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学園祭と剣聖杯と勇者様【12】

 これには、予選会場を見学していた人物を含めた、周囲の面々にとって度肝を抜く結果となってしまった。


 ルゥが無数の火炎球ファイヤー・ボールを出現させてルミへと放てば、ルミは炎壁ファイヤー・ウォールでシャットアウトしてしまう。


 ……と、次の瞬間には強烈な落雷魔法サンダーがルミを襲うと……ルミはその雷を逆にルゥ目掛けて跳ね返していた!


 これには驚いた。


 どうやら、ルミなりにしっかりと新しい技術スキルを習得していた模様だ。


 恐らくこれは……魔力の反転による物だと思う。


 魔法にも、科学と同じく……ちゃんと一定のベクトルと言う物が存在している。

 ただ、科学と大きく異なるのは、一定の法則に従って運動を起こす『訳ではない』と言う事だ。


 例えば? 落雷が科学的に起こった場合……それは電気エネルギーなので抵抗値の低い方角に向かって進む。

 厳密には、積乱雲の中にあるプラスとマイナスの電気によって流れが発生したりもするのだが……まぁ、ここではちゃんと一定の法則によって落雷の向きが決まっていると認識して貰えたら幸いだ。


 しかし、魔法の場合はその限りではない。


 理由も簡単。

 自然の赴くままに発生してしまったのなら、思った方向に雷撃が進む筈がないからだ。


 そして、これが魔導の便利な所でもあり……同時に難点でもある。


 魔導によって生まれる雷は、魔導式によって生まれた魔導的な雷。

 

 この、魔導的な雷は『魔導式により雷の魔力へと変換されて放出された物』である。

 ここが大きなポイントだ。


 つまるに、これは『魔力』なのだ。

 エナジーと置き換えても構わない。


 魔導式によって変換され、雷の威力こそ付与されている物の……元々はエナジーの一種であり、純粋な力に過ぎない。


 よって、科学的に生まれた自然の雷とは違い、上手に扱えばそのエナジーを『吸収ないし反転させる』事が可能になるのだ。


 ……もっとも、これは魔導的な理論上の話だ。


 簡素に言うのなら、相手の魔力を吸収……ないし、反転させる為には、相手の魔導式を更に上回るだけの複雑な魔導式を頭の中で展開させなければならない。


 つまり……ルゥの紡いだ魔導式を一回り上回り……かつ高速に頭の中で紡いた上に、かつ魔力でも上回らないと行けない。


 故に……。


「……っ⁉︎」


 ルゥは思い切り驚いていた。


 無理もない。


 さっきも述べたが……こんな芸当を可能にしていると言う事は、ルゥの魔導的な能力を一回り上回っていると言う事を、文字通り体現していると言う事に繋がるからだ。


 ドォォォォォォンッッッ!


 瞬時に自分の落雷魔法を跳ね返されてしまったルゥは、全力で魔導防壁を展開して、その雷を防いで見せる。


 その一瞬後、


 タッッ!


 素早く床を蹴り、


 シュンッッ!


 風を切る速さで、一気にルミへと詰め寄った。


 そんなルゥの右手には、自分の魔力で作り出した光の刃が。


 魔導大国ではポピュラーな『近接攻撃魔法』でもあるオーラ・ブレイドだ。


 ニイガが魔導大国として恐れられている素因の一つが、このオーラ・ブレイドでもある。


 三万を超える魔導歩兵が居ると言われているニイガ王家の兵士は、基本的に全員がこのオーラ・ブレイドを使いこなす事が出来る。


 この為……他国の兵士達は魔導大国ニイガの兵士に一目置いているのだ。


 一気に間合いを詰めたルゥは、右手のオーラ・ブレイドを勢い良く振りかざしては、そのままルミへと斬り付ける。


 ドンッッッッ!


 次の瞬間、周囲に大きな衝撃波が舞い上がった。


 ルゥのオーラ・ブレイドに対抗する形で、ルミもまたオーラ・ブレイドを瞬時に作り出し……即座に反応する形で応戦したからだ。


 その結果、二つのオーラ・ブレイドがぶつかり……強烈なエナジーの衝突によって、周囲に強烈な衝撃波が巻き起こっていた。


 もっとも、二人が戦っている戦闘エリアには、私の作り出した魔導防壁が施されている為、観戦者が吹き飛ぶと言う惨事には発展しなかったのだが。


 ……うむ。


 やっぱり、どんな時でも備えと言う物は怠ってはならないなっ!


 そこから、ルミとルゥの二人による、強烈なオーラ・ブレードの攻防戦が繰り広げられる。


 取り敢えず言える事は、一つだけだな?


 お前ら……ちゃんと真面目に戦えば、凄い戦いが出来るんじゃないのかよっ⁉︎


 私的には、それをチャンピオン戦ないし、アリンで発揮しろと言いたい!


 ……見れば、周囲に居る観戦者が、レベルの高い……高過ぎるルミとルゥの戦いっぷりを見て唖然としている。


 そして、自分達が敗れた理由を理解したかの様な顔になっていた。


 ……まぁな?

 これ、決勝戦じゃなくて三位決定戦だったからな?


 だから、余計にそう思ったのかも知れない。


 この場にいる連中からすれば、もはや意味不明なレベルの戦いであったに違いないのだから。


 事実、ルミとルゥの戦いっぷりは、もはやSS以上の実力者同士の戦いと述べても相違ない。


 ……こんな実力を持っていると言うのに、痛いのは嫌だと言う理由から、簡単に土下座して白旗を上げると言うのだから……飛んだヘタレも居た物である。


 そして、この二人こそが、明日あすのニイガ王国を担う、歴代女王になるのだ。


 魔導大国・ニイガの明日はどっちだっ⁉︎

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