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学園祭と剣聖杯と勇者様【11】

 堂々と勝ち名乗りを上げられる程度の実力差で本戦出場を果たしたルゥは、


「……これ、次の相手はフェルさんですよね……無理……無理です! 私、痛いのは芋虫よりも嫌いなんです!」


 勝者の筈なのに、敗者みたいな態度でガタガタと震えていた。


 ……本当に、ルゥってルミの娘なんだなぁ……って思う。

 だって、やっている事が母親ソックリのヘタレっぷりなんだもの。


 余談だが、チャンピオンとルゥの戦いは、開幕数秒で白旗を上げたルゥによって、事実上の不戦勝に終わった。


 ……いや、まぁ……一応、戦ったと言うか……試合会場までは互いに上がってはいたんだけど、開始と同時に全力で土下座していたルゥなんかが居て……うん、なんてか、あれで良く本戦の出場権を運営から剥奪されなかったなぁ……と、地味に思ってしまうまでのいさぎよさだった。


 何処まで根性無しなんだよ、お前は……と、本気で呆れる私がいたんだけど……まぁ、余談程度にして置こうか。


 取り敢えず、話を本筋に戻す事にしよう。


 続く三番目と四番目の枠を手にしたのは、アリンとルミの二人だった。


 アリンとルミ、共に快勝である。


 正直に言うと……対戦相手が地味に可哀想ではあった。


 特にルミ戦な?


 本来であるのなら、本戦出場を確約される三回戦を勝利していたと言うのに、シード枠を強引に当てはめてしまった関係上、ルミとの対戦を余儀なくされ……更に勝たないと本戦に出場する事が出来なかったのだ。

 ある意味、理不尽極まりない気がするぞ……。


 しかも、ルミがアッサリ勝ってしまうしなぁ……。


 まぁ、今回に限って言うのなら、運が悪いと諦めて貰うしかない。

 ただ、来年からは少しルールを改定する様に言おうと思うので……その、今年は我慢してくれ!

 100マール上げるから!


 何はともあれ。


 この様な形で二学年の代表戦が終わり……後は、何位通過で本戦へと出場するかの戦いに変わって行く。


 まず、チャンピオンとルゥは……さっきも述べた通り。

 ハッキリ言って戦いにすらなっていない、実にお粗末な顛末により、チャンピオンの勝利が決まっている。


 これによって、チャンピオンは学年予選の決勝戦へと駒を進め、二位以上を確定させている。


 ……そして。


「お〜! ルミちゃん! アリンは全力で行くんだお! もう負けたくないお! 張り切って戦うんだお!」


 気合十二分なアリンと、


「望む所だよ、アリンちゃん! 私は全力で負ける準備をして置くわ!」


 気合だけは負けていないけど、早くも負ける宣言をしているルミの姿があった。


 ………。


 もうね?

 本当に、ルゥとルミって親子なんだな……って、真面目に思うよ?


 やってる事と言ってる事が正反対だって言う所も含めてな!


 果たして。


「それでは、学年予選の準決勝をはじめて下さいっ!」


 互いに対峙する形で、試合会場の舞台に上がった瞬間、


「参りました!」


 なんかデジャヴな事をするルミの姿があった。


 え? なんでデジャヴなのか?……って?


 ルゥ姫と同じ事をしてるんだよ!

 もうね? 全く同じタイミングで、びっくりする位に同じ勢いでやって来たんだよ!


 土下座をっっっ!


「………お?」


 アリンはポカンとなった。

 目は点だった。


 そりゃ、そうなるよっっ!

 全く! お前らは、親子揃って同じ事をするんじゃないよっ!


「えぇ……と、勝者・アリン!」


 暫くして、審判と思われる人が、アリンに勝ち名乗りを向けた。


「お? お〜? こんなんで、良いお?」


「良いのっ! 私は痛い思いはしたくないの! だって姫だもんっ!」


 そこは『だってヘタレだもん!』に変えて置け!


 自分でもどうして良いのか分からずに、キョトンとした顔のまま小首を傾げていたアリンに対して、ルミはこれでもかと言わんばかりに断言していた。


 本当に、本戦出場の権利を剥奪されないか心配になってしまう様な態度だった。


 ……いや、まぁ……ルミらしい感じがするんだけどさ?


 それに、ルミ的にはここで本戦出場の権利を剥奪された時には、むしろ晴れやかな顔をするんじゃないのだろうか?


 ともすれば、それが『罰則にならない』と分かっているからこそ、ルミから出場権を取り上げなかったのかも知れない。

 そして、ルゥも……。


 ……やれやれ。

 本当にどうした物かな……と思うよ。


 こんな事は予選までにして、本戦では真面目に戦ってくれる事を切に願うよ……。


 余談だが、ルミとルゥの二人による三位決定戦は……何気に激戦となった。


 なんでか?


「普段から、無駄に人形ばっかり買ってる貴女ルゥに、負けるおかーさまではないからね!」


笑止しょうし! 未来に生きる、偉大なる女王のマムであったのなら私に勝ちはなかったかも知れないけれど……この時代に生きる、常に自分に正直な、為体ていたらくな我儘王女をしているマムになど、この私が負ける筈がない!」


 ……と、まぁ。


 この様な形で、ルミはルミなりに母親としての尊厳を……他方のルゥもルゥで、現在の天然姫をしているルミに負けたくないと言う……なんだか良く分からないプライドを持っていた為、見事な魔導合戦となってしまった。

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