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女神と加護と勇者様【7】

 ……また、フラウが発動させた魔法も、フラウだからこそ可能にしている上級魔法だ。


 炎神・アグニの加護を受ける事で、二十四時間フルタイムで炎神の持つ強力な力を与えられたフラウは、炎神の能力を使った特殊な魔法を発動する事が出来る。


 これはアグニの加護を得ているフラウだからこそ可能にしている魔法で、加護を持っていない人間には不可能と言える。


 よって、この魔法はフラウの個性と述べて良い特殊魔法ではあるのだが……発動難度は超魔法張りに難しい。


 炎神の加護を得たからと言って、魔導式が簡単になる訳ではなく……飽くまでも魔導式を組み込む時に必要な魔力要素を炎神アグニ保担ほたんしてくれる『だけ』に過ぎない。


 魔力的な要素を保担と述べたが、今の魔法を発動する為に必要な魔力は、ちゃんと自分で精製しなければならないので、魔力消費が軽減される事もない。

 

 極論からすれば、炎神の力が備わっている特殊な魔法を発動出来ると言う利点以外は、他の魔法を使っている事と何も変わらなかった。


 それだけに、私は思ったのだ。


「……フラウは、マジで大魔導グレート・ウィザードになれるんじゃないのか?」


「ええ……私もそう思います」


 独り言に近い感覚で口を動かした私の言葉に、ユニクスは真剣な顔のまま相づちを打ってみせた。


 他方……試合の方は、


「……くっ!」


 瞬時に方向転換して、再び間合いを縮め様と突進して来たメイちゃんが苦い顔になって、真横に飛んでいた。


 その一瞬後……これまでメイちゃんがいた場所を、長槍の形をした紅蓮の炎が通過する。


 まるでロケットの様な勢いだった。


 ……数は一つ。


「……おや?」


 この時、私はふと、違和感の様な物を感じた。


 それと言うのも……炎神アグニランスを、フラウが発動する時は、最低でも三本の槍を同時に発動させて来るからだ。


 しかし、メイちゃんを襲ったのは、一本の槍だけ。


 ……うーん。


 違和感だらけだな?


 ともすれば、色々と改良する事で、一本だけ炎神アグニランスを召喚させる魔法を編み出していたのかも知れない。


 どう考えてもオーバー・キルになってしまうだろう条件で、わざわざ三本の槍を出す必要もない場合は、余計な魔力を無駄に消費してしまう事になってしまう。

 一本で十分な条件であるのなら、一本だけ発動させた方が消費魔力の軽減にも繋がるし、魔導式も色々と短縮する事が可能になる為、発動速度も飛躍的に早くなるだろう。


 そこらを加味するのであれば、わずか一秒か二秒程度で炎神アグニランスを発動する事が可能だったカラクリが、その部分に存在しているのではないか? と言う結論にも至りそうではあるのだが、


「……なるほど」


 私は思った。


 ここで、違和感を『抱く事が出来なかったら負ける』……と。


 果たして。


「……惜しかったね?」


 炎神の槍を避けて間もなく、フラウの背後に回ったメイちゃんは、ニィ……と笑みを混じらせた状態で口を動かし、そのままフラウへと強烈なハイキックを叩き込もうとして見せた。


 その表情は『勝ち誇って』いた。


 故に、私は悟った。


 ……ああ、これは、メイちゃんの負けだわ。


 ザンザンッッッ!


 フラウの背後に周り、蹴りを入れようと動いた瞬間だった。

 メイちゃんの右斜めと左斜め頭上から、巨大な炎神アグニランスが、なんの前触れもなく出現し、クロスを描く形でメイちゃんの身体に突き刺さった。


 前触れもなく出現したのは他でもない。


 一番最初の発動時には、もう三本セットで『存在はしていた』からだ。


 じゃあ、どうして気付く事が出来なかったのか?


 光魔法による物だな?

 簡単に言うと、光の屈折を変化させる事によって、残り二本を『消していた』訳だ。


 つまり、見えない槍が二本潜んでいた……と、こう言う話だ。

 見えないと言うだけで、最初から存在はしていて……そして、メイちゃんが油断する状態を、虎視眈々と狙っていた。


 そして、その見えない槍に気付く事が出来なかった時点で……メイちゃんの敗北は決まっていたのだ。


「……っ! ぐはっっ⁉︎」


 寝耳に水と言わんばかりの顔になったメイちゃんは、


 ボゥゥゥゥゥッッッ!


 炎神の炎に焼かれた。


「メイ? あなたの言葉……そっくりそのまま返してあげる。『惜しかった』ね?」


 フラウは答えてから、ゆっくりとメイに向き直った。


 そこから、悠々と笑みを作りながらも、再び口を開いた。


「感謝なさい? 炎神の力はちゃんと加減して上げたから?」

 

 答えた後、フラウはメイに向かって右手を向けた。

 ……と、同時に炎が消える。


 当たり前かも知れないが、殺す気で撃った魔法ではないので、相手がノックダウン級のダメージを受けたと確信した時点で、フラウが自分から魔法を解除してみせた模様である。


 ……ん?


 いや、待て?


 この時、フラウが新しく頭の中で魔導式を紡いでいる事に気付く。


 しかも、この魔法は……。


「はぁはぁ……やっぱりフラウ先輩は強いなぁ……」


 フラウの魔導解除によって、炎こそ消化された物の、全身大火傷状態と言う……生命の危機に瀕している状態だったメイは……それでも意識を保った状態でファイティング・ポーズを取ってみせた。


 ……やれやれ。

 相変わらずの負けず嫌いだ。


 通常、ここまでの大火傷なら、即座に回復魔法を受けないと致死レベルの重傷と言えた。


 人間は皮膚呼吸をしているから、体内にしっかりと酸素を送る事が出来る。

 ……よって、皮膚もまた呼吸器官の一つと表現しても過言ではない。


 肺からの呼吸と比較すれば微々たる量ではあるが……場合によっては致死に到達するまでに重要な部分でもあるからだ。


 一例を挙げるとな? 例えば、身体中にペイントしたりするだろ?

 場合によっては……あれも危険なんだよ。

 皮膚呼吸出来なくなる塗料とかあるからさ?

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