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リダさん、死闘の果てに!【15】

「い、いいいっ! いやいやっ! そんな事はない!」


 リットは真っ青な顔になって大仰にふためいた後、逃げる様にその場から立ち去ろうとした。

 どうやら、本気で爆発すると思ったらしい。


 良く分かってるじゃないか!


「じゃ、じゃあ私は、リダさんの退院手続きをして来るよ! 後は、若い二人に任せる事にしようじゃないかっ!」


 お前は結婚相談所の仲介人か?

 つか、目前のユニクスは女してるだろ?

 どうして、そんな台詞が出るんだよっ!


 ......と、悪態めいた思考を張り巡らせていた頃、私の胸元にユニクスが飛んで来た。


「リダ様っ!」


 いよいよ、これは同性愛の色合いが濃くなってしまった。

 きっと、背景に百合の花が咲き乱れているに違いない。


 ......って、アホかいっ!


「いや......待て、ユニクス。この構図は非常に......」


 まずいと、言おうと思った私だが、その言葉は途中で止まった。

 理由は簡単だった。


「リダ様......良かった! 本当に良かったっ!......ぐすっ!」


 私の上半身にしがみつく感じで抱き締めていたユニクスは......嗚咽を漏らしながら、何度も何度も喜びの感情を私にぶつけていた。

 私がちゃんと目覚めた事への安堵と歓喜が、これでもかと言うばかりに伝わって来る。


 心底、私を心配してくれた。

 

 ......ったく。

 私なんかの為に、ここまでするとか......。


「心配掛けた。すまない」


「いいえ。全然大丈夫です。私は信じておりました。絶対に生きて戻って来てくれると」


 言い、抱き締める力を強めた。

 ......。


 いや、違う。

 実際に腕力が上がったんだ。

 きっと、性別差なんじゃないのか?

 まぁ、良く分からないけど。


 女でいる時の力加減と男でいる時の力の入れ具合は同じ様で実は違う的な? 何かそう言う関係で、抱き締めている力が強くなってる様に感じただけかも知れない。


 つまり、ユニクスは......。


「おい、ユニクス......お前、男になってるぞ?」


「当然です、リダ様」


 別に注意する事でもなかったんだが、自分でも無意識になったのなら......と思って、男になってる事を教えてやると、さも当然を顔に作るユニクスがいた。


 そして、言うのだ。


「リダ様がちゃんと健康でいるウチに! しっかりと私の子供を産んで貰おうとしているのですから!」


「ふざけんなぁぁぁぁぁぁっ!」


 ドォォォォォォォォォンッッッ!


 かくして。

 近所にある病院の集中治療室は爆発した。

 

 その後、私ことリダ・ドーンテンがこの病院から事実上の出禁を喰らったのは、余談程度にして置こう。




   ●○◎○●




 翌日と言うか、その日の夕方には、もう学園に強制送還される形となった私は、久方振りに寮の自室へと戻って来た。

 

 自室に戻って間もなく、ルミが私の部屋にやって来る。


「退院おめでとー! いやぁ......今回は、私も少し心配しちゃった!」


 本当か?

 やけにあっけらかんと......相変わらずの軽やかさで言って来るルミに、私はちょっと呆れた。


 心配はしてたのかも知れないが、全然深刻さがないんだが?


「ああ、そうかい」 


「素っ気ないなぁ......冷たいよ、リダ!」

 

 いや、お前に言われたくないよっ!

 ユニクスの様な感情的な態度を期待していた訳ではないんだけど......何てか、こうぅ......さ?


「心配してるにしては、随分とアッサリしてる気がするのは、私だけか?」

 

「ん?......うーん」


 地味に素朴な質問をした私に、ルミは少し頭を捻らせる感じの態度を取ってみせる。

 そこから一分程度考え込んでから出た答えがこれだ。


「リダだし。殺しても死なないし」


 あーそうかい。


「いや......良いんだけどさ」


 その位の感覚でいてくれた方が、私も楽と言えば楽なんだ。

 逆に言えば、ルミは信用していたのかも知れない。


 どんな事があっても、私は絶対に死なない......と。


 やや買い被っている所もあるんだが、ルミにとっての私は完璧超人になっている。

 だからこそ、信じているのだ。


「リダの辞書に不可能の文字はないって、私は思ってるから!」


 きっと、本心からの笑みを満面に作って......ルミは言った。


「私は何処の皇帝ですかねぇ......」


 つか、この世界の人間にいたか? そんな名言を口にしたヤツ。


 ......。


 ......まさか、ねぇ?


「所で、ルミ? その名言を述べている偉人を知ってるのか?」


「うん? 誰だっけ? えぇと......フランス?」


 ......。


 もしかしたら、このボケが新たな伏線ではない事を願う。


「そうかそうか。よし、ルミ姫様。良い病院知ってるぞ? 明日一緒に行こうな」


 私は笑顔で『ルミさん異世界転生説』の伏線をぶった切る勢いで、ボケをボケで返して行くのだった。

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