女神と加護と勇者様【9】
もう少し、私に優しい会話をしてくれないかな……そんな事を内心で思っていた頃。
「フラウは、本当に素晴らしい魔導師へと成長しましたね」
ユニクスは、妹分でもあるフラウの成長を純粋に喜んでいた。
純粋に喜ぶ事も共感する事も……感銘すら出来ないけどなっ!
「……まぁ、フラウもペッタン子ながら頑張って魔導師としての実力を上げている事だけは認めてやるよ」
ユニクスの言葉に、私は真剣な顔になって声を返す。
敢えてペッタン子と言う形容を入れたのは……せめて、一矢報いたかったからだ。
……ふ。
私もやはり人の子なのだよ。
こうもバカにされたら、無意味であると分かっていても、悪態の一つ程度は口にしてやりたい訳だ!
……クソ。
本当に、お前らは私を何だと思っているのやら。
「リダ様。安心して下さい。私はあなた様を魔王などと思っておりません。むしろ逆です。救世主または女神の一種であると思い……心から崇拝しております」
直後、私の気持ちを汲んでか? ユニクスがやんわりと微笑みながらも私へと答えて来た。
きっと、優しさから来ている台詞ではあるんだろうけど……それはそれで重いぞ。
実際に言うと、単純に面倒臭い人間に成り下がってしまう為、口に出す事はなかったのだが。
なんにせよ、こうして第二試合が終了した。
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二回戦の第三試合は、Bブロックから先に行う。
これは、Aブロックの試合消化を優先してしまうと、フラウが連戦する事になってしまうからだ。
よって、フラウに休憩時間を与えると言う意味合いを含め、先にBブロックの二回戦から先に行われる。
余談だが、二回戦の試合が全て終了すると、一旦お昼休憩となり……一時間程度のクール・ダウンが入る。
そして、Bブロックのみ三回戦が準決勝となる為、私が登場する事になるぞ?
ユニクスも同じ準決勝からの出場ではあるのだが、こちらは四回戦が準決勝になっている為、ユニクスより少しだけ私の方が早く登場する仕組みになっている。
これは、なるべく強い相手と当たり難く組んでいるAブロックと、強敵と当たる率が高いが最短四戦で優勝出来る仕組みになっているBブロックの特性による物だな?
強敵と当たると言う特性がある為、前回チャンプの私は、どうしてもBブロックになる為、登場がユニクスより少しばかり早くなってしまうのだ。
……普通、一番強い奴が一番最後に出て来る物なのにな!
まぁ、そこは良いとして。
「行くお! 頑張りゅおっ!」
Bブロック二回戦の試合は、アリンと……
「頑張って! 私はここでポップコーンを食べてるから!」
……未だ観戦席でルゥ姫と一緒にポップコーンをモシャモシャと咀嚼していたルミとの戦いであった。
つか、お前が戦うんだよ。
なに、観戦席で悠長にポップコーン食ってんだよ?
「マム。大人気ないですよ? 早く試合の舞台に上がって下さい。ポップコーンは私が平らげて上げますから」
「待ちなさい、ルゥ! そのポップコーンは私のです! このポップコーンを食べ終わるまでは、この席から離れるつもりは毛頭ありません! それが元で棄権したと大会運営から思われても結構! むしろ僥倖!」
呆れた顔をしたまま、ルミが持っているポップコーンの箱を取ろうとした直後、思い切りムキになった顔のルミが素早くポップコーンを頭上に上げ、あたかも強い決意を持っているかの様な態度でルゥに叫んでいた。
ある意味、強い決意はあったかも知れないけど……内容がヘタレ過ぎて大草原。
もう、見事に草の弾幕しか出現しないだろう。
「お? ポップコーンだお? アリンも食べりゅ〜!」
そしてアリンちゃんは、ポップコーンに食い付くんだね……。
分かってはいたけど、最初からグダグダの予感しかしなかった。
果たして。
「……へ?」
ルミは、アリンの眼前にやって来ていた。
これに、当の本人が目をパチクリと瞬かせていた。
きっと……ルミにも良く分かっていないのだろう。
……うむ。
実を言うと、私も良く分かっていない。
なんとなく……本当になんとなくは、分かる。
ただ、飽くまでも憶測レベルだな?
その上で述べると……アリンがルミに空間転移魔法を発動させていたのではないか?
ただ、ここは私の予測に過ぎない。
私の記憶が確かであるのなら、アリンはまだ空間転移魔法を完全に使う事が出来て居なかった……筈。
しかし、あれから結構な時間が経過している上に、アリンは私も認める大天才。
フラウが努力で人一倍の能力を持つ秀才であるのなら、アリンは根本的に天与の才質を持つ天才だ。
よって、常人では不可能な事ですら、大した努力をする事もなく、簡単に成し遂げてしまったりもするのだ。
……ふ。
我が子ながら、とんでもない娘だと思うよ……真面目に。




