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学園祭と剣聖杯と勇者様【5】

 ……と、まぁ。


 こんな感じの大会ではあるのだが、私は正直に言うと余り出たくはない。


 なんでかって?

 そりゃ……な?

 本来であるのなら、本戦へと出場する事が出来たであろう有能な冒険者の卵達を、無条件で排除する事になってしまうのだから。


 率直に言うと……自分で言うのも変な話ではあるのだが、やっぱり私がこの大会に出場するのは反則だと思うのだ。

 一応な? もう、本当に仕事をして居ないから、未だに自分を『会長』と表現する事に、幾分かの引目ひけめを抱いてしまう所ではあるのだが……それでも私は冒険者協会の会長だ。

 そして、暫定ではあるかも知れないが、世界最強の冒険者と言う称号の様な物も持っている。


 そんな人間が……学生の大会に出場するのは、やっぱり私としても本意ではないのだ。

 

 そして、私がこの大会に出場すると言う事は、一人分の枠が無くなると言う事にも繋がる。

 幸いにして……今回に関して言うのなら、前回大会の優勝者としてのシード枠に私は選出されている為、予選等で有能な冒険者の卵を蹴散らしてしまう様な事はないのだが……それでも、本戦で戦う可能性だってある。


 それらを加味するのであれば……私が出場して居ない大会であった時とはまた別の結果を得たであろう者達に申し訳ない気がするのだ。


 ……とは言え、この大会は学園に在籍する者であれば、無条件で出場する義務の様な物があり……かく言う、入学案内の中にも『剣聖杯には出場する義務があります』って感じの誓約書まで書いている始末。

 よって、私がこの大会を欠席する事は出来ないのだ。


 ……ま、わざと負けると言う方法もあるんだけどな?


 どちらにせよ、わざとらしく負けるにしても……前回の覇者と言うのがネックだよなぁ……。

 なまじ、大した実力もない相手にわざと負けてしまった事で、その生徒が過大評価を受けた挙げ句、天狗になんぞなってしまったのなら大変だ。


 それはそれで、場合によってはその生徒の未来を暗転あんてんさせてしまう結果にすらなりかねない。


 仮にわざと負けるにせよ、しっかりと相手の実力を見定めなければならないな?

 ……ま、運良くフラウとかルミとかユニクス辺りに当たった時は、そうして置こう。


 コイツらであれば、変に天狗にはならないと信じられる事が出来るからな?


 まぁ、そこはさておき。


「今年も、剣聖杯が来たね〜?……ま、私はリダとは本戦の決勝でしか当たらないから、割と気楽だけどね?」


 こんな事を言っていたのはフラウだ。


 一限目の授業が終わり、私の席へとやって来たフラウは、なんとも気楽な笑みを浮かべて悠長に口を動かしていた。


 こんな事を呑気に言っているのは他でもない。


 既に、フラウと私の本戦出場が決まっており……更に、決勝トーナメントでの位置まで決まっているからだ。


 これは、前々の大会から存在していたシード制による物である。


 ただ、今年からシードの内容が少し変更されている。


 前大会までは、準優勝までが本戦シードの権利を持っていたのだが、今回の大会から去年三位の成績を収めていた者に関しても、予選免除並びに本戦のシードとして二回戦からの登場になっていたのだ。


 ここらの関係もあり、フラウは既に本戦出場を決めている上に、トーナメント表の中に名前が既に書かれていたりもする。


 その上で行くと……フラウと私がぶつかるのは本戦の決勝しかない。


 更に言うのなら、


「……私と当たるのは決勝ではある事に関しては確定しているが、その前にある準決勝でユニクスと当たる可能性はあるんだぞ? お前は?」


 私は眉を捻って尋ねると、


「ふっふっふっ! 私だって、あれから一年掛けて、かなぁ〜り進歩したからね? 上位魔導師ハイ・ウィザードにもなってるし? もう、ユニクス姉になんて負ける気がしないね!」


 ああ……これは負けるな? って感じのフラグをみずから出しているかの様な態度と口調で、(無い)胸まで張って叫んでいた。


 ……ま。

 去年のユニクスはへそ曲りな女だったが、今年のユニクスは神の天啓てんけいを受けた勇者だ。

 流石に、去年の様な陰惨な事をフラウにやる事はないだろう。


「……ま、頑張れ」


「ちょっ! リダ! その顔は今年も私がユニクス姉に負けちゃうと思っている顔だねっ⁉︎ 私の実力はアンタが一番知ってるでしょっ! どうして、そんな顔が出来る訳? もう、信じられないっ⁉︎」


 どうでも良い顔になって言う私に、フラウが超絶不本意な顔になって喚き声を、辺りに撒き散らしていた。


 私的に言うのなら、大した根拠もなく威張り散らしている、お前の態度の方が信じられないのだが……?


 そんな、なんともビミョーな心情が、私の中に生まれていた時だった。


「……今年も来たんだね……試練の大会が……はぁ……嫌だなぁ……痛いし、リダと戦うかも知れないし……てか、リダと戦うのが嫌」


 物凄ぉ〜く、どよ〜んっ! とした雰囲気を露骨に作るルミが、ゆらゆらと幽霊みたいな足取りでゆっくりとやって来た。

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