学園祭と剣聖杯と勇者様【13】
まぁ……この二人は歴代ニイガ王家のサラブレッド的な存在だ。
ある意味、互いに負けたくない相手だったのだろう。
その結果、まだ予選だと言うのに、あたかも本戦が既に始まっているかの様な勢いで、熾烈な攻防戦が続いていた。
最終的に勝者となったのは、ルミ姫だった。
激しい攻防戦の末、息が上がったルゥ姫は、一気に畳み掛ける手段として必殺の超魔法を撃たされてしまった。
……そう。
それは『撃たされた』と表現するのが正しい。
結局の所、ルミは体力的にも魔力的にも、まだ幾ばくかの余裕が存在していた。
どうやら、ヘタレながらも体力を上げる訓練をしていた模様だ。
そして、この差が勝敗に直結してしまうのだった。
超魔法を発動させたルミは、全力で魔導防壁を張って、ルゥの攻撃魔法を防ぎ切って見せる。
どうやら、超魔法クラスになるとルゥの魔力を反転させるまでの魔導式を組む事は出来ないみたいだな。
……ま、それが出来たのなら、ここまで拮抗した戦いにはならなかったかも知れないのだが。
どちらにせよ、ルゥの一撃を完全に防いだルミは……
超炎熱爆破魔法!
……おいおい。
その魔法を、お前はいつ覚えたんだよ……?
私にとっても、ポカンとなってしまう様な超魔法を発動させていた。
ドォォォォォォォォンッッッ!
「……っっ⁉︎」
全力で魔導防壁を展開したルゥではあったが、勢いを完全に相殺する事が出来ずに吹き飛んでしまい……そのまま場外へ。
「見たか! これがおかーさまの力だよっ! あはははっっ!」
目を渦巻にした状態で場外にバッタリと倒れていたルゥを前に、ルミは上機嫌で高笑いを見せていた。
そんな……おおよそ、お姫様とは思えない様な高笑いを見せながら、間もなく周囲に大勢の見物人がいた事実を知り、一気にしおらしい態度を取ってから、審判からの勝ち名乗りを受ける。
「お〜。ルミちゃん、超炎熱爆破魔法が上手になったお〜。最初は魔導式すら、上手に紡げなかったんだけど、もう普通に使えてる感じなんだお〜」
そこでアリンが感心する感じで声を吐き出して行く。
この口振りからすると、
「もしかして、ルミに超炎熱爆破魔法を教えたのって、アリンなのか?」
「お? ルミちゃんとフラウちゃんが、教えて欲しいって言ったから、やり方を教えたんだお〜?」
ああ……やっぱりそうか。
どうやら、ルミは独学で覚えたのではなく、私の愛娘に教えて貰った模様だ。
まぁ、おかしいとは思ったんだよ?
我流で身に付けた超炎熱爆破魔法にしては、かなり型に嵌っていたと言うか……私寄りの魔導式だったと言うか……。
ともかく、私が発動したかの様な威力もあった。
まぁ、ここは純粋にルミの魔力が人並み外れているから……と言うのもあるんだけどな?
どちらにせよ、私的には驚きだ。
ルミが……まさか、私の必殺魔法を習得していたなんて……。
しかも、ルミだけではなくフラウまで覚えていたとは……ねぇ。
「か〜たまが日頃からボンボン! ドォォォォォォンッッッ! ってやってうから、ルミちゃんもフラウちゃんも覚えたくなったんだって? アリンは、か〜たまみたいな人が増えりゅのは良くない事だと思ったんだけど……どうしても覚えたいって言うから、仕方なく教えたんだお〜」
これこれ、アリンちゃんや。
自分の親を何処かの爆発魔と勘違いしているんじゃないのかな?
何にしても、この二人が持っている魔導師としてのポテンシャルは、やはり高いとしか、他に形容する事が出来ない。
超炎熱爆破魔法は、単純に魔導式を覚えれば、誰でも出来る様な魔法などではないからだ。
そもそも、魔導式を覚えるだけでも一苦労ではあるのだが……そこから頭の中で紡ぎ……更に魔法として転換するまでのプロセスもかなり煩雑にして複雑なのだ。
並の魔導師であれば、仮に使う事が出来たとしても、発動までにかなりの時間を必要としてしまう。
ランクSSクラスの魔導師であったとしても、発動までに一分近い所要時間を必要とするのではなかろうか?
しかし、私の見る限り……魔導式を頭の中で紡ぎ始めてから発動までに掛かった時間は、およそ10秒程度だった。
まぁ、10秒も掛かっている様では、私的にはまだまだ……って感じがしなくもないが、それでも実践で実用可能なレベルにはなっている。
そして、この所用時間に関しても、今後の努力次第で大幅な短縮をする事だって可能になるだろう。
これら諸々の全てを総体的に加味するのであれば、今後のルミはよりレベルの高い魔導師になる可能性があるな!




