表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1179/1397

女神と加護と勇者様【8】

 現状のメイちゃんを考慮すると……もはや、皮膚呼吸は絶望的だろう。


 そもそも、全身火傷で悲鳴を上げたくなるまでの激痛が襲っているに違いないのだ。


 その証拠に、ニヤリと笑っている額からは、大粒の冷や汗が流れて来ているのが分かる。

 本当に……ビックリするまでの負けず嫌いだ。

 常人なら、とっくに意識不明の重体レベルだぞ……全く。


 ハッキリ言って、今すぐ試合を強制終了させたい気分だ。

 実質、ドクター・ストップが入っても全くおかしな話ではなかったな?


 しかし、私は気付いた。


 フラウは、いつの間にか左手に世界樹の杖を持っていた。

 

 世界樹の杖には、所持者に魔力が備わっていれば、その魔力を元に『魔導式なし』で回復魔法を発動する事が出来る……と言う、特殊効果がある。


 簡素に言うのなら、治療系の魔法を知らない魔導師であっても、回復魔法を使う事が出来てしまえるのだ。


 また、回復魔法を使う事が可能な魔導師であった場合でも、回復量が大幅に向上すると言う効果が発生する為、相手を治療するに当たって、とても大きな回復が期待出来る。


 極め付けは、復活魔法リザレクション

 この魔法は、発動その物が大変困難であるだけではなく、かなりの魔導消費を必要とする。

 また、発動成功率と言う物があり……熟練度ないし術者の技量によって、成功確率が変動する。

 

 ここがポイントだ。


 世界樹の杖を装備した状態で復活魔法リザレクションを発動させると、術者の熟練度や技量に左右される事なく100% 必ず蘇生させる事が可能になる。


 ただ、復活魔法リザレクションを発動させる技術や最低限度の消費魔力だけは必要になってしまうのだが……必ず蘇生を成功させる事が出来ると言う効果はまさに破格の条件であり奇跡だ。


 故に、私はあの杖を『奇跡の杖』と形容したいね?


 ……思った私は、その状況を敢えて見据えていた。


 理由は簡素な物だ。

 メイちゃんが本当に致死状態にでもならない限り、フラウが絶対にメイちゃんを回復させると思っていたからだ。


 ……うむぅ。


 こうやって見ると……フラウも日進月歩でレベルアップしているんだなぁ。


 攻撃や補助だけではなく、回復系もバッチリと使える様になりつつあるフラウ。

 その行為だけを見れば、もはや大魔導グレート・ウィザードと形容しても、なんら遜色はない。


 まぁ……大魔導程の魔力や技術が、今のフラウにあるのか? と言われると、まだまだその限りではないのだが。


 閑話休題。


「……素直に降参なさい、メイ? 素直に負けを認めるのなら、その場で回復してあげるから」


 右手を向けたまま、フラウはメイに口を動かした。


 メイは、依然としてニッ……と、好戦的な笑みを作ったまま声を返す。


「負けを認めなかったら? 私は、どうなるの?」


「……そうだね? 私の右手?……分かるでしょ? この構えに覚えはない?」


「……っ⁉︎」


 フラウの言葉に、メイちゃんの顔から一気に血の気が抜けた。


 程なくして……力無く口を動かしてみせる。


「その構えは……もしかして……リダお姉ちゃんの……?」


「ふふ……気付いたみたいだね? そう。この構えは、あの悪名高き学園魔王リダの得意魔法!」


「……そ、そんな……まさか……?」


 得意げに言い放つフラウに、メイちゃんの顔が絶望へと変わって行く。


 ……あのさ?

 私的には、このタイミングで自分の名前を出される事が、物凄ぉぉぉぉぉく不本意極まるんだが?


 しかも、フラウは『悪名高き学園魔王リダ』とかほざいてるし!

 メイちゃんもメイちゃんで、一切否定する事なく……むしろ、この世の終わりみたいな顔になってるし!


 これじゃ、まるで魔王の力を手に入れた魔導師フラウを前に絶望を覚えている人間にしか見えないではないかっっ!


「苦しかった……大変だったよ? 流石は魔王が使う極大魔法……単なる人の子に過ぎない私には、並大抵の努力では習得する事は出来なかった」


 私も人の子なのだが?


「しかぁーしぃっ! 遂に私は、この禁断とも言える魔王の極大魔法を習得したのさ! 同じドーンテン一族の一人でもある賢者……アリン・ドーンテンを師に持つ事でねっ!」


 その賢者……三歳なんだが?


「……さぁ、雑談は終わりにしましょ? これで分かったでしょう? もうメイに残された選択肢は、素直に降参する事……そうすれば、すぐ楽にしてあげる……この世界樹の杖でね!」


 回復させるから、比喩でもなんでもなく『楽になる』な?

 

 何にしても、フラウは魔導師に厨二的な何かをイメージしているんだろうか?

 やたら大仰な大立ち振る舞いまで見せていたフラウは、あたかも魔王の能力を得た大魔導にでもなったかの様な態度でメイちゃんへと訴え掛けていた。


 果たして。


「……魔王の魔法には勝てないよ……降参します」


 ……オイ。


 メイちゃんは素直に両手を上げていた。

 完全なる降参のポーズだ。


 せめてそこは『リダおねーちゃんの魔法には勝てないよ』にしとこうよっ⁉︎


 普通に魔王の魔法になってるよ!

 あなたが姉と呼んで親しんでいる相手は、魔王で良いのか?


 メイちゃんが良くても、私は認めないからなっっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ