加護と剣聖杯と勇者様【13】
そこから、私は正面へと視線を向けた。
正面には、対戦者として私の前に立っているユニクスがいる。
そんなユニクスは、私と目があったと同時に、
「……そんなに見つめないで下さい……恥ずかしいです……あ、いいえ。見つめてくれるのは嬉しいのです。なんと言うか……興奮するので!」
爆破してやりたい衝動に駆られてしまった!
いかん……いかんぞ、私。
まだ試合は始まっていないのだ!
そして、試合が始まれば、幾らでも好きなだけユニクスを爆破する事が出来る!
それまで耐えるのだ……私!
つか、さっさと開始の合図出せよ、審判っ!
「そろそろ、やろうか……?」
私はいつになく好戦的な笑みをゆっくりと作りながら答えた。
「リダ様? 何となくではあるのですが、今日はいつになく殺気立っておりますね?……もしや、私とさっきの女神に付いて、何か大きな勘違いをしておりませんか? あの女と私はなんの関係もない赤の他人ですよっ⁉︎ 何なら迷惑していた位です!」
……まぁ、そこは認めるよ。
最初、お前の話を聞いていた時は、女神様を相手になんて罰当たりな事をしているんだ……と、地味に呆れていたが……あの有様を見た結果、お前の方が正しいと言う事を実感している所だ!
「だから、嫉妬だけはしないで下さい! 根本的な誤解なのですから!」
「お前も少し誤解している様だ……私が、お前に対して嫉妬する様な事は未来永劫存在しない……つか、そんな事ばかり言ってるんじゃないよ! マジで爆破するからな!」
ああ、もう!
面倒だから、早く試合開始してくれ!
思った私は、近くにいた審判に向かって、
「早く、開始の合図をしろよ審判……」
ギロッ! っと睨みながら答えた。
「わ、分かりました!」
審判は、地味にビビりながらも頷き、
「そ、それでは、初めて下さい!」
ドォォォォォォォォォンッッッッ!
ユニクスが爆発した。
ちゃんと『初めて下さい』と言う審判のコールを受けてから爆発しているからな?
決して、フライングはしてないぞ?
ついでに言うのなら、これは試合だからな?
全然、問題はない訳だ。
……って、私は誰に言い訳をかましているんだろうな?
まぁ、良い。
ともかく、これで決勝戦も終わりだな?
さぁ〜て、後はアリンちゃんと匿名希望の女神様が戦う、三位決定戦を観客席から見物………おや?
「……これは凄い」
開幕一秒で終わったと思いきや……ユニクスは全くのノーダメージでその場に立っていた。
……ほぅ。
「これが『勇者の力』なのか……」
誰に言う訳でもなく……かつ、ユニクス本人も、ここで初めて知ったのだろう己の力に驚きを見せている中、
「マジで強くなっている様だな? 勇者・ユニクス?」
私はニッ! っと笑みを作りながら答える。
これは、シズの言っている事が大当たりと言う事なんだろう。
同時に、
「私も本気を出さないと行けない……って事か」
呟く様に答えた私は、
超攻撃力上昇魔法レベル99!
超防御力上昇魔法レベル99!
超身体能力上昇魔法レベル99!
超龍の呼吸法レベル5!
補助魔法と補助スキルを同時に展開した!
現状の私にとって、この状態で戦闘態勢……って所だ。
実際、レベルの方は7でも十分に安定して戦える程度の状態ではある。
いつぞや、アシュアが作った薬『死にそうな時に飲むと強くナールB錠』とか言う、何とも草が生える錠剤を飲んだ事により、本当に能力が飛躍的に上昇している。
ネーミングセンスは相変わらずだが、本当にアホみたいなアイテムを普通に作り出す事が出来る、その技術力に関して言うのなら賞賛に値する。
……でも、絶対に商品化して欲しくない薬だけどな! 危険過ぎるから!
話を戻そう。
この薬を一回ばかり服用している関係上、私はいつぞやリガー達と半融合していた時のレベルにまで能力が上昇していた。
よって、レベル7を発動する事も容易であり……その気になればレベル9だって発動する事が可能だ。
しかしながら、レベル7以上は単なる天体と言うか……この世界で戦闘をするには少しばかり不都合が生じてしまう。
パワーがデカ過ぎて、世界が崩壊しかねないのだ。
……まぁ、この闘技場だけに関して言うのなら、完全に私の魔導防壁が張り巡らされているので、ある程度までなら大丈夫だとは思う。
よって、レベル7辺りまでなら大丈夫なんじゃないのかなぁ……多分。
しかし、これがレベル8よりも上になると……いつ魔導防壁が崩壊してしまうか分からない。
元々、世界が崩壊してしまう程のパワーなんて、最初から想定して作ってないからなぁ……真面目な話。
よって、可能であるのならこれ以上のレベル上昇は控えたいのだ。
……まぁ、ユニクスの実力次第によっては、そんな事を言ってる場合ではないのかも知れないのだが。




