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加護と剣聖杯と勇者様【12】

『さぁ! 剣聖杯も遂に決勝戦! 決勝のカードは去年と全く一緒! これに付いてはどう思いますか? 剣聖?』


 私とユニクスの二人が、闘技場へと入場して来た頃、実況席にいたインさんが、それとなく解説のシズへと尋ねていた。


 ……まぁ、剣聖杯を盛り上げる為の実況者なのだから、この程度の事は言うだろうし、放送されるのは分かる。


 分かるのだが、だ?


『う! この二人が再び決勝に勝ち上がるのは、シズさんもなんとなく予測してたんだ、う!……だけど、この二人が勝ち上がってしまったのなら、これまでトーナメントを予選から勝ち上がって来た面々の激闘は、あんまり意味がなかったんじゃないのか?……なんて思う部分もあるんだ! う!』


 身も蓋もない事を言うんじゃないよ! と、言いたくなる様な台詞を臆面もなくほざくシズには、地味にツッコミを入れたくなっていた。


 いや、な? 言いたい事は分かるんだよ?

 予選会から苦労して勝ち上がって来たメンバーだって、優勝をする事が目的で、この本戦まで勝ち上がって来たんだと思うよ?


 だけど、結局は最終シードと言える私とユニクスの二人が準決勝で互いに勝ち上がってしまったのなら、他の面々がこれまで頑張って来た苦労って、なんだったの? って感じになってしまうかも知れない。

 けれど、逆に考えて欲しいのだ?


 その予選会に、私やユニクスの二人が最初から参戦していたのなら……本来なら予選を通過出来るだけの実力があった選手が、私やユニクスに当たってしまった事が原因で、予選不通過になってしまう危険性だってあったのだ!


 この剣聖杯は、何も優勝する事だけが目的ではない。

 確かに、優勝する事は、各選手としても最終目的でもあったろうが……実際にはもう一つの目的がある。

 この大会で活躍する事によって、世界各国に居るだろう組合長ギルド・マスターに自分の能力をアピールする場でもあるのだ。


 つまるに、まずはこの大会に出て、しっかりと自分の自己PRする場所が欲しいわけだよ?

 そこらで考えると、その途中で私達が出てしまうと、そのPRチャンスを潰してしまう訳だ!


 これらの理由を考慮するのであれば、私やユニクスの二名が最終シード枠として剣聖杯の最後に登場すると言う内容は、割と理に叶っていると思うのだ!


 だからして、来年も選手として参加する時は、準決勝からで良いのだ!

 だって、面倒臭いからっ!


 ………閑話休題。


『そ、そうですね……と、所で剣聖! この試合展開はどう見ますか? やはり、リダさんが優勢……と見ます?』


 身も蓋もない事をしれっと答えるシズに、インはさりげなぁ〜く話題を変えて来た。

 こう言う所はプロの司会者と言うべきか?

 会話術と言う物が出来ているなぁ……と思う。


 彼女の名前が『イン・タヴュア』なのが可哀想になってしまうまでに、アナウンサーをしているんだよな? インさんって。


 もう、この際……改名して『アナ・ウンサー』にしても良いんじゃないのかな?

 でも、名前がアナさんだと、アナをやった時は『アナ・アナ』になるのか? う〜ん……。


 それはそれで、なんかヘンテコな名前な気もする。


『リダが優勢と言いたいけれど、今のユニクスには勇者の力が備わっているんだ、う! さっきのイシュタル……あ〜。えぇと、匿名希望のイシュタルがユニクスに特殊な力を与えてた〜! うっ!』


 インさんの問い掛けに、シズが又もや身も蓋もあった物じゃない台詞を口にしていた。

 匿名希望のイシュタル……ってなんだよ?

 もう、匿名でもなんでもないじゃないか……。


 私的には、もはやツッコミを待っているんじゃないのか?……とか思ってしまう。


 しかも、シズの奴……途中で『私は空気を読みました!』って感じで言い直してるからな? しかも、言い直した結果、匿名でもなんでもない台詞をほざいてるからなっ⁉︎

   

 きっと、この放送を耳にした、匿名希望の女神様は本気で怒ってるんじゃないのだろうか?

 その内、女神の怒りを買って、放送室がまたもは謎のアクシデントが発生する気がしてならない。


 取り敢えず、私の手をわずらわせる事なく、放送席が再び爆発する可能性が出て来た所で、


『シズさんの予測に間違いがないのであれば、勇者の力は『あらゆる困難に立ち向かう勇気』を得られる、勇者の能力なんだ、う! この能力はとんでもなく強いのだ! シズさんも大昔に女神からの天啓を受けた勇者と戦った事があるけれど……剣聖印を使って、ようやく勝てた程の相手! さしものリダであろうと、油断していたらアッサリやられてしまうんだ! う!』


 シズが珍しく真剣な顔になって口を開いていた。


 ……ふむ。

 どうやら、ここだけはマジらしい。


「……なるほど」


 私は誰に言う訳でもなく呟き、短く頷いた。

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