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女神と加護と勇者様【15】

 発動の瞬間、フラウの両手から爆炎が噴射される。


 外見だけを見たまんま述べると超強烈な火炎放射なのだが、風圧と言うか……爆発的な要素も存在している為、見た目以上に『炎以外』の破壊力が付与されている。


 恐らく、ヒットした瞬間に、身体が押し潰されてしまうまでの超高圧な気圧と、身体が木っ端微塵になってしまうまでの、


 ドォォォォォンッッッ!


 爆風が匿名希望を襲ったに違いない。


 ……当たっていれば。


 しかし、眼前で『これからあなたに攻撃魔法を打ちますよ』と言うポーズを取っているのだから、素直に『じゃあガードしますね?』って感じの、馬鹿正直な行動を取るのか? と言われたのなら、もちろん違う。


 ドラゴン呼吸法ブレイズで魔力を上昇させていた時点で、さっきフラウが放った『炎神の槍』とは、比べ物にならない必殺の一撃になり得るだろう魔法を発動する事に気付いた匿名希望の女神様は、即座に魔法をキャンセルし、素早くフラウの魔法が発動される範囲外まで飛んでいた。


 ……ふむ。

 過信もしないのな?


 匿名希望の女神様が、フラウに対抗して放とうとしていた魔法が、どんな物だったのか不明だったが……途中キャンセルして回避行動に出たと言う事は、あの場面で発動していたのならフラウの放った炎神砲撃魔法アグニ・ファイアにアッサリ押し負けてしまい、そのまま直撃を受けてしまうと即座に判断したからではないか?


 もしそうだとするのなら……刹那の判断力も俊逸しゅんいつと表現する事が出来る。


 別に、魔導師同士の戦いではなかったとしても、一瞬の判断ミスが自分の死に繋がる事は常識のレベルだ。

 故に判断力の欠如は己の死を意味し、より的確に素早く判断する事は、己を守る為には必須の能力とも言える。


「……参ったな。あの女神様は総合的に見てもフラウの何歩も先を行ってるぞ」


 私は苦い顔になって呟く。


「そうなんだお。だから、アリンは思うんだお? 今のフラウちゃんが、あの綺麗なおねーさんに勝つのは、アリンがデパートの玩具売り場で、限定版プリズム・ハーピーちゃん人形をか〜たまに買って貰えるぐらいの奇跡が起こらないと、無理だ……って!」


 なんて事だ……絶望的ではないかっ!


「そうか……それは1%の確率すらないと言う事だな……」


「1%もないんだおぉぉっ⁉︎ どんだけか〜たまはケチなんだおっ! せめて消費税程度の希望を、アリンに与えて欲しいんだおぉぉぉぉっ!」


 自分から話を振って来た癖に、1%の確率もないと言う事実を知ったアリンが、半ベソになって譲歩にもならない無謀な台詞を口にして来た。


 1%すらないと言っているのだ。

 10%もあってたまるか。


 何にせよ、鮮やかに炎神砲撃魔法を避けていた匿名希望が、避けたその場でキャンセルしていた魔法を発動させる。


 ……ほう。


 キャンセルを、キャンセルしたか。


 私は内心、器用な事をするなぁ……と感心する。


 厳密に言うと、中断していた魔導式を、途中から再び紡ぎ始めたのだ。

 通常、魔導式をキャンセルした時に、再び同じ魔法を発動する場合は、また最初から魔導式を頭の中に紡がないと行けない。


 キャンセルしたんだからな?

 そりゃ、もう一回やるのなら、初めからやり直し……と言うのが普通だと思う。


 しかし、匿名希望の女神は、キャンセルした魔法をキャセルした所でストップさせていた。

 そして、再び中断した状態の所から魔導式を紡ぎ始めたのだ。

 

 簡単な様で、結構難しい。

 ……まぁ、私は魔導があまり得意ではないし、発動キャンセル……なんて真似も根本的にはやらないから、余り参考にもならない小技かも知れないが、戦闘的な意味で言うのなら有効ではある。


 中断したと言う事は、途中からで良いと言う訳だ。

 つまり、それだけ発動までに必要となる時間が短縮されると言う事になる。


 一例を上げれば、元来五秒必要だったが、二秒から三秒に短縮される訳だ。


 魔導師同士の戦いであるのなら、この短縮はかなり有利になる。

 レベルが高くなればなるだけ、短縮の効果は有効的だな?


 高レベルになると、一秒どころか数分の一秒単位のスピードで勝敗が左右される……なんて事だってあるのだから、一秒早くなるのなら効果はテキメンと言える。


 対するフラウは、既に自分の必殺魔法を発動したばかり。


 これは詰んだな……そう、私が考えていた。


 しかし、この瞬間……私は気付いたのだ。

 フラウの目が……その瞳が、未だ闘志をはらんでいる事に!


 果たして。


 グンッッ!……っと、フラウは匿名希望の女神に向けて右手を向けた。


 ……え? いや、待て?


 さっき、必殺魔法を放ったと言うのに……もう、次が出せるのか?


 しかも……お前が放とうとしている……その魔法って。

 

 私は思わずポカンとなってしまった……刹那。


 超炎熱爆破魔法フレインダムド


 フラウの右手から……私の得意魔法が発動された。

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