】
「では、行きますよ、リダ様……この強い想い! 熱い熱い情熱を、全て受け止めて下さい! そして、リダ様との愛の結晶をっっ⁉︎」
愛の結晶は関係ないだろうにぃぃぃっ!
明らかに関係ない所で、妙に激しい感情のベクトルを傾かせていたユニクスは、
……ブゥゥゥンッ!
両手に、謎の光が生まれていた。
右側の手には、眩い光。
左側の手には、禍々しい闇色の……何かであった。
右手の方は、一応の勇者と言う所から考えれば、まぁ理解出来る光であったのだが……その逆の手に纏っている、深淵を覗いているかの様な光は……なんだ?
私は思わず眉を捻ってしまう。
そんな中、神々しい光と、禍々しい闇の力がそれぞれに宿っているだろうユニクスの両手に……爪の様な物が装着される。
一見する限り、それは武闘などを主に主力とする物が愛用していそうな武器。
「聖魔一体の爪……と言うらしいですよ? そこに居るいけ好かない女神がくれた武器です。元来であるのなら剣の様な形になるらしいのですが、基本的に無手で戦う私を配慮した結果、この様な形になっている模様です」
……なるほど。
ある意味で、ユニクスらしい武器と言えば間違いない。
悪魔転生からの勇者と言う、光と闇のどちらも混在する特殊な存在。
それがユニクスであったからだ。
そもそも、光と闇の両方を混在させている存在と言うのは、私達人間ではあるのだが……恐らく、ユニクスが持っている聖魔一体の爪を使い熟す事は出来ないだろう。
人間は、聖魔一体ではあるのだが、どっちつかずの状態……つまるに、そのどちらでもあり、どちらでもない存在であるからだ。
しかしながら、ユニクスの場合はその限りではない。
ユニクスの場合は、完全なる闇であり……同時に完全なる光でもあるからだ。
元来であれば、そんな存在などありはしない。
例えば、100%の光であれば、そこに闇など1%もない事になる。
同じく、闇が100%であるのならば、そこに光など1%もない事になる。
しかしながら、ユニクスの場合は、どちらも100%あると言う、極めて特殊な存在……と言う訳だ。
もちろん、これはかなり矛盾している。
その数値が高かろうと低かろうと、そこに存在する割合……つまり、パーセンテージは100%内に収まる筈なのだから。
しかしながら、ユニクスの場合は、この割合がどちらも100%と言う……それ、50%・50%なんじゃね? と言いたくなる様な状態だったのだ。
これが、どうして50・50ではないのか?
理由は簡素な物だ。
ユニクスは意図的にその割合を100に変える事が可能だからだ。
極めて瞬発的に、光の力と闇の力をそれぞれ100%に変える事が出来、攻撃のたびに、その割合を素早く変更させる事で、聖魔一体の爪を最大限使い熟す事が可能なのだ。
……と、かなり知ったかぶった事を言っている私がいるんだが……どうして、この様な事を説明する事が出来たのか?
それは、実際にユニクスの攻撃を受けていたからだな?
これは百聞は一見に如かずだ。
ユニクスの攻撃が無言でそうであると、私に対して強く主張している。
よって、私は確信している。
ヤツの攻撃は、どちらも100%なのだ……と!
右手に装着されている光の爪を攻撃している時のユニクスは、完全に聖なる存在としてのオーラを放っている反面……左手に装着している闇の爪で攻撃している時のユニクスは、完全なる混沌のオーラを身に纏っている。
この……なんとも矛盾した謎の裏には、瞬発かつ変幻自在の聖魔力が備わっているからに他ならない訳だ。
本当に器用な動きしてるな?
そして、こんな事が出来るのは、ユニクスだけだと思う。
更に言うのなら、
シャッッ!
恐ろしい威力だな……オイ。
私的に、かなり呆れた。
ユニクスの攻撃を物理的に避けても、その余波みたいな物がやって来て、普通に斬られる。
……そう。
斬られるのだ。
簡素に分かり易く言うと、爪を私目掛けて振り抜いたとしよう?
この時、私がやらなければならないのは、この爪を避ける『だけ』となる。
所が、ユニクスの場合はそうじゃない。
振り抜いた瞬間、右なら聖なる力が……左なら闇の力が発生し、振り抜いた瞬間に、聖なる刃または闇の刃が発生し、私を襲って来る。
この刃は、例え一回避けたとしてもブーメランの様に引き戻って来ては、あたかもホーミング弾か何かにでもなったかの様に、しっかりと私に向かって攻撃して来るのだから……まぁ、困り物だ。
当たれば、確実にズバッと行くなぁ……これは。
挙げ句、この攻撃……いや、波動は更に質が悪い。
光の攻撃ないし闇の攻撃を避けるなりいなすなりしても、ヤツが放っている波動を避ける事は出来ない。
抽象的に別の物で言うのなら、太陽の光を完璧に避ける事なんて出来ない……と言っている様な物。
そもそも不可視に近いような代物だし、普通に考えて太陽の光を『避ける』と言う考え方をするヤツはいないだろ?
もちろん、流石の私だって太陽の光を避ける事は不可能だ。
……まぁ、遮断する事は可能なんだけどな?




