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もう一人の自分と、何もかもが自分の記憶と合致している世界【1】

 極論から言おう。


 ゼロ・パラレル……つまり、全ての並行世界を取りまとめているあの変態は、私の想像を遥かに超えた超人だった。


 いや、そもそも人間なのか不明なのだからして『超人』と形容するのはおかしいかも知れないが……ともかく、能力と言う面で言うのであれば、人智の枠を大幅に超越した存在だった。


 N65パラレルを回収した変態パラレルは、一瞬にして真っ白な新世界の中に居ただろうカプセルの人間達を元の世界へと戻し……そして、少し前の世界に居たであろういつものメンバーから、半融合されていた精神をあっさり引き離しては、そのまま元の世界へと戻った人間の肉体へと戻して行った。


 この作業に使われた時間……数秒。


 つまり、ゼロ・パラレルが本気を出せば、ほんのわずかな時間で全てを解決する事が可能だったのだ。


 ……くそ。

 お忍びを言う理由とか、パラレルの事情とかも分からなくはないけど、こう言う事が簡単に出来るのなら、もっと早くやって欲しかったよ、まったく!


 余談だが、伝承の道化師によっていたずらに野心を駆り立てられてしまったN65は追放されるとの事。


 並行世界の管理者でも、追放ってされるんだな。

 ……でも、追放されたら、N65は何処に行く事になるんだろう?


 ふと、私の中に素朴な疑問が生まれたのだが……そんな私の気持ちを逸早く察したのか? 間もなくパラレルは捕捉する形でN65が辿るその後を語っていた。


 どうやら、普通の人間として転生するらしい。

 普通に転生するだけなので、前世の記憶は消滅させられる。

 ……まぁ、つまるに……私達と同じ様な存在になる……と言う事だろう。


 ただ、パラレルが少しだけ底意地の悪い微笑みを作りつつ『……あ、でも一定のペナルティは受けて貰いますけどね?』みたいな事を言っていたから……もしかしたら、底辺生活を余儀なくされる様な、悲惨な家に生まれる可能性は拭えないな。


 ……う、うむ。


 N65よ、強く生きろっ!


 ……さて。


 そんなこんなで、N65との戦いに勝利してから以降の事後処理は、全て変態パラレルがやってくれた訳なのだが……。


「……う〜ん」


 地味に苦笑いしながらも、オシャレな格好で駅前のカフェ・テラスにある席へと腰を下ろしていた私なんぞがいたりする。


 格好は、季節が夏と言う事もあり、清涼系のキャミソールに同色系のミニ。

 個人的には暑苦しいので履きたくないのだが、これからやって来る相手の要望を受けていた為、ニーソなんぞを履いていたりもする。

 しかも、地味に可愛い系だ。

 ……なんで、私はこんな格好をしているのだろう?


 正直、夏場ならシャツかノースリーブのカットソーか、良いトコ頑張ってブラウスにGパンかスキニー・パンツで良いし、普段からそう言う服しか着ない。

 冬ならシャツとかパーカーで良くね?……って言うレベルだ。

 

 しかしながら、どう言う訳か? ウチの妹……いや、厳密に言うと『私の妹ではない』のだが、アリンがこの手の服を山の様に持っているのだ。


 一体、お前は何を目的でこんな可愛い系の服を無駄に所持しているんだ?

 私的に言うのなら、そこまでしなくても十分に女子力がある乙女だと思うぞ?


 まぁ、私の女子力は確かに底辺クラスだけどな!


 ……まぁ、そこはさて置いて。


 話の中に『私の妹ではないアリン』が出て来たので、察しの良い方なら幾分かの違和感を抱いたかも知れない。


 本来の私にとってのアリンは娘であり、年齢も三歳だからな?


 極論からすると、今の私は自分の世界へと『まだ』戻ってない。

 本来の予定では、私はすぐに元の世界へと戻り……半融合する以前の私……つまり、少し前に居た世界の私は、そのまま元の世界に戻っておしまい……で、全てが終わる筈だった。


 ……が、しかし。


「ちょっと、待って! もう一人の私!」


 半融合が解け、肉体から離脱し……精神体だけになった時、私とリガーだけ特別に元々の肉体でもあった、もう一人の自分と会話をする事を許可してくれたパラレルの厚意により、ちょっとばかり面倒な話が増えた。


 肉体から抜け、精神体のみとなった状態のまま、軽く会話をし……そして、別れの文句を言って自分の肉体へと戻ろうとした時……意を決したかの様な形で、もう一人の私が引き止めて来たのだ。


 ……? なんだろ?

 

『……何かあったか?』


「……その、さぁ? 悪いとは思うんだ? 思うんだけどさ……最後に私の頼みを聞いてはくれないか?」


 ……頼み?


『別に構わないぞ? 私のやれる事であるのならばな? お前には色々と世話になったし』    


 良くは分からないが、私は一応の相づちを打って見せる。


 結局の所、コイツの肉体を借りる事で、私の目的を果たしていた事だけは間違いないしな?


 ……思って、肯定的な声を吐き出したんだが……私はちょっと後悔したよ。


 なんで……って?


 それは、次に答えたもう一人の私が言った台詞が……


「わ、私は、リガー君と一緒にデートしたい! だから、最後にデートを取りまとめてはくれないかっ⁉︎」


 ……と、まぁ。


 冗談だろ?……と、真面目に言いたくなる様なお願いだったからだ。

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