表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1175/1397

女神と加護と勇者様【4】

「……忘れていたお……そうだお……アリンは、なんでも爆破で解決する……呪われた一族の一人だったんだおぉぉぉぉぉっっ!」


 いつ、私の一族は呪われたんだよぉぉぉぉっっっ⁉︎


 きっと、その場のノリで、厨二チックな台詞を格好良く口にしたかったのだろうアリンが、間もなく気合いを込めて叫んでいた。


 もう、マジで勘弁してくれないかな?

 私の家系は、別にそーゆー変な一族でも家系でも、なんでもない普通の人間ですから!


 程なくして、アリンはスゥゥ……っと、ルゥ姫に右手を向けた。


 ……ふ。

 その態度と良い、右手の向け方と言い……まんま、私だな。


 そりゃ、アリンは私の娘ではあるんだけど、そんな所まで母親の真似をする必要もないだろうに……。


「抵抗しゅるなら、しても良いお?……やりぇる物なら……ね?」


「………ひぃぃぃっっ! マ、マム! な、なんて事をしてくれたのですかっ⁉︎ こ、このままだと、私……本気で木っ端微塵になっちゃうっ!」


 もはや、完全に戦意喪失状態になり、蒼白な顔のまま泣きべそになっていたルゥ姫は、観客席の最前列までやって来たルミに向かって、ちょう弩級どきゅうの恨み節を言い放っていた。


 そんな中、ルミは爽やかな笑みを向けて、緩やかにサムズアップした状態のまま、


「骨は拾ってあげるわ?」


 最悪の母親過ぎるだろっ⁉︎


「マムのバカ! アホ! 自堕落魔神! せめて、マムも道連れにしてやるんだから!」


 叫んだルゥ姫は、私も目を見張る程の素早さで滑空魔法グリードを発動し、ルミの真後ろまでやって来ては、そのまま後ろから羽交い締めにして闘技場まで戻って来た。


 ………。


 もう、やってる事がグダグダ過ぎないか?


「……え?」


 羽交い締めにされた状態のまま、右手を向けているアリンの眼前までやって来たルミは、ポカンとした顔のまま、頭上に『ホワイ?』って感じの文字を浮かばせていた。


 無理もない。

 さっきまでは、ただの傍観者に過ぎなかった自分が、その数秒後に当事者と大差ない立ち位置になっていたのだから。


 果たして。


「なんでも爆破で解決がドーンテン一族なんだおっ! 行くおっ!」


 超炎熱爆破魔法フレインダムド


 ドォォォォォォォォンッッッ!


 ルミとルゥの二人は、仲良く爆破されていた。


 ……もう、勝手にしてくれ。


 正直、かなりレベルの高い試合運びが見られると期待していた私だけに……ここまでグダグダな結果になるとは思いもしなかった。


『おぉーっと! これは強烈だ! 思いもよらぬ劇的な展開です!』


 直後、インさんの実況の音声が周囲に響いた。


 ……きっと、グダグダ過ぎる試合展開であっても、どうにか白熱した物にしたい為、敢えて大仰に叫んでいるのだろう。

 

 そう考えると……まぁ……その……うん。

 インさんのプロ根性と言うか、その努力には感銘を受けるかも知れない。


『う! 素晴らしい一撃だ! う! あれこそが、伝承の中に出て来る「呪われたドーンテン一族」が持つ、伝家の宝刀……超炎熱爆破魔法フレインダムド!』


 そして、私の一族は呪われていないからな?


 解説のシズも、場の雰囲気を盛り上げる為に大仰な解説をしている模様だが……私の視点からすれば、謎の誇張をしてるだけに過ぎない。


 さっきから何回も言ってるけど、私の一族はいつ呪われたと言うんだよっっ⁉︎


『呪われたドーンテン一族ですか? 剣聖、それはどんな一族なのでしょう?』


 ドーンテン一族の人間である私にだって分かんないよ、それ?

 解説のシズが答えた内容に、インさんも微妙に食い付いて来た。

 そこは気にしないで欲しいのだが……?


『う! 良い質問なんだ! う!「呪われたドーンテン一族」と言うのは、どの様な問題が発生しても、必ず対象物を爆破で解決してしまうと言う、恐るべき一族なのだ! う! 例え、どんな困難が発生しようと、難問があろうと、爆破で全て一発解決! まさに悪魔の一族なのだ!』


 そんな一族が居てたまるか!


 てか、戦闘的な問題以外で難問が発生した時はどうするんだよ?

 例えば、彼氏が出来ないとか、そう言う問題でも私は爆破で解決するのか?


 やるわけないだろうがぁぁぁぁぁっっ⁉︎


『ドーンテン一族の恐ろしい所は、爆破で全てを解決して来る所なんだ、う! お腹が痛い人が居ても、胃腸薬の代わりに爆破し、困っている老人を見付けても、手を差し伸べる代わりに右手を向けて爆破魔法を使うのだ! うっ!』


『そ、それは凄い……まさに悪魔の所業ですね!』


 ドォォォォォォォォンッッッ!


 司会席は爆発した。


 もう、お前らは黙っとけぇぇっっ!

 

『う? うぅぅぅっ!』


『え? うきゃぁぁっ』


 二人は、この悲鳴を最後に大人しくなった。


 ちょっとだけスッキリした所で、剣聖杯の一回戦は全てのカリキュラムを終えて行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり爆破で解決じゃないか!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ