表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1201/1397

加護と剣聖杯と勇者様【9】

「そこは……その通りだと認めます!」


 しかも認めちゃったよ!

 もう、ダメなんじゃないのか? それは女神として!


 まぁ、ある意味で嘘を吐かないと言う点に関しては、神様として素晴らしい性質を持っていると考える事だって出来る。

 出来るんだけど……なんてか、人間みたいな神様だな、おい。


「けれど、そこを認めた上で、今度こそ信じて欲しいのです!……と言うか、です? あなたは私の言う事をちっとも聞かないですし」


 ズガンッッ!


 そこまで答えた直後、匿名希望の女神様はユニクスの顔面を思い切り殴ってみせた。

 さっきまで五分五分の攻防をしていたのだが、その瞬間だけはユニクスの身体能力を超えた動きをしていた。


 まぁ、女神様は最初から本気なんか出してはいなかったから、その気になればユニクスをめった打ちにする事だって可能なのだろう。


「……と、こんな感じで叩いても、全く怯まない! 私はどうすればあなたを調教する事が出来るのか……正直、分からなくなって来ました!」


 いや、真面目な顔をして『調教』とか言うなよ……アンタ、女神様だろうに!


「当然だ! 私の崇高なる心を支配する事が可能なのは、後にも先にもリダ様のみ! それ以外の者は、例え神であろうと私を支配する事など出来ないのだ!」


「じゃあ、リダさんと同等の力を私が与えて、リダさんを『力で襲う事が出来る能力ちから』を得る事が出来ると、私が断言しても、あなたは私に従わないと言うのっ⁉︎」


「なんなりとお申し付け下さい、女神様ぁぁぁっっ!」


 ユニクスはひざまいた。

 普通に匿名希望の女神様に向かって平伏していた。


 本当にお前ってヤツは……。


 私が選手用の観戦席でワナワナと身体を震わせていると、


「そうです! その態度を私に示してさえくれれば、最初から私だって毎日あなたの夢の中に行って、ポーカーとかセブン・ブリッヂとか大富豪とかウノとかドンジャラとかしなかったのです! 私が唯一まともに勝つ事が出来たのは、運命の女神として運勢を操作する事でやっとこ逆転勝利する事が出来た人生ゲームだけと言う悲劇が生まれる事はなかったのです!」


 匿名希望の女神様は、両目から涙をドバドバ流しながらも、ユニクとの恥ずかしい出来事を語ってみせた。

 きっと女神様にとって悲劇であったに違いない。

 でも、他人からすれば、単なる喜劇でしかないぞ?

 

 そして、運勢操作なんて言う反則行為をする事が出来たのであれば、ポーカーも大富豪もドンジャラも勝てるんじゃないのかな? とか思う私がいたけど……余りにも下らないのでスルーした。

 まぁ、今の二人は闘技場で戦っているから、どの道、私の声が届くとは思ってもいないが……仮に届いたとしても言わないだろう。


 だって、物凄く下らないんだもの。


「それで、女神様! 本当にリダ様を襲えるだけの能力を、私に頂けるのですかっ⁉︎」


 ユニクスは、一気に態度を変えて言う。

 ここまで分かり易い手のひら返しを、私は見た事がないぞ……全く。


「本当です。その気になれば、あなたの憧れでもあるリダさんと、あ〜んな事や、こ〜んな事だって、簡単に出来ます!」


「本当でございますか! 嘘ではありませんよねっ⁉︎」


 ユニクスは、今にも鼻血が噴射しそうな勢いで叫んでいた。

 きっと、今が試合中であった事実を忘れているんじゃないだろうか?


「私は女神です! 嘘など言う筈がありません!」


 女神様は胸までドンッ! と叩いて頷いていた。

 もう、自分が女神であると言う事を隠す気はなかったらしい。

 最初から露骨にバレてはいたけど、そこはしっかりと人間のフリをしていて欲しかったなぁ……。


「ともかく、私の『目的はあなたに勇者の力を与える為』に、わざわざこんな事をしているんです。本当なら、夢の中であなたに与えておしまいだった筈なのに……あなたは、ウノが強すぎた」


 ウノが強すぎたから与えられなかったのかよ。

 なんでそんな事になっているんだろうか?


「……残念です……本当に」


 ああ、本当に残念だよ。

 主にあなたの言っている、失言ばかりの謎発言が。


「ですが、ようやく私を女神として崇めてくれる時が来たのですね? ならば、与えましょう。勇者ユニクスの持つ、本当の力を」


 女神様は、神秘的な笑みを満面に浮かべながら答えていた。

 その風貌と素振りだけを見ている限りだと、普通に素晴らしい女神様にみえるのだから不思議だ。


 取り敢えず、私なりに分かった事がある。

 本当の女神様は、夢の中に登場し……そこでユニクスが女神に対して礼節を重んじる態度を取り、崇める様な態度を取っていたのなら、ここまで話はこじれなかった。


 しかし、ユニクスは邪険な態度を取ってしまった為、女神様は怒ってしまい……女神の威厳と言う物をユニクスに見せようとしたのではないかと思う。


 しかしながら、女神の威厳を見せると言う過程で『何故かウノをする』と言う事になってしまい……挙げ句、コテンパンに負けまくった為、女神としての尊厳を守る事が出来なかったのではなかろうか?


 そこで、ウノでは勝てないと思った女神様が、他の勝負に切り替えた物の……やっぱりコテンパンにやられてしまい、発狂状態になってしまったんじゃないのかなぁ……。


 一つ、私は言いたい。


 女神としての尊厳を見せたいのなら、ウノやるんじゃないよ!


 そして、せめて勝てよ! アッサリ惨敗するんじゃないよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ