打倒! リダ・ドーンテン!【12】
「ぐわぁぁぁっっ!」
爆破を食らったアシュアは、まるで魔王がやられた時の断末魔みたいな勢いで叫んでは、ばったりと倒れた。
……まぁ、思えばコイツも魔王の一角みたいな物だから、倒される時は魔王の断末魔を上げるのだろう。
だけど、こんな演技掛かった倒され方なんて、他の魔王はやらないと思う。
「……っ! 専務さん! しっかりして下さい! それとリダさん! いきなり爆破するなんて……やはり、あなたは魔王なのですかっ⁉︎」
直後、チャンピオンが倒れたアシュアの元へと向かい、慌てて回復魔法を発動させ……間もなく私へと非難する感じの声を上げた。
……う。
私の視点からすれば、アシュアが失礼な事を言ったから爆破してやっただけの話ではあるんだが……確かに、いきなり爆破するのは、余り良いやり方ではない。
つまらない事を言った人間に対して、問答無用で殴っている危険な人間と大差のない事をしている……と言われたら、その通りだとしか他に言い様がないからなぁ……。
「すまん、チャンピオン。私も少しやり過ぎた。次からはもう少しだけ我慢する事にしよう」
……まぁ、本当に少しだけだと思うけどな!
「分かって貰えたのなら良いのです。僕もリダさんの事は嫌いにはなれません。やはり悪い人には見えませんから」
謝る私を見た所で、チャンピオンは朗らかな笑みを柔和に浮かべて返答した。
……くっ! なんて事だ。
普通に格好良いではないか!
いや、可愛いも混ざっているぞ!
なんと言うか、格闘技の世界チャンピオン……とか言うと、無骨な面構えだったり体躯を想像してしまいそうになるのだが……チャンピオンは普通にスレンダーな体躯で、顔も美少年寄りだ!
なんて事だ!
私のストライク・ゾーンに近いではないか!
完全なるストライク・ゾーンかと言うと、実はその限りではないのだが……しかし、これは妥協しても問題のないレベルと述べても差し支えない!
性格だって申し分ない、良い子だし……もう、これは彼と付き合っても良いんじゃないのか?
………。
いや、待て!
まだ、結論を出すのは早いぞ、リダ・ドーンテン!
今までを考えろ!
大抵、私の身近に格好の良い男が出現した時は、なんらかのオチがあったではないか!
そうだ……そうだぞ!
ここで、時期尚早な台詞を口走った後に、思わぬオチがやって来ては、自分に不幸が降り注がれると言う……これまでのほろ苦い教訓を忘れてはならない!
どちらにしても、このチャンピオンに関しては私も良く分かっていない。
仮に付き合うにしても……もう少し、色々と互いを知ってからも遅くはないと私は思うのだ!
果たして。
「ありがとう、フェル君……それにしても、回復魔法も使えるのだな? フェル君は勇者にでもなるつもりかな? あるいは上位の冒険者に? なんにしても素晴らしい能力をお持ちの様だ」
チャンピオンに回復して貰ったアシュアは、少し驚いた顔になって言う。
これに、チャンピオンは少しだけ照れた顔になりつつも、
「最終的には冒険者にはなりたいと思っておりました……特に昨今はモンスターが、時間の流れと共に強くなっております。少しでも自分の力をみんなの平穏に役立てたい……そう思っておりました」
アシュアへと胸を張って答えていた。
……うむ!
これは、中々素晴らしい考えだな?
地域住民の安寧を目的とするのなら、冒険者ではなく衛兵や騎士になった方が良い気もするのだが……実を言うと、冒険者もまた地域住民の平穏を築く礎にもなっている。
なんなら、騎士や衛兵よりも活躍しているんじゃないのだろうか?
騎士の大半は、国家の中心部……例えば、王国なら王宮を、政府であるのなら政府官邸を守護する役割を持つ。
大半と述べた通り、全員がそうしている訳ではないが、国家にとって大切な人間を守る目的を持っているのが騎士だ。
抽象的に述べれば、SPと同じ感じだな?
衛兵も似た形ではあるのだが、トウキ帝国の場合は治安維持を目的としている兵士の事を衛兵と述べる為、街のお巡りさんの様な職務を主としている。
人を守る役割もあるのだが、どちらかと言うと対象は犯罪者である事が多い為、冒険者の様に悪さするモンスターを倒す様な仕事をする事はない。
強いて言うのなら、トウキ帝国軍……つまり軍隊であれば、地域住民の為に命を懸けて戦う事もある。
しかしながら、実を言うと……この軍が動く事は限りなくゼロに等しい。
理由は主に二つある。
一つは、この世界には冒険者協会がある事。
暴れるモンスターを退治する事を目的とした、巨大な鎮圧組織が既に存在している為。
ここらの関係上、軍が出る様な規模の深刻な問題にでも発展しない限りは、帝国軍が動く様な事はない。
二つが、先進7カ国による平和条約による物である。




