打倒! リダ・ドーンテン!【9】
ドドドドンッッッ!
次から次へとやって来る標的を、出て来た瞬間に爆破して行くアリン。
レベルアップのスピードも異常で……開幕数十秒もしない内にレベルが上昇して行った。
そして、ラストのレベル10も難なくクリア。
得点は……言うまでもなくな? 100点だ。
「………」
チャンピオン、絶句。
もはや、本当に現実なのか? と、口から吐き出したい様な顔をしていた。
……ぷぷっ!
……おっと、いかんな?
当人は、きっと本気で驚いているんだろう。
だけど、あの程度で驚く時点で……コイツは本当にチャンピオンなのか?
やっぱり、あれかね〜?
冒険者の様に、生きるか死ぬかの様な、ルール無用の殺し合いが標準の世界で生きている私達と違って、ちゃんと決められたルールに従ってやっている連中とでは、住む世界が違い過ぎるのかねぇ〜?
……ふと、こんな事を考える私であったが、実際に口から吐き出すまでには至らなかった。
やはり、思っていたとしても、実際にそう言う事で自慢気にマウントを取る様な事は、人としてやってはいけない事だと思うからな!
だけど……うむ!
こう言う態度を見ると……少しだけ悪戯心を刺激されると言うか、何と言うか。
「一つだけ言おう、チャンピオン。アリンはあれでまだ本気を出してはいない」
「……っ!」
私の言葉に、チャンピオンは愕然となった。
……にししっ!
もう、本人には少しばかり申し訳ない気持ちとかもあるんだけどさ?
でも、ここ最近はコイツに振り回されっ放しだったからな?
ついつい……まぁ、ちょっとだけ反撃してやりたかったんだ。
「なんだよ、チャンピオン? そんなの『当たり前だろう?』その証拠に、アリンは『一歩も動いてない』だろ? 右手を高速で構えていただけだ」
「……た、確かに」
私の言葉を耳にして、チャンピオンは愕然とした顔になった状態で頷いていた。
身体はワナワナと震えていた。
きっと、かなり心因的にショックだったのだろう。
そんな時だ。
「終わったお! 100点だったお、か〜たま! アリン、凄い?」
演習を終えて、小走りに近付いて来たアリンが、ピョイ! っと私にジャンプして胸元に収まって来た。
その一部始終を見ていたチャンピオンは、少し不思議そうな顔になって言う。
「か〜たま?……えぇと、まさか……とは思うけど、その……リダさんの娘って事はないよね?」
「娘だ」
「………」
チャンピオンはポカーンとなった顔のまま、言葉を失っていた。
……いや、ちょっと面白い反応をするんだが。
何と言うか、このチャンピオン。
普通に会話をしてみると、存外可愛いヤツだったりする。
まぁ……私へと無駄に挑戦する事だけが地味に面倒だし、周囲にいる女子の視線が未だに痛いと言うか、何と言うか……。
ともかく、ちょっと面倒臭い部分があるけれど、チャンピオン本人は決して悪いヤツではない……かな? と、思う程度にはなっていた。
「そ、そうなんだ……リダさんって、見た感じだと僕と同じ位の年齢に見えるのに、もう既婚者なんだね? ちょっと驚いたよ」
「う〜ん……まぁ、戸籍的に言うと『未亡人』だな? あと、年齢だが……一応、16歳ではある。次の誕生日で17になるから、もうすぐ17歳だけどな?」
私は笑みのまま答えた。
実年齢は、密かに違うけれど……そこは秘密だ!
「えぇ……っと。た、大変な人生を歩んでいるんだね……」
チャンピオンは、少し言葉を選ぶ形で私へと口を動かしていた。
……うむ。
やっぱり、チャンピオンは何気に性格は悪くない。
そうなると……あれかな?
普通に努力して、向上心とか人一倍で。
そう言う物を積み重ねて来た、正真正銘の好青年なのかな?
あまりにもストレートと言うか、素直過ぎるまでに素直な性格をしているから、最初の私は奢りを持っている自信家に見えてしまったのかも知れない。
ふむぅ……もしそうであるのなら、私も少しばかりチャンピオンに対しての見方を変える必要があるかも知れないな?
ま、そこはそれとして。
「折角だから、自己紹介させて置こう……ほら、アリン? そこのお兄ちゃんに挨拶なさい?」
「お? 分かったお!」
答えたアリンは、再びピョンッと私の胸元から飛び降りては、軽やかに着地した後、
「はじめまして! アリンと言いましゅっ! か〜たまの娘でしゅ!」
「ああ、ど、どうも……フェル・ナンコウと言うよ? よろしく」
ペコリと頭を下げたアリンに、チャンピオンも頭を下げる。
うむ! やっぱり誠実な美男子だったか!
こりゃ、フラウがファンクラブに入会した理由も納得だ!
私は入らないけどなっ!




