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もう一人の自分と、何もかもが自分の記憶と合致している世界【7】

 どう言う訳か? ヤツはいつぞやの商店街で見せていた、謎の胡散臭いフードを被った状態のまま……右手にスマホを構えながらも、ドキドキしながらスタンバイしている様にみえた。


 その先にあったのは……これから私達が乗ろうとしていたジェット・コースターの入口。

 ジェット・コースターの乗り込み口は少し高い部分にあり、階段を登って行かなければならなかったのだが……その階段の真下辺りに立った状態で、今か今かと待っている……んじゃないのかなぁ? って態度を取っているのが、私なりに分かった。


 ……うむ。


「このジェット・コースターを乗るのはやめよう」


 私は苦い顔になって言う。


 リガーは不思議そうな顔になった。


「どうしたんだ? あんなに楽しみにしてたのに?」


 リガーの問いに、私は言葉ではなく態度で示した。

 普通にフード姿の不審者と言えるだろう変態へと指を差したのだ。


「……パラレルか? なんだよ? もしかして心配になって様子でも見に来たのか?」


 そう言った良心的な代物であったのなら、私だって素直にジェット・コースターに乗ったと思うぞ……?


 私がジェット・コースターに乗るのをやめた理由……それは、コースター乗り場に行く途中の階段にある。


 この階段……床の部分が金網になっているんだよ。


 つまり、だ? 『下から見える』んだ!


 ここがポイントだ。


 何故なら、変態がスマホ片手に待ち構えているのは、この階段の『真下』で、私はこの『真上を登って行く』事になる。


 そして、階段が金網状になっていて……しっかりと真下から覗き込めば、真上の人間が見えると言う事になる。


 そして、今の私はミニのスカートだ!

 ハッキリ言って、元来の私であれば間違いなく履かない様なスカートだ!


 マキシ・スカートですら、妙にスカスカして……なんか、股間の辺りがビミョーに頼りない気持ちになってしまう様な私が、よりによってニー・ハイこそ履いている物の、事実上……スカートの中身を擁護する物が一切ない状態で、ミニなんぞを履いている! 膝上二十センチ以上の、無駄に足を見せつける為にあるんじゃないのか? って感じのスカートを、だっ⁉︎


 そんな状態で、こんな金網の階段を登ってみろ?


 もう、真下の人間に『私のパンツを見てね☆』と言ってる様な物ではないかっ!


 それでも、普通に考えれば? 階段の真下に陣取って……ましてやスマホ片手に待ち構える様な変態は……まぁ、常識的に考えて早々居ない。

 居たら居たで、ソッコーお巡りさんに連れて行かれるのが目に見えているだろう。


 そして、それらのリスクを考慮するのなら、ここまで露骨な事は、元来であるのであれば出来ない。

 そう! 出来ない! やる筈もない!


 しかし、あの変態はやってのけてしまうのだ!


 挙句、あの胡散臭いフードを被った状態で!

 もはや、単なる不審者だぞ……街中であんな格好をしたまま歩いていたのなら、間違いなく職務質問されるに決まっている!


 ……と、そこまで考えていた時だった。


『だったら、ポケットに入っている私のスマホから通報すれば良いのではないか? それと、パンツを見せたくないのであれば、光魔法を使えば良いだろう? アリンは良くやっているぞ?』


 私の中にいた腐リダがアドバイスをして来た。


 ……なるほど。


 思った私は、ポケットに入っていたスマホを取り出し、110と入れた。

 本当は、近所の交番へと直接掛けた方が良いのかも知れないが……調べるのが面倒だったので、普通に110を入力。


「……? いきなり、何をしてるんだ? リダ?」


 途中、リガーが物凄く不思議そうな顔をしていたんだけど……その辺りで通話が繋がったので『すいません、遊園地のジェット・コースターに変人がいるので、ちょっと見て貰っても良いですか?』と、軽く詳細を述べ……その後、2、3程度の話をして通話を切った。


 ……これでよし。


「……で? お前は何処に電話してたんだ?」


 依然として不思議そうな顔になっていたリガーがいたので、私はニッコリ笑顔のまま言った。


「警察に通報した」


「………」


 リガーは絶句。


 どうして、私が警察に通報したのかは……まぁ、大体の見当は付いたであろう。

 

 ただ、完全には理解していなかったのか?


「流石に通報はやり過ぎじゃないのか?……確かに怪しい格好はしているけど、別に悪い事はしてないんじゃないのか?」


「今は『まだしてない』な? まぁ、これからする気だったんだよ……ホラ、右手にスマホ持ってるだろ? あれ、盗撮する気、満々だぞ……」


 そこまで答えた私は、間もなく金網の階段を指差してから、


「真下から丸見えの状態で、今の私が登ったら……どうなる?」


「……通報して置いて正解だな」


 全てを理解したのか、即座にリガーは私の台詞に理解を示したのだった。

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