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女神と加護と勇者様【12】

 なんとも不可解な事をしているルミではあったのだが、


「……審判さん、私はダメです……降参します」


 倒れた状態のまま、ルミは審判に向かって答える。


 試合が始まった事と、アリンの爆破魔法がド派手に炸裂していた事……ルミの魔力が異常なまでに上昇し過ぎて、魔力を感じ取る能力など持ち合わせて居ない一般人にすら脅威を与えていた事などなど、様々な事情を加味した結果、かなり離れた所まで避難していた審判がいたりするんだけど……どうやら、ルミの声が聞こえた模様で、


「ルミ選手、降参です! 勝者アリン・ドーンテン!」


 間もなくルミの近くまで向かい、再度降参の確認を取った上で、アリンの勝利をコールして来た。


 ………。


 なんだろう? 

 何となくではあるのだが、釈然としない。


 私的に言うのなら、ルミの補助魔法はかなりのブースト力を誇っていた。


 きっと、己の魔力を桁違いに上昇させていたルミが、あの時点で攻撃魔法を発動させていれば、アリンに強烈な一撃を浴びせる事が出来たに違いない。

 まぁ……それでも、アリンが魔導防壁を発動させてしまったのなら、完封同然に防がれてしまったろうが。


 しかしながら、ルミは攻撃魔法を『発動していない』のだ。


 そして、アリンの攻撃を受けた後……ルミは『勝ち誇る』顔をしていた。


 これはどう言う事だろう?

 何か秘策でもあったと言うのか?


 ……いや、そんな物はない。

 そもそも、秘策があったとして? もし、そうであったのなら……どうしてバッタリ倒れた後、降参宣言をするのか?……と言う話になる。


 だが、しかし。


「やっぱり強いね? アリンちゃんは? 私じゃ全然歯が立たなかったよ〜♪」


 降参宣言をした後、ムクッ! っと元気に立ち上がったルミを見て……私は確信した。


 コイツ……全力で魔導防壁を張りやがった!


 つまり、真相はこうだ?


 アリンは超炎熱爆破魔法フレインダムドを発動して来る。


 ルミは、これを食らって負ける!


 だから……だから!



 痛くない負け方がしたい!



「ヘタレ過ぎるだろうがっっ!」


 全ての事実を悟った私は、思わず虚空に向かって、大きなツッコミをしてしまった。

 

 ボロボロなのは、ルミなりの演出だ!

 きっと、あれ……その気になれば服とかボロボロになんてならないまま、完全に防げる!

 ……でも、完全に防いだら試合は続行しちゃうし『負けました』……って言いにくい!


 だから、さも大ダメージを受けましたよ?……って言う演出とかして、最後にバッタリ『自分から倒れた』んだよ、あのヘタレ姫っ!


 よって、ルミは勝ち誇った顔で言うのだ。

 計算通り……と。


 そんな計算するんじゃないよ!

 何処までセコイんだよ、お前はっっ⁉︎


 だからと言うのも変な話だが、


「……お? ルミちゃんのエナジーは全然減ってないお? 何なら無傷だったと思う……ふぐぅっ⁉︎」


 しっかりとやられたフリを見抜いたアリンがいた瞬間に、慌ててルミがアリンの口を塞いでいた。


「あは……あはは! さっきの爆発を見てましたよね〜? あんなの食らったら、普通は死んじゃいますよ〜? 私だって、ほら……この通り! 絶賛大怪我三昧! 見事な重傷ですよ!」


 アリンの口を塞いでいたルミは、全力で『私は大怪我を負ってます』アピールをしていた。

 大怪我を負っている人間は、そこまで元気にアピールする事なんて出来ないと思うぞ?


 お前は何処の当たり屋だ?……と言いたくなるまでに、怪我なんぞしていないと言うのに、大怪我しましたと言うジェスチャーを『超元気に』やっていたルミを見て……なんか他人のフリをしたい気持ちで一杯になっていた。


 ……もう、本当……どうしてコイツは真面目に試合をする事が出来ないんだろうなぁ……。

 こんな事を胸中でぼやきつつ……ルミとアリンの対戦は、アリンの勝利で幕を閉じて行くのだった。




             ◯◯◯●●




 二回戦も最後の試合となった。


 剣聖杯本戦も、ここで前半戦が終了となり、お昼休憩を挟んでから後半戦とも言える三回戦が始まる。


 簡素に言うのなら、前半戦のラストがこの試合と言う事になる。


 前半の最終戦は、匿名希望(女神)VSフラウの戦いだ。


 このカードは、ハッキリ言って先の読めないカードと言える。

 

 地道な努力をコツコツと積み上げて来たフラウの実力は、いつぞやの上位魔導師ハイ・ウィザード試験の時よりも上昇し……かつ、色々と戦略にも長けている。


 特にさっきのメイちゃん戦で見せた炎神アグニランスはお見事としか言えない。


 一回の魔法で、最低でも三本の槍を召喚させる……と言う前知識がなかったのなら、ほぼ大多数の人間はフラウの槍を受けてしまうだろう。


 炎神の槍を発動させつつ、連続魔法で光魔法をほぼ同時に発動させ、あたかも一本の槍しか召喚していない様に見せる(良い意味での)狡猾さと発想力もまた凄い。


 実践経験が豊富な冒険者が、色々な経験の上で試行錯誤した結果に生まれた物であれば理解出来るが、フラウはそこまで実践経験がある訳ではない。

 しかし、少ない経験ながら……それでも自分なりの機転を活かし、私も驚くまでのアイディアを叩き出すのだから、フラウの魔導センスと言うか柔軟性は天性の物ではないかと思えてならないな!


 思えば、フラウは自力で略式魔導文字まで作り出していたな。


 一つの単語または文字に複数の意味を持たせる特殊記号を作る事で魔道式をより簡略化し、高速に発動させる事を可能にする文字を、だ。


 そう考えるのであれば……フラウもまた、天才魔導師と形容しても過言ではないのかも知れないな。

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