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もう一人の自分と、何もかもが自分の記憶と合致している世界【18】

 相も変わらず……と言うか、もはや相手すらしたくない行為を平然とやっていたバアルとアシュアの二人を前に、私は苦々しい顔をしつつも、


「そう言えば、お前らもあっちの世界に行ったんだよな? お前らは何処に居たんだ?」


 私はそれとなくバアルとアシュアの二人へと声を向けた。


 すると……


「……うっ!」


 バアルはビクッ! っと、気まずい顔になり、


「ふふふ! フハハハッ!」


 アシュアは、何故かマウントでも取ったかの様な態度を取ってみせる。


 ………?


 一体、何が起こっていると言うのだろう?

 事情を聞かないとサッパリ分からない。


 他方、ルミやフラウの二人はちょっとだけ苦笑いになり、ユニクスはアシュアと同じ様なマウントポジションっぽい顔付きを見せている。

 その様子を見る限り、どうやら知らないのは私だけの模様だ。


 一人、ルゥ姫だけ表情が変わって居ないけど……これは『我関せず』って感じの感覚を、素でみせているだけだろうし。


「リダ様! 聞いて貰いましょうか! 実は、あっちの世界での私は……なんと、バアル様と結婚していたのです! それも、しっかりと家族円満! 更には二児の母までしておりました! 自分の分身である上に、愛しのバアル様の息子達が二人も!……ああ、幸せな日々でありました!」


 アシュアは、聞いてもいないのに、いきなり私へと熱弁をふるった。

 ……そ、そうなのな?


 アシュアの話に間違いがないのであれば……どうやら、バアルと結婚していたらしい。


 何処の街に居たのかは知らないし、特に詮索する必要もないので、聞くつもりもなかったのだが、恍惚の笑みでうっとりとした表情のまま力説している態度を見る限り、アシュアなりに最高の幸福空間の中にあったと言う事だけは、聞かれるまでもなく理解する事が出来た。

 ……ま、私からすれば、どうでも良い事ではあったのだが。


「ち、違うんです! リダ様! あの当時の自分は、自分の身体だと言うのに、自分の意思で動かす事が出来ず……言うなれば、封印された状態も同然だったのです! よって、自分の本意による物ではなく、あの世界に居たバアルのやっていた事に過ぎません! 自分には塵も芥も関係しない話なのですっ!」


 程なくして、バアルが私へと怒号の訴えなんぞをしてみせる。


 私は爽やかな笑みをニコニコと浮かべ、


「うん、良いんじゃないのか? それで? 私としては、この世界であっても、同じ様な顛末を迎える事を祈っている。いやぁ……良い目標が生まれて、良かったじゃないか」


 二人の祝福を、心から願った。


「ちょっ……リダ様! 正気ですかっ⁉︎」

 

 直後、バアルが愕然とした顔になって叫び、


「そうですよね! 流石はリダ様! ちょっとアサシンダガーを使って亡き者にしようかと思っておりましたが、今日の所は殺意を引き下げて置こうかと思います!」


 アシュアが、ぱぁぁぁっっ! っと、輝いた顔で陽気に語り、この世の春でも謳歌おうかしちゃってるんじゃないのか? って感じの態度をアリアリとみせていた。

 アシュアの周囲にハートが無造作に浮かんでいたが……これ、きっと、魔法か何かでわざわざ演出しているんだろうな。


 ……何もここまでしなくても良いと思う。


 そして『今日の所は』なんぞと言っている為、明日からは隙あらば私の命を狙って来るに違いない。

 どうでも良いけど、私はお前に暗殺される様な事はしてないぞ……マジな話。


 何にせよ、あの時に並行世界へと飛んで行ってしまったメンバー達は、それぞれあっちの世界に居た自分達の精神と半融合し、それなりに平凡な生活をしていた模様だ。


 アシュアの場合、かなり幸福な生活をしていた模様だが。


 そして、可能ならば……


「ああ、あの世界が恋しいです、リダ様……あの世界へと再び向かう方法はございませんか? 並行世界へと向かう機器は、あれから謎の故障を起こしてしまい……全く作動しなくなってしまったのですよ?」


 ……なんて台詞を、痛烈な表情のまま答えるアシュアが居る様に、まだあっちの世界が恋しい模様だ。


「なっ! 何を言っておるのだ、アシュア! このバアル! 自分の意思で身体を動かす事が出来ていたのならば、どんな世界であろうと、間違いなくリダ様を探して結ばれる道を探し出す! つまり、あの並行世界へと向かったとしても無駄なのだ! フハハハハハッ!」


「……くっ……そうか、盲点でした……つまり、並行世界は関係なく、本人の意思が重要だった……ならば、次回はバアル様を洗脳する機器を、株式会社・ベルゼブブの職権を使いまくって製造するのみ!」


 完全な、職権乱用ではないか。


 ……ま、私に迷惑が掛からないのであれば、好きにしてくれ。 

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