表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1111/1397

もう一人の自分と、何もかもが自分の記憶と合致している世界【3】

 ……と、まぁ。


 かなり前置きが長くなってしまったのだが、この様な経緯から、今の私は近所にある駅ビルのカフェ・テラスにて、リガーがやって来るのを待っていた。


 待ち合わせの時間は十時。

 腕時計の時刻は九時半。


 ……いや、幾ら近いからと言って、どうして私は待ち合わせの三十分も前にやって来ているんだ?


 本当、自分ツッコミとか、器用かつ残念な事なんぞしたくはない私ではあるのだが……これは、私の中にいるもう一人のリダ……腐リダのせいだ。


 腐リダいわく『人生初めてのデートで遅刻とかしたくない!』らしく、絶対に遅刻しない時間には、待ち合わせの場所に居たかったらしい。


 ……結果、これだよ。

 見事に待ち惚けだよ!


 本当に、何をやっているんだよ、腐リダ!


『まだかなー? 早く来ないかな? ねぇ、リダママ? リガー君って、どんな格好をして来ると思う? 暇だから、一緒になって考えてみない?』


 確かに暇ではあるな。

 地味に待ち惚け状態の私がいた頃、心の中にいた腐リダの声がやって来る。


 パラレルが言っていたから、少しは理解してくれる方もいるかも知れないが……今の私と腐リダの関係は、かなり平等だ。


 今は腐リダが精神の中へと(逃げる様に)入ってしまっているが、主人格の変動も可能になっていた。

 ただ、私が思っていた以上に、この腐リダは……臆病と言うか、根性なしと言うか……はぁ。


『嘆息するまで呆れるんじゃないよ⁉︎ 私だって、緊張するんだ! そして、色々と考えてしまうんだよ!』


 ……まぁ、分からなくもないぞ?

 何故なら、感情は共有だからな?


 ここらはパラレルの意地悪さが目立つと言うか……わざとやってるんじゃないのか? と言いたくなる部分ではあるのだが……なんと、腐リダと私の感情は共有……つまり、同じなのだ。

 

 よって、腐リダの感情が高まると、私も感情が高まってしまう。

 お陰で、コイツが興奮して脈拍を上昇させると、私までドギマギした心情へと引き込まれてしまうのだ!

 全く! マジで勘弁だぞ!


 しかも、コイツと来たら……まだ来てないと言うのに、もうワクワクそわそわ状態で……ウキウキが全く止まらない!

 お陰で、私も地味に嬉しい気持ちが満たされていて……元来、乗り気ですらない筈のシチュエーションに最大の幸福を抱いているんだから……もう、笑えない。


 本当……色々と物を申したい気分だぞ。

 リガーは、並行世界にいる、もう一人の私だと言うのに。


『それは、リダママ達の世界で……だろう? 私の世界でのリガー君は全くの別人だ。ちゃんとこの世に別の人間として生を受け、しっかりと生きている!』


 ……そうなんだよな?

 腐リダの言葉を聞いて、私は眉を捩りながらも頷いていた。


 正直、謎でしかない。


 リダとリガーは、性別違いの同一人物であり、違う並行世界では全く同じ存在として生きている。


 それなのに、この世界では『全くの別人』として、普通に同じ世界で暮らしているのだ。

 しかも、この調子だと、普通に恋人になれるんじゃないのか?

 まるで、魂を二分し……その二分にした魂同士を繋ぎ合わせるかの様に、お互い惹かれ合っているかの様な? そんな感じだった。


 ……うむぅ。

 テキトーに考えた仮説ではあるが……もしかしたら、そうなのかも知れない。


 どうして魂が二分化してしまったのかは知らないし、互いに片割れとなった相手の魂を求める結末に至ったのかまでは、全く想像も付かないのだが。


 しかし、もし……生まれて来る前に、もう恋人となる事が確約されていたとするのなら……なんて言うか、ロマンがあるなぁ……なんて、思ってしまう。


 だって、これってさ? アレだろう?

 運命の赤い糸と、同じな訳じゃないか?


『キャァァァッッ! どうしようリダママ! そんな運命であったのなら、私……幸せ過ぎて鼻血が出るんだが⁉︎』


 ……おい、やめろ腐リダ!

 今のお前が興奮して鼻血なんか出したら……私の顔から鼻血が出るんだからなっ⁉︎


 まだ午前中とは言え……こんな、人が結構いる駅ビルのカフェ・テラスで、一人座っているJKが、なんの脈絡もなく顔から鼻血とか出したら……ミステリーだろっ⁉︎


『確かにそうだな! そして、ここは私の世界だから、鼻血とか出したら……私の黒歴史になってしまう! そうだ! そうだぞ、リダ・ドーンテン! お前はそんな黒歴史を残す女ではない!』 


 ……少し危なかったけどな?

 まぁ、良い。

 取り敢えず、一応の正気に戻ってはくれたみたいだ。


 ……まだまだ、地味に怪しくはあるんだけどなっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ