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そもそも名前などあろう筈もない新世界【19】

 その重圧感は、決して物理的な作用が伴う物ではなかった筈だと言うのに……ビリビリと頬がしびれてしまう様な? そんな、錯覚にも似た何かまで感じた。


 これが……変態パラレルの実力……なのかっ⁉︎


「次は、消えますよ? 注意して下さいね?」


 パラレルは断言していた。

 キッパリと、力強く。


 ゾクゥッッ!……となるのが、私にも分かった。

 根本的に、人間が逆らえない……逆らってはならない……そんな、人間の基本的な恐怖に精通する何かをパラレルから感じた。


 ……まさか、あの変態パラレルが……ここまでヤバイ奴だったとは……っ⁉︎


 額から汗が止まらな…いっ⁉︎

 無条件でやって来る恐怖が、あたかも泉の如くやって来ては……私の精神を大きく掻き乱した。


 果たして。


「くくく……私は、そこまで無謀ではありませんよ……ええ、肝に命じさせて頂きます……では」


 伝承の道化師は再び空間を歪ませ……虚空の彼方へと消えた。


 普段は、冗談めいた口調でうそぶく様に怖がるフリをする道化師が……本気で恐怖していた。

 間違いない……ヤツは、この変態を心の底から恐れていたのだ。


 やられたよ……。

 私達には、最初からとんでもない奴が、バックに居たんだよ。

 

 そして、思う。



 だったら、オメーがやれよっっ!



「ふぅ……どうやら、今度こそ全てが終わりましたねぇ? 最後は私が出しゃばってしまいましたが……しかし、です? これでリダさんも私の素晴らしさが分かって頂けたのではないでしょうか? パンツ一枚程度なら上げても良いと思ったんじゃないのでしょうか!」


 そこは関係ない!


「お前が凄いヤツだと言う事だけは分かったよ。パンツはやらないけど、伝承の道化師が逆にビビって消えて行くのには驚くしかない……だけど、一つ質問だ。どうして全部私達にやらせた? ゼロ・パラレル……つまり並行世界の総督であったアンタは、伝承の道化師すら簡単に消滅させてしまえるだけの能力があった……それなのに、手を出さなかった。おかしくないか? お前が最初から出ていれば、ここまでの事にはならなかった筈だし、もっとスマートに解決する事が出来たんじゃないのか?」


 私は眉を捻ってパラレルに尋ねる。

 そもそも、コイツが真面目に仕事をしていたのなら、もっと序盤で面倒事が解決していたんじゃないのか?……と思えてならないんだよ?

 それならそれで、ちゃんと仕事しろよ変態!……と、私は主張したい!

 

「理由は二つ……いや、三つかな? ともかく、私なりに考えがありました。まず一つ目。リダさんの成長と場数を増やすお手伝いをしたかった。まぁ、これはリガーさんにも精通する物ですね?」


 ……?

 私の経験……だと?


「どう言う事だ?」


「そのまま……と言うべきですね? 私は未来を知る能力こそありませんが……今ある世界よりも未来に通ずる、別の並行世界を見る事は出来ます。この並行世界は色々なイフ……もしもが沢山存在しているのです。その中の一つに『もしも、リダさんとその周囲にいる面々が十年早くこの世界に生誕していたら』と言う世界もあるのですよ?」


「……は? そんなのがあるのかよ?」


 驚く私。

 パラレルは即座に頷いた。

 その上で、再びパラレルは口を動かして行く。


「すると……です? 普通にあなたの十年後を、そっくりそのまま予測する事だって出来るのです。言うなればシュミレートしている様な物ですね?……で、その上で行くと、リダさん……あなたは『ここで激戦を行う必要があった』のです。ここでN65と戦い、苦闘を制する事……あと、私の加護を得る事……『半融合で戦う事』などなど、数えればキリがありません。それら全てがあなたにとっての良い経験であり、場数です。これが一つ目の理由」


 ……ふむふむ。

 すると、他に理由があるのだな?


 それじゃあ、二つ目も聞いて置こうか。


「二つ目の理由……それは、私がゼロ・パラレルである事です。元来のゼロ・パラレルは、この程度の『些末な事』で動く様な存在ではありません。リダさんには申し訳ないのですが、そこまで『暇じゃない』んですよ」


「………」


 パラレルの言葉に、私は何も言えなかった。


 だけど、パラレルの言いたい事は分かる。

 私も、冒険者協会の会長をしているからな?


 例えば、会長の私が一つの組合ギルドで起こっている問題に加担するか?……と言われたのなら、答えはノーだ。


 そして、私はこう答える。


 そんな小さい所まで面倒見切れるか!

 こっちは全体を統率する為に、色々と仕事してるんだから、その位は自分でやれ! 

 ……ってなる。

 

 言い訳がましいが……組合を統率する協同組合の全国版である〇〇国・協同組合(ないし連合会。国や地域によって、呼び名が違う)……を、完全統率した世界協同組合が、私にとって『一つの根幹組織』なのだ。


 世界協同組合の理事長に向かってあれこれと会議をする事はあっても、それより細部の組織に対して、直接的な指示を取っていたら……身体が幾つあっても足りん!

 今は学生してて、ぬるま湯じみた生活してるけど、会長職をしてた時はマジで分単位のスケジュールだったぞ!

 しかも、それで労働時間は15時間とかだ! バカじゃないのっ⁉︎

 果ては、休みなんて1ヶ月に一日取れたら敢闘賞!

 スペシャルブラックな仕事だぞ、マジな話!

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