加護と剣聖杯と勇者様【18】
……っと、話しが逸れてしまったな?
そろそろ、話しを本題に戻そう。
つまるにユニクスは、最初から法則に縛られる様な生活をしてない世界を生きて来た。
だから、特に秩序を必要とはせず……むしろ、望んでもいない法則に縛られて過ごさなければならない為、全く以て迷惑な話しでしかないのだ。
ルールなんかなくても楽しく生活しているんだから、勝手に作るんじゃねー!……って、思っている訳だな?
だから、ユニクスとしては、望んでもいない秩序を、勝手に構築しては『神の秩序は絶対!』とかって、押し付けて来る神の存在はいけ好かない訳だ。
もちろん、そんな気持ちなのだからして、女神様から能力を得たい!……なんて、思う筈もないのだ。
……本当ならば。
けれど、ユニクスは自分の中にある気持ちや感情を抑え込み、己の意思を捻じ曲げてまでして、私と肩を並べる選択肢を取ったのだ。
……全く、大した根性だ。
これで百合勇者じゃなかったのなら、文句の付け所がない。
聖魔一体の勇者として、非の打ちようのない完全無欠の勇壮な姿を私の前に見せたであろう。
本当に、レズじゃなかったら完璧なんだよ、コイツは!
何処でどんな間違いが起こって、こんな残念勇者になってしまったと言うのか?……本当に残念過ぎるぞ! ユニクス!
「お前の覚悟はしっかりと受け止めた。右腕がどうとか……って話しは、置いておくとしても、お前を親しい友人として……そして好敵手として認めてやろうじゃないか!」
私は真剣な眼差しを向けながらも、ユニクスへと叫んだ。
……果たして。
「え? いや、リダ様? 好敵手とかじゃなくて良いですよ? あと、友人……って、あれですよね? 付き合う事は出来ないけど、友達なら……って感じの台詞ですよね? 相手を振る時に使う常套句ですよねっ⁉︎ そんな言葉、私は聞きたくなかった!」
ユニクスは大きく項垂れた。
……いや、私だってお前の言葉を聞きたくなかったよ。
結局の所、ユニクスの視点では、どぉぉぉぉしても私を交際相手にしたいらしい!
だから、そう言うのやめてくれない?
私は、ノーマルな人間なんだってばっ!
つくづく思うよ!
そこだけなんだよ、お前はっ!
マジで、そこだけどうにか出来ないの? そこ以外は完璧なんだから、頑張ってノーマルな女に戻れよ!
100……いいや、1000マールあげるからさぁっっ!
「分かった……仕方のないヤツだな? 後で1000マール上げるから、友達って言う事にしておけ!」
「いや、リダ様? 全く言っている意味が分からないのですが?」
えぇい! 喧しい!
「今の所はそうしとけよ! つか、今は試合中だろ? なんで、こんな良く分からない談笑してるんだ? 私達はっ⁉︎」
「……いや、そこはそうなのですが」
私の言葉に、ユニクスは地味に腑に落ちない顔をしつつ……しかし、構えを取ってみせる。
実際に今は試合中だ。
私の言い分が正しい事に間違いはなかったのだ!
「では、いきますよ? リダ様!」
ドンッッ!
答えて間もなく、地を蹴るユニクス。
次の瞬間、間合いを一気に縮めて来た。
至極当然の様に素早く、
シュバァァァァァァッッ!
周囲に衝撃波の様な物を撒き散らして、私の眼前へと飛んで来る。
……もう、音速を超える事なんて当たり前な状態だな。
音速の壁を超える事で発生する衝撃波を飛ばしながらもやって来たユニクスは、
ドガァァッッッ!
即座にガードした私の右腕に衝突する事で、派手な激音を飛ばす。
普通に考えたら、こんな音は出ないのだが……音速を軽く超える勢いで衝突した激音により、想像を遥かに超える衝突音が周囲に響いていた。
ついでに言うのなら、衝突と同時に爆発の様な音と爆風が周囲に撒き散らされて行く。
前々から言っているかも知れないが、ここらを一々書いているとオノマトペだけで、ページが埋まってしまうので省略しておくぞ?
一応軽く言って置くと、さっきから何回も『ドォォォンッッッ!』って感じの音が、辺りに一杯響いている物だと思ってくれたら嬉しい。
……自分で言うのも難だが、真面目に人間の能力を大幅に超過した戦いになってしまった気がして仕方ないな?
だからと言うのも変な話しではあるが、実況・解説をしているインさんが無駄に大人しい。
チラッ……っとさり気なく放送席に目をやったのだが、驚きで口が動いて居なかった。
……まぁ、なんつーか……そうなるよな?
私は地味に納得しつつも、ユニクスの猛攻を防いでいた。




