打倒! リダ・ドーンテン!【3】
マジで、この失礼な男はなんだっ⁉︎
コイツの良い所なんて、結構な美男子だって事ぐらいしか、他にないんじゃないのかっ⁉︎
そこまで考えた所で……ハッ! っとなる。
この美男子……何処かで……ああっ!
「ああ、もしかしてアンタがあの有名な世界チャンピオンか?」
名前は…………なんだっけ?
顔を覚えるのは得意なんだが、名前は良く忘れる私。
しばらく思い出そうと悩んだが、無理そうだったので諦めた。
「……フッ! そうか、アナタも僕の事は知っていたんだね? 有名人はツラいね?……あ、サインが欲しいなら、特別に書いてあげても構わないけど?」
「いらん」
やたら高慢な態度で言って来る美男子に、私は一言答えてから、スタスタと歩き出した。
「だから、ちょっと待ってくれ! 僕は君に会う為に、ここまで来たんだ!」
……は?
私はポカンとなった。
ハッキリ言って意味不明だ。
つか、もっと言うのなら、
「私にはお前に用事はない……って事で」
「だから、待ってくれよ! アナタが『あの』リダ・ドーンテンさんなのだろう? 次世代の上位冒険者となる者の大会とも言える剣聖杯で優勝し、世界屈指と言われたユニクス・ハロウをも打ち負かし、屈強な戦士や魔導師がゴロゴロしている、まるで魔境の様な学園で『魔王』とさえ呼ばれている、最大にして最強の生徒なんだろ? 違うかい?」
ドォォォォォォォォンッッッ!
チャンピオンは爆発した。
ちょっとイライラしてしまったので、少し火力を上げてしまったが、相手は世界チャンピオンだか、なんだか? まぁ、ともかくそう言うヤツだから大丈夫だろう。
「……なっ! えっ⁉︎ おわぁぁぁぁっ!」
世界チャンピオンだかは、私の爆破を受けて吹き飛び、ぷすぷすと全身から煙を出しては、バッタリと倒れた。
……うむ。
世界チャンピオンとか言う割には、大した事ないな。
見る限り、完全に昏倒してしまった様に見える。
異種格闘技戦とか言うのは、確かなんでもアリの戦いだった気がする。
確か、武器も木剣の様な殺傷能力がない物であれば使ってもOKだったし、魔法に関しても相手を殺す様な魔法じゃないのなら、問題なく使う事が出来た筈だ。
つまり、私の爆破魔法を一発喰らった程度で、アッサリKOしている様では、世界チャンピオンの名前が泣く。
果たして。
「きゃぁぁっ! フェル様! しっかりぃぃっ!」
バッタリ倒れたチャンピオンの元に、あたかも砂糖を追い求めるアリの様な勢いで女性陣が群がって来た。
「ちょっと、リダさん! アンタ! いきなり不意打ちで爆破魔法なんて、汚いじゃない!」
そして、一部の女性に妙な因縁まで吹っ掛けられる。
何でもありの格闘家なのに、単なる一般人の私が発動した爆破魔法一つさばく事が出来なかった時点で問題だろうに。
「ちょっとリダ! アンタ! そこまでマジになって爆発しなくても良いでしょっ⁉︎ 相手はチャンピオンなんだから、優しくしなさいよ!」
そして、チャランポランとしか、他に形容する事が出来ない台詞をしれっと言って来たフラウなんぞが、周囲の女性に合わせる形で私に叫んで来た。
……ったく。
こっちは、勝手に右手を掴まれた挙句、勝手に学園魔王とか呼ばれて、失礼極まりな事を連続でされたと言うのに!
しかし、ここで申し開きをしても、倍返し所ではない反撃を、周囲にいる不特定多数の女性陣から受けるに違いない。
これぞ、まさに数の暴力!
リダさんは、色々な人から多方面に渡って責められるのが嫌いなのだ!
……ってか、マゾでもない限り、こんなのを好む人間なんているか!
ともかく、ここは撤退だ! 撤収だ!
三十六計、逃げるに如かずと言うばかりに、私はその場から逃げ出した!
全く! マジでなんなんだよ!
結果的に、強制的な悪役になってしまった私は、半ベソのままアリンと一緒に今晩のおかずを買いに行く事になった。
そこで、アリンが優しく私を励ましてくれたので…………今日の所はアイスを買ってやった。
心の底から喜んだ私だが、アリンが地味に『か〜たまチョロイお!』とかって感じの表情を見せていた様な気がしたけど……気のせいって事にして置いた。
かくして、これが私にとって受難の始まりになるとは……この時の私には全く予想する事が出来なかった。
◯◯◯◯●
……翌日。
何故か、妙にざわめく教室内へと、私は不思議そうな顔になって入っていく事になった。
一体、何が起こっていると言うのだろう?
サッパリ分からなかった私が居る中、
「リダ! ビックニュースだよ!」
フラウが、鼻息を荒くして私に叫んで来た。
……お前のビックニュースは、大抵どうでも良いニュースなんだよな。
次から、スモール・ニュースと言い直して欲しい所だった。




