加護と剣聖杯と勇者様【14】
まぁ、何にせよ。
私としても、簡単には勝たせては貰えないと言う事実に、一抹の不安と……期待が生まれている。
一抹の不安と言うのは……まぁ、あれだ。
私の能力をユニクスが上回った場合の危険性……と言う奴だな?
あのレズなら、マジで私を襲い兼ねない!
現時点だって、隙あらば人の下着をくすねる程度の事は当たり前にやって来ているからなっ⁉︎
この調子で、下着のみならず中身までテイクアウトされたら、たまった物ではないっ!
……反面、期待もある。
正直に言うと、こっちの方が少し高いかな?
やはり、私にとって好敵手と呼べるだけの存在は身近に居て欲しいし……ライバルは強ければ強いだけ燃えると言う物だっ!
ダンッ!
私は地を蹴った。
どう言う訳か?
ユニクスは、さっきから様子を見るだけで、こちらに攻撃をして来る気配がない。
何かを狙っていると言うのか?
……むぅ。
正直、ちょっとユニクスを考えている事が分からない。
否、違う。
「この力があれば……リダ様の唇を奪い、そのまま舌をなぞらせる形で首筋に……はぁはぁ……そして、そのままリダ様の胸元へ……っ⁉︎」
コイツは単純に妄想しているだけだ!
ああ、もうっ!
マジでバカなのか?
それとも、私の事を馬鹿にしていると言うのかっ⁉︎
どちらにしても、私にとっては腹立たしい行為を、しれっとやっていたユニクスが居る中、突進して来た私の右拳がユニクスの眼前へとやって来ては、
ガシィッッ!
即座に止められた。
右手一本で、アッサリと。
え? 冗談だろ?
レベル5まで上がっているって言うのに……これすら止めて来るのかよっ⁉︎
思わず、内心で動揺が隠せない私がいる中、
ブンッッッ!
カウンターとして、ユニクスの左拳がやって来た。
うわぉっ!
更なる追撃のモーションを見た私は、立て直す為に後方へと飛んだ。
今度はユニクスが追い掛けて来るかと思いきや……全く動く事なく、
「あの女神……パーティ・ゲームを持って来た時は、おおよそ女神とは思えない事ばかりやって来た奇人だったが……どうやら、ホンモノだったのか……ふふ、ふふふ……勝てる、勝てるぞ! あのリダ様に! あははは! やったぞ! ついに、私は……私は、リダ様を色々と喜ばせる権利を手に入れたのだ!」
私の背筋に怖気が走る様な台詞を口にしていた。
その様子から見るに……どうやら、レベル5では対応出来ない模様だ。
参った……私の予想を大幅に凌駕する程の実力だぞ……おい。
さっきの攻防で早くも勝利を確信していたのか? ユニクスは未だ己の妄想から抜け出す様子がない。
これはこれで、軽くムカつくんですけどッ⁉︎
私が地味に『イラッッ!』とした感情を心の中に生み出していると、
『ユニクス選手、余裕です! あのリダ・ドーンテン選手を前に、余裕の立ち回りを見せております! これは凄い!』
インさんの実況が入る。
……まぁ、確かに傍目で見ていても、そんな感じになってしまうんだろうな?
だけど、インさんよ?
実は、まだ……私『も』本気には至っていないんだぞ?
『う! 今のユニクスは匿名希望のイシュタルによって、三つのある勇者の力を手に入れたんだ、う!』
インさんの言葉に、シズが解説を入れる。
まぁ、当たり前かも知れないが、普通に解説者らしい事をしていた。
ついでに言うのなら、私も知らない事だし……ユニクスもユニクスで『いや、しかし! リダ様を口と指だけで喜ばせる自信はあったとしても、満足させる事は出来るだろうか……』とか何とか、かなり危険な台詞をブツブツと……挙句、真剣な顔になってほざいていた。
普段なら、秒を必要せずに爆破する案件ではあったのだが……今回は見逃してやろう。
私はシズの解説が気になったのだ。
『三つの力……ですか?』
『そうなんだ、う! 三つの勇気……『全てに立ち向かう勇気』と『全てを守り抜く勇気』と『何者にも屈しない勇気』の三つなんだ、う! この勇気は、勇者だけが使える特有の自動スキルで、発動するまでもなく、勝手に常時発動している。言うなればパッシブの一種なのだ!』
そんなパッシブがあるのね。
……やっぱり、勇者は色々と反則的な存在……と言う事か。
勇者と言う存在が、神に認められた特殊な存在であるから……と言うのもあるのかも知れないけれど、やっぱり依怙贔屓と言うか、なんと言うか。
この世界は、決して平等なんかじゃないと言う事を、最も分かり易い例なのかも知れない。
『まず、一つ目のスキル『全てに立ち向かう勇気』は、己の攻撃力を上昇させ、どんな逆境であろうとも打ち勝てる、立ち向かう事が可能になるスキルなのだ、う!』
シズは、普通に解説者をする形で、インさんの問い掛けに答えていた。
……何だろう?
初めて、シズが解説者をしている様な気がするぞ。




