打倒! リダ・ドーンテン!【18】
……この時、私は『ある事』を、試してみたくなったのだ。
故に、私は……補助スキルのレベルを5に落として見せる。
結果……私は、チャンピオンの攻撃を一方的に喰らう羽目になってしまった。
顔面にチャンピオンの剛健を受け……腹部に蹴りを喰らい……よろめいた所を回し蹴りで蹴り飛ばされた。
マジ強ぇ……。
ただ、これで分かった事がある。
チャンピオンは『死の淵を何度も彷徨った』と言う事だ。
それだけのガッツを……根性を見せて、今の私へと戦いを挑んでいる。
……そして。
名前こそクッソふざけているが、その効果は絶大だと言う事だ!
思った私は、
「はぁはぁ……」
肩で息をしつつも、
バキィッッッ!
チャンピオンの蹴りを『わざと』喰らった。
……まぁ、現状の私なら、わざとやらなくても蹴りの一撃を防ぐ手段はなかったんだけどな?
しかし、ポイントは『わざと』と言う部分にある。
蹴りを喰った事で、私は勢い良く吹き飛んだのだが……その吹き飛んだ先にいるのは、アシュアだ。
「フハハハッ! 良い気分だ! あの魔王リダが完膚無きまで叩きのめされておる! 今日は祝杯だ!」
そして、官軍気取りになっていたアシュアは、上機嫌のまま高笑いを続けていた。
何処まで調子に乗れば気が済むんだよ、お前はっ⁉︎
果たして。
「フハハハハッッ!……ハハッ……へ? ん? なんだ? 魔王がこっちに? おい、フェル君! 何をしている? わざわざ私にそんな汚物を飛ばすではないわっっ!……って、え? いやぁぁぁぁぁっっ⁉︎」
ゴチィィィィンッッ!
アシュアと私は激突した。
もう、とんでもない勢いだ。
「ごぶわぁっっ!」
結果的に私のボディ・アタックを受けた形になったアシュアは、意味不明な悲鳴を出しながら吹き飛んで行った。
少しだけ気分が良かった。
「……よし」
他方の私は、心の中でガッツポーズ。
……と、同時に私は口の中に錠剤をヒョイ……っと入れ……ゴックンっと飲み干した。
その直後、右手に持っていた小瓶を、
ボンッッッッ!
一瞬で破裂させて見せる。
なんでか……って?
コイツを『チャンピオンがまた服用したら困る』からだな?
私が即座に小瓶ごと爆破した錠剤……えぇと、なんだっけ? やたら長ったらしい名前だったよな?
なんか、死にそうになった時に飲むと強くなる……みたいな名前だ!
正式名称は覚えてないし、覚えられるか、こんなクソ長い名前っっ!
……ともかく!
「これで形成逆転だな? チャンピオン?」
私はうっすらと笑みを浮かべて答えた。
自分でも分かる。
……確かに、瀕死の状態で飲むと、その効果は抜群の様だ。
……そう。
この薬は『死にそうになる』必要があった。
よって、私は敢えて補助スキルのレベルを5に戻し……その上で、チャンピオンの攻撃を受けたのだ。
こうする事により、私は致死の一つ手前の状況まで自分を追い込む事が出来……まさに死の淵を彷徨う状況に近付く事が可能であったのだ。
しかし、本当に致死に至れば、なんの意味も果たさない。
それでは、単に自殺願望があっただけのレベルになってしまう。
「……つか、この薬も危険だな……一つ間違えたら、本当に死んでしまう人間が出て来る」
私は苦々しい顔になってぼやいた。
その直後の事だった。
ドンッッッッ!
一気に間合いをゼロにして来たチャンピオンの鉄拳がやって来る。
その鉄拳を……私は右手一本で止めてやった。
ニィ……と、笑みが生まれる。
「……っ⁉︎」
直後、チャンピオンの目が大きく見開かれる。
当然だ。
今の私は、自分の能力を限りなく倍加させたのだからな!
しかも、気力・体力・魔力が一瞬で全快している!
名前は馬鹿みたいだが、その効能もある意味バカみたいだ!
意味はちょっと違うけどな!
「さぁ〜て、第2ラウンドだ。今度は、さっきの様には行かないぞ?」
超龍の呼吸法 レベル6!
一気に能力が上昇する。
……そして、エナジーの消費が圧倒的に少ない!
まさか? これ……私の中に生まれている加護の能力まで『倍加』するのか?
厳密に言うのなら、倍加ではないのかも知れない。
本当の本当に死の淵まで追い込んでは居なかったからだ。
しかし、限りなく死に近い状態まで追い込んだ事は間違いない。
何故なら……私の能力は、まるでリガー達と半融合を果たした時と遜色のないレベルまで、エナジーが上昇しているのだから。
「思わぬ所で、自分の能力を上げてしまったな……はは! 感謝しようじゃないかっ!」
この調子なら、もう一段階上げても……行けるなっ!
超龍の呼吸法 レベル7!
「………っっ!」
チャンピオンの顔が蒼白になった。
無理もない。
もはや、圧倒的に私が全てのステータスを上回って来たのだ。
そして、その事実を……チャンピオンは感じ取れる能力を身に付けてしまったのだから。




