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そもそも名前などあろう筈もない新世界【18】

 ……てか、変態はどうして逃げないんだ?


 ふと、こんな事を考える私がいた。


 さっきは、N65の隕石衝突魔法メテオ・ストライクによって出現した巨大隕石を見た瞬間に、一人でサッサと空間転移魔法テレポートして逃げてたと言うのに。


 正直、そう言う事が出来るのなら、私も連れてけよ!……と、ツッコミの一つも入れたくなってしまう様な事を平然とやっていたパラレルであったが、今回に関しては悠然と……かつ、余裕すらうかがえる態度で、伝承の道化師ピエロの前にやって来ていた。


 ……? 

 これは、どう言う事だろう?


 どうにも事情が分からず、頭の上にハテナを浮かべた状態で、しばらくたたずんでいた私がいた頃、


「N世界の宇宙意思君……キミ、ちょっとやり過ぎ。ある程度のことわりを無視して、勝手気ままに動くのが、キミの個性だと言う事は、私なりに重々承知しているよ?……だけど、並行世界のルールをここまでメチャクチャにされては、私も動くしかない。そろそろ、火遊びはやめにするべきではないのかな?」


 パラレルは微笑みを作りながらも、伝承の道化師へと答えていた。


 ……っ⁉︎


 おい、変態パラレル……?

 アンタ、気でも狂ったか?


 相手は、あの最低最悪な道化師だぞ……?


 しかも、パラレルは言う。

 N世界の『宇宙意思』と。


 N世界と言うのは、私やリガーの住んでいる世界を意味するのだろう。


 ……ふむぅ。

 すると、この道化師ピエロは、私の住む世界にしか存在しない……かも知れない。

 実際の所は、私も知らないが……パラレルの口振りからすると、そうなんじゃないのかなぁ……と、曖昧ながらも予測する事が出来る。


 しかし、問題……と言うか、私なりに驚いたのは次だ。


 N世界の『宇宙意思』さん。

 ……え?


 宇宙意思って……みかんの親じゃなかったのか?

 ふと、こんな事を考える私がいた。


 しかし、思えば……宇宙意思と言うのは数億年に一回程度の割合で極々稀に出現する、謎の意思だ。

 生命体なのかと言われたのなら、恐らくは違うだろう。

 そもそも、物体として存在しているのかすら怪しい。


 みかんの親も言っていたが、特になんらかの目的があって生まれて来た訳ではなく……ただただ偶発的に、この広い広い宇宙空間の中で生まれて来ては……これまた、なんの目的がある訳でもなく、悠久と表現しても過言ではない時間を、ひたすらひたすら生きている『だけ』の存在。


 本当、どうしてそんなのが生まれて来るんだろうな?

 まぁ、そんな事を言ってしまえば、私達人間だって同じなんだけどさ?


 ………。


 生に対する話はここまでにして。


 数億年に一回の割合で生まれて来ると言う事は、宇宙意思は一人ではないと言う事だ。


 冷静に考えれば、いつぞやの黄金島で知り合った世界樹ユグドラシルちゃんだって言っていた。

 近所に住んでいる宇宙意思……とか言う話だ。


 つまり、この時点で宇宙意思は一人しか居ない……筈がなかったのだ。


 だが、まさか……伝承の道化師ピエロまで、宇宙意思の仲間だったとは……。


「……どおりで強い訳だよ……」


 私は誰に言う訳でもなく呟いた頃、パラレルが私の一歩前にやって来ては、


「本当は、私が全面に出ると『角が立つ』と思っていたので、敢えて『何もしません』でしたが……あなたの火遊びは、ちょっと見て置けませんねぇ? N世界の宇宙意思さん?」


 悠然と口を動かしながらも、好戦的な笑みをニィ……っと作り出して来た。


 すると……。


「そうですね……これはちょっと遊び過ぎましたか……くくく……まさか、マスター・パラレル様が直々にやって来られるとは……ねぇ?」


 伝承の道化師は、少し気圧けおされる態度を見せてから、


 ドサッッ……


 これまで抱えていたN65を、真っ白な地面に落とした。

 放り投げると言うよりも、落としたと言う感じだった。


 間もなく、伝承の道化師は両手を上げる。

 降参のポーズ……と言った所か?


 ………えぇぇ。


 私は呆然となってしまった。

 もうね? ポカンとした顔しか出来なかったよ。


 私の世界で、色々と面倒な事をしている諸悪の根源。

 そして、私にとっては最終目標となるだろう道化師を、戦わずして屈服させてしまったのだから。


「今回の事は素直に私の遊び過ぎであると認めましょう? このオモチャも、貴方様にお返しします。それで今回の事はヨシとして貰えませんかねぇ?……くくく」


「……良いでしょう。私も暇ではありませんからね? これ以上、私の仕事を増やさないと言うのであれば、それで手を打ちましょう?……だけど、N世界の宇宙意思さん?」


 道化師の言葉にすんなり頷いたパラレルではあったが、そこまで声を吐き出した時、パラレルの表情は一気に引き締まった。


 同時に……っっ⁉︎

 え?……なん…だ? この、尋常ではない重圧プレッシャーはっ⁉︎


 今まで感じた事のない……それこそ得体の知れない重圧感の様な物を、私は思い切り感じていた。

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