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もう一人の自分と、何もかもが自分の記憶と合致している世界【9】

 この対策は、腐リダの言葉をヒントに実行した物だ。

 ……恐らく、この時代のアリンは光魔法を使ってスカートの中を暗くしているんじゃないのか? と予測する事が出来る。


 正直、そこまでするのなら、普通にパンツ系の物を履けば良いんじゃないのか? と言いたくなるのだが……まぁ、ミニは可愛いし? アリンは私に似て脚線美が際立つ女の子だから、何かとミニは重宝するのだろう。

 どちらにせよ、これで脅威は去った。

 スカートの中を見ようとしても見えないし、そもそも変態は交番へと絶賛連行中だ!


「よし! じゃあ、このままジェット・コースターに乗るぞ? どんな感じだろうなぁ?……なんか、ちょっと楽しみだ」


「はは! そうだな? 実は俺もちょっとワクワクしてる。俺の世界ではまだまだ作られないだろうし、もう乗れない気がする分、特別な気がするんだよな」


 私の言葉に、リガーも笑みで頷いて来た。


 そんなリガーの笑みが、地味に眩しい。

 ……ドキドキする。


 腐リダの感情が入り混じっているからこその感情だと言うのは理解しているけど……はは、まるで私自身がそうと感じているみたいだ。


 いや、あるいは……私も。


 ………。


 考えるのはよそう。


 これ以上考えるのは……きっと、悲しくなる。


 見れば、リガーも幾分か複雑な心情になっているんじゃないのか? と言いたくなる様な顔になっていた。

 もしかしたら、私と同じ様な事を考えているのかも知れない。


 今のデートが終われば、もう永遠に会う事がない……その顛末について。


 ……何だか、湿っぽくなってしまったな。

 少なからず、こんなのは私らしくない。


「どうしたリガー? なんか地味に暗い顔をしているぞ? もっと明るい顔をしろよ? こぉ〜んな可愛い女の子が、お前と一日デートしてくれているんだぞ? ほら、笑え?」


「それを、自分で言うか?」


 私の言葉に、リガーは苦笑した。

 だけど、私の嘯きに含まれていた、私なりの気持ちだけは理解してくれた模様だ。

 

 別れが来るのは仕方ない事だし、理解も出来る事。

 だから……だから。

 どうせ別れるのであれば、明るくさよならした方が良いじゃないか?


 そんな、私なりに抱いていた気持ちにこたえるかの様にして、リガーは朗らかに微笑んだ。


「よぉぉぉし! 今日は遊び倒すぞ! ここにあるヤツを全部制覇してやる!」


「あはは! その意気だ! 私も全部付き合ってやるぞ!」


 まぁ、この混雑状態では、一日を全部で回る事は不可能だろうけどな!


 だけど、その意思やヨシ!

 私も精一杯、今と言う時間を楽しもう!


 こうして、私とリガーの二人は、遊園地を満喫して行くのだった。




          ◯●●●●




 その後、私達は様々な乗り物や、アトラクションに入って行き、楽しい時間を過ごした。


 ジェット・コースターはやっぱり楽しいな!

 なんと言うか? 自分で飛ぶのとはまた違った感覚だよな! 


 あと、なんかデッカイ船! あれも、なんか変わった感覚だ!

 ああ……あとは、だな? 上にゆっくり上がって行って、そのままスッットォォォォンと落ちて行くヤツ!

 これも私的にはお気に入りだ。


 お化け屋敷にも入ったが……これはイマイチだな。

 なんて言うか、お化け? まぁ、悪霊レイスの親戚みたいなのとか、ゾンビを可愛くした様なのが出て来たけど……正直、本物を見ている私からすれば、所詮は作り物と言うかまがい物と言うか……。


 まぁ、流石に本物を出したら危険だし、これは飽くまでもアトラクションの一種なのだからして、頑張った方ではあるのかも知れないけど……現役の冒険者からすれば、少し物足りなさを感じてしまうな。

 一般的に考えるのであれば、かなり楽しめるアトラクションなのかも知れないがな?


 途中、昼休憩を兼ねて食事をし、デザートにクレープを食べたのだが……このクレープが革命的に美味だった!

 正直、食べた瞬間に驚いたぞ!

 え? クレープ……って、こんなに美味しかったのか?……と。


 私の世界にあるクレープとは、生地からして違う!……違い過ぎる!

 このクレープ技術と言うか、レシピだけでも、私の世界に持って帰れないかなぁ……と、割りかし本気で思ってしまった程だ。


 ……と、そんなこんなで、気付けば夕方。


 ボチボチ、空が茜色に染まるなぁ……と、思われていた頃。


 私達は最後の締めくくりとして、観覧車に乗っていた。


 うむ、絶景かな!


「おお、遊園地の園内はおろか、街の方まで見えるんだな? ちょっとした展望台に登るよりも景色が良いんじゃないか? これ?」


 観覧車の席に座りつつ、外の景色を眺めていた私は、感嘆の声を吐き出していた。

 きっと、もう……この世界を見る事は二度とない。


 私には私なりの世界がある。

 

 だから、しっかりとこの瞳に……胸に焼き付けて置こう。


 もう一人の私、リガーとの思い出と一緒に。

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