もう一人の自分と、何もかもが自分の記憶と合致している世界【17】
……ああ、もうっ!
本当は、ユニクスも無事だった事が知れて、良かったと安堵の息を素直に漏らしたい所だと言うのに!
結局は、人の逆鱗に触れて爆発していた変態勇者が居た頃……。
ガチャッ!
……まだ、来るのかよ。
何となく、もうお腹一杯なんですけど! って気持ちで精神が充満しまくっている私が居る中……
「リダ様! お目覚めになられましたかっ! これは目出度い!」
……更に面倒なのが、私の部屋にやって来た。
……ふ。
思えば、私の周りと言うのは……こんなおかしな連中しか居なかった様な気がしてならないぞ……。
私の病室にやって来たのは、右手にリダちゃん人形と言う、私に似ている様で全然似ていない謎の人形を、しょ〜こりもなく握っていた学園切っての変態学園長こと、バアルだ。
「私は祈っておりました! 今もこうして……愛しのリダちゃん人形を傍らに置いて……リダ様が一秒でも早く目を覚ます様に祈っていたのです! ね? リダちゃん?」
バアルは超絶真剣な顔で『くわわっ!』っと、私に力説した後、右手に握っていたリダちゃん人形に向かって、やたら気持ち悪いにへら笑いをしながら答えていた。
もう、爆破しても良いかな?……良いよね?
ドォォォォォォォォンッッッ!
面倒だから爆破した。
もちろん、周囲に被害が出る様な事はない。
うむ! やっぱり爆破と同時に魔導防壁を張る方法は、かなり有効的だなっ!
「……リダ、いきなり爆発させるのは、流石にあんまりなんじゃないの? バアル学園長って、リダの事を誰よりも心配してくれていたし……」
間もなくフラウが苦々しい顔になって私へと言う。
そこからルミも、やや肩を竦ませる形で苦笑して、
「そうだね……私も、今回はちょっとリダのやってる事はあんまりだと思うよ」
……う。
どうやら、二人の態度を見る限り、バアルは私の事でかなり心を痛め、誰よりも心配していたらしい。
もしそうだとしたら、誰よりも心配していた相手に対し、誰よりも非道な事をしれっとやってしまった事になる。
だけど、コイツのやってる事は不快極まりないんだよな!
「分かったよ……今回は私が悪かった。素直に回復魔法を発動するからさ……」
微妙に折れる形で言う私は、
治療魔法!
間もなく、室内の床にバッタリ倒れていたバアルに対して回復魔法を発動させた。
その瞬間、
「リダ様! どうしてバアルのヤツには治療魔法を施したと言うのに、私には掛けて下さらないのですかっ⁉︎ 酷い! これは差別だ! 即刻、私にも治療魔法を掛けて頂く事を所望致します!」
既に復活を遂げていたユニクスが、くわわっ! っと、意味不明な事を私に叫び、
「ふははははっ! これがリダ様と自分との間にある絆の差だ! リダ様の右腕を名乗れるのはユニクス……貴様ではなく、この自分だ!」
私の回復魔法によって復活したバアルが、徐ろに威張り散らしていた。
ユニクスはもう回復魔法が必要ない程度までには回復していたし、バアルもユニクスも、別に私の右腕と言う訳ではない。
毎度思うが、その下らない小競り合いは、するだけ無駄なんじゃないのか……?
……と、こんな事を思っていた頃、
ガチャッッッ!
病室のドアが、勢い良く開いた。
オイオイ……まだ来ると言うのか?
「ハハハハッ! 遂に年貢の納め時だ、魔王リダ! このアシュア様が居る限り、貴様の未来に明日など………あります! ありますよ、リダ様! ってか、いつお目覚めに? いやぁ……もう、そう言う事は早く言って下さいよ〜?」
ドォォォォォォォォンッッッ!
取り敢えず、問答無用で爆破した。
ああ、全くもうっ!
なんで、私の周りには、こんな奇人しか居ないんだ!
「なぬっ! アシュアだとっ⁉︎ 貴様……自宅のリダ・レンジャー達に頼んで、寝ている間にベットごと鎖で雁字搦めにして、10トンの鉄球と一緒に、トウキ湾へと沈めて来た筈だと言うのに……どうして、ここにいる⁉︎」
しれっと酷いな……おい。
聞いている限り、冗談にしか聞こえない様な事を平然と口にしている様に聞こえるが、きっと本当にやっていたのだろう。
流石は悪魔皇帝である。
「フハハハッ! 甘い……甘いですよ、バアル様! 腐ってもこのアシュアは、悪魔王! たかが10トン程度の鉄球の重りなど、この私の中で燃えるバアル様への熱い想いから比較すれば綿毛も同然!」
確かにお前の愛情は重そうだな。
……きっと、私なら重過ぎて胃もたれしそうだ。
ともかく、大した意味もなく威張り散らすアシュア。
ここに入って来た瞬間に爆破されていたと言うのに、五秒で復活しては、高慢知己な高笑いまでしていた。
……なんでお前らは、そんなに素早く回復する事が出来るんだよ。




