加護と剣聖杯と勇者様【15】
取り敢えず、真面目に仕事しているのなら、それはそれで構わないし、ユニクスがまだ妄想族をやっている様子なので、もう少しだけシズの解説へと耳を傾けてみようか?
『次に『全てを守り抜く勇気』なのだ、う! このスキルが発動されると、防御力が飛躍的に上昇するのだ、う! 文字通り『全てを守り抜く事が出来る』スキルで、どんな危機に襲われ様と、しっかりとみんなを守り抜くスキルなのだ! もちろん、自分自身の防御力も究極に上昇する為、恐ろしくタフになるぞ? う!』
……えぇぇぇ。
何? その、反則的なスキル?
私的に言うと、それが常時発動と言う時点で反則だと思う。
私の様に、補助スキルを発動させるとか、そう言う事をしなくても良いと言う時点で、破格過ぎる特殊スキルに感じた。
流石は神の天啓を受けた勇者のスキルと言えるだろう。
これで、レズ勇者じゃなかったのなら、本気で凄いと心から感銘を受けたんだろうがなぁ……。
『最後の三番目『何者にも屈しない勇気』なのだが……このスキルが一番厄介と言うか、凄まじいスキルなのだ! なんとダメージを受ければ受ける程、気力と体力が限界に近付けば近付いただけ、能力が上昇すると言う、とんでもないスキルなのだ! よって、最後の最後まで気を抜く事は出来ない! 何故なら、死ぬその時まで、何者にも屈しない力が、勇者・ユニクスには備わったのだ! うっ!』
……冗談だろ? それ?
つまるに、私がユニクスの能力を圧倒したとしても、ユニクスがダメージを受けて行くに従って、能力も上昇して行く為……力尽きる前で『能力が逆転』してしまう可能性もある……と言う事かっ⁉︎
普通に笑えない。
通常の人間は、傷を受けたら能力は下がる。
腕をやられたら、その分だけ動きが制限されるから、遅くなるし反応も鈍る。
疲れたら、能力が下がる。
スタミナが切れたら、嫌でも動きは鈍るよな?
……が、ユニクスは逆だと言う事だ。
体力が減れば減るだけ、スタミナが減れば減るだけ……能力が逆に上昇して行く訳だ!
アホなのっ⁉︎
なんて、面倒なスキルを付与してくれちゃってるのっ⁉︎
私的に思えた。
いくら勇者であっても、それはやり過ぎだろう?……と!
本当、私的に言うのなら、
「やはり、リダ様を本当に満足させるには、私の肉体を男にする必要性がある……あるが、しかし、女の状態で、リダ様に色々と攻められるのも悪くない……頬を赤らめ、息を荒くしたリダ様が仰向けに横たわる私へと重なる様に上へと乗って……ああっ! そ、そんな、リダ様……だめぇぇっ!」
ドォォォォォォォォォンッッッッ!
そろそろ、コイツの妄想に終止符を打たせよう……マジでキモイ。
「……はっ! リダ様? 私のリダ様は何処にっ⁉︎」
お前のリダ様なんぞ、何処にも居ないわ! このレズ勇者めっ!
「そろそろ、真面目にやるぞ? 覚悟しとけ?」
私なりに本気で爆破したと言うのに、ケロッとしていたユニクスを前にして、私はゆっくりと構えてみせた。
「そんな所に居ましたか、リダ様? さぁ……私と一緒に、先程の続きを……」
「いや、お前の脳内での私はどうなって居たのか知らないが、最初から試合しかしてないからな?」
「ふふふ……いきなりどうしたのですか、リダ様? さっきまであった大胆なリダ様は何処に?」
「だから! そんな物は最初からないと、さっきから言ってるだろうにぃぃっ⁉︎」
ああ、もうっ!
マジで、お前の脳内にいた私は、どんな破廉恥な事をしたと言うのだっ⁉︎
………。
いや、聞くのはよそう。
絶対に小説家になろうでは書いたらアウトな単語が、しれっとユニクスの口から出て来そうで怖いからなっ!
ともかく、色々とコイツは危険だ!
早々に叩き潰してやらねばっ!
思った私は、
超龍の呼吸法レベル6!
レベルを更に一段階上げた。
シズの言葉に間違いがないのであれば、現状のユニクスが『限りなく能力が低い状態』である筈なのだ。
ここからユニクスの体力を削って行き、一定のダメージを与えて行くにつれ、ユニクスの能力は上昇して行く。
言うなれば、元来であれば、体力と能力は比例しなければならない筈なのに、ユニクスは反比例してしまう訳だな!
この時点で、勇者のスキルはマジでズルイ!
私も欲しいんですけどっ!
なんてか、私にも勇者としての天啓を受ける事が出来ないのか?……そんな事を考えてしまう私がいる。
まぁ、無理だと言う事は百も承知ではあるのだがなっ⁉︎
レベルを6に上昇させた私は、
ダンッッッ!
再び地を蹴り、ユニクスとの間合いを一気に縮めた!
「……っ⁉︎」
直後、ユニクスは大きく瞳を開き、
バキィッ!
ユニクスの右頬を綺麗に撃ち抜く私の姿があった。
うむっ!
これは、かなり手応えたがあったな!




