打倒! リダ・ドーンテン!【11】
相変わらず神出鬼没な悪魔だっ!
つか、授業中にいきなり乱入して来るんじゃないよっっ⁉︎
ともかく、何か一つぐらいは文句を言い放ってやりたいと思える様な登場の仕方をして来たアシュアは、
「しっかりと言質を頂きましたよ、リダ様? 要は『どんな方法を使っても』リダ様に勝てば、この優男と交際をする訳ですよね? バアル様と付き合うと言う事がなくなる訳ですよね? だって、それは浮気になるのですから?」
本当にビックリするまでの自己中心的な思考を元に口を動かしていた。
私的に言うのであれば、
「そんなまどろっこしい真似をするまでもなく、バアルと付き合う事はないから安心しろ」
「フハハハッ! 流石は魔王リダ! 平然と嘘を言う! その様な甘い虚言に騙される私ではないわっ!」
真実を語ったまでだが?
……まぁ、きっと……このアホには何を言っても無駄なのだろう。
つける薬がないとは良く言った物だ。
誰か馬鹿が治る薬を開発してくれない物だろうか?
「リダさん? こ、この……個性的な美人は誰ですか?」
チャンピオンは、唖然とした面持ちのまま私へと尋ねて来た。
当然の態度だった。
きっと、私だってアシュアを初めて見たのが今の様な状況であったのなら、今のチャンピオンと同じか、それ以上に驚いた態度をとったに違いない。
「コイツの名前はアシュアと言ってな? 株式会社・ベルゼブブと言う、迷惑としか他に形容出来ない謎めいたアイテムを販売している、胡散臭い会社の専務をしている」
「専務ですか? すると、偉い人……って事で良いんですかね?」
「まぁ、ベルゼブブと言う会社も、世界規模で展開している巨大グループでもあるし? その会社の専務をしているんだから社会的な地位はあると思う」
「そうだったんですか……分かりました! 教えてくれてありがとう! リダさん!」
チャンピオンは答えてから、私にお礼を言ってから頭を下げて来た。
なんだかんだで性格は良い子だと思う。
「専務さん、こんにちわ! フェル・ナンコウと言います。よろしくお願いします」
そこから、突発的に現れたアシュアに対し、笑顔で挨拶をしていた。
なんの脈絡もなく、いきなり教室に空間転移して来た相手だと言うのに、全く動じる事なく挨拶まで出来る辺り、流石はチャンピオンと言うべきだろうか?
中々の大物じゃなかったのなら、ここまでの態度を取る事なんか出来ないだろう。
あるは、ただの馬鹿かのどちらかだ。
「……ふむ、フェル・ナンコウ君か。よし覚えたぞ?」
チャンピオンの挨拶を受けたアシュアは、程なくしてジロジロと……値踏みでもする様な感覚でチャンピオンを見据えた。
「……? どうしました?」
チャンピオンは不思議そうな顔になってアシュアへと声を吐き出すと、
「なるほど、良く分かった! 分かり過ぎるまでに良く分かった! 確かにキミ……フェル君で良いかな? ともかくフェル君の実力は『まぁまぁ高い』事は私も認めよう。しかし? そのレベルは近くにいる平べったい上位魔導師のぺったん子と同レベル。惜しいな……普通の人間であれば十二分な実力ではるのだが、魔王リダはもはや人間ではないからなぁ……」
アシュアはそう答えて嘆息した。
どうやら私に爆破されたいらしい。
そして『ぺったん子』と言う名前を耳にした瞬間に、フラウがこれでもかと言わんばかりの勢いで眉を捩っていた上に、間もなくアシュアへと非難がましい台詞を姦しく叫んでもいたのだが……省略。
ハッキリ言って、果てしなくどうでも良い光景だった……とだけ、述べて置こうか。
「今のフェル君の能力を冒険者協会公認のランクに当てはめると……S+程度だろうか? この程度の実力では、魔王リダからすれば右手の人差し指で勝てるレベルだ。フェル君の攻撃を全て人差し指でガードした挙句、最後にデコピンを貰って一撃KOされるだろう」
「……なっ⁉︎ 魔王リダとは、そんなに強いのですか!……そ、そう言えば、ハンデとして『左手の人差し指だけ』で戦うと言ってました……利き手じゃなくても勝てると言う事なのでしょうか⁉︎」
「その通りだフェル君……このままでは、魔王リダに勝つなど永遠に不可能……この学園にいる全て者……いや、学園長を抜かす全て者が束になって掛かっても……尚、片手一本で全ての者を地に平伏してしまうまでの魔王なのだ! ああ! なんて恐ろしい! まさに全人類のみならず、全ての生きとし生ける者の大敵……それが、魔王リダなのだよっ⁉︎」
ドォォォォォォォォンッッッ!
喧しいので爆破して置いた。
本当に、この悪魔はロクな事を言わない。
そもそも、悪魔王はお前だろうよ?
一般的に『魔王』と略されるけど、悪魔王も歴とした魔王なんだからな?




