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そもそも名前などあろう筈もない新世界【17】

 自分で言うのも変な話だが……何もかもが桁違い過ぎて……鉄拳を振るった私本人も……正直驚いているよ。


 そして、それを食らった本人……N65も、な?


「……そ、そんな……馬鹿……なぁ……っ!」


 食らったN65は愕然とした顔のまま、右斜めに吹き飛んで行った。

 ……うむ、狙い通りに飛んでくれたな!


 この時、私は確信した。

 モロ、確実に私の狙い通りに殴る事が出来た事で、間違いないと実感したのだ。


 ヤツは……私の動きが見えて居ない……と!


 ヤツの身体能力を、レベルを9にする事で瞬間的に圧倒する事が出来たのだ!


 ……しかし、私も私で、限界が近い。

 この一秒一秒だけで……く、ぐぅ……しっかりと意識を持たないと昏倒してしまう程のエナジーを大量に吸われているのが分かる。


 この一撃が……この一発が、私にとって最後の一撃になるだろう。


「くたばれ、並行世界のクソ野郎がぁぁぁぁっ!」


 私にとって……とっておきの技を、お前にお見舞いしてやる。


 大昔……みかんに教えては貰ったけど、魔力が絶望的に足りな過ぎて発動する事が出来なかった魔法がある。


 それは、魔導式が根本的に『現代の物ではない』と言うのもあり、理解する事がとてつもなく大変であった古代魔法。


 あの時の私……まだまだ半人前と述べて良かった私には、不可能だと思えた……。


 ……だけど。


 あれから……魔力も上昇し、色々と魔導の勉強をした、今の私なら……出来る!


 いや、違う。

 出来る出来ないじゃない! 

 やるんだっ!


 やってやる!

 行くぞっ!


 これが、会長ラスボスの真骨頂だっ!



 超絶炎熱爆破魔法エグジグリィ・オブ・フレインダムド


 

 ドォォォォォォォォンッッッ!


 超巨大な花火みたいな大爆発が、真っ白い虚空の彼方で巻き起こった。

 

 ブォォォワァァァァァァッッッッ!


 一瞬後、周囲に爆風が吹き荒れた。

 ……ここに誰も居なくて良かった。


「いや、ちょっ⁉︎……戻って来たら、なんか台風でも来たかの様に……うぉわぁぁぁぁっっ!」


 ……誰も居なくて良かった。


 途中で、変態の悲鳴が聞こえた様な気がしたけど……きっと風の音が、偶然そう言う風に聞こえただけだろう。


 ……そうしとこ。


「……終わったな」


 私は補助スキルを解いた状態で虚空を見据えた。


 爆破された部分には、N65の姿はない。


 消滅したか?……そうと、一瞬だけ思う私が居たのだが、


「……?」


 なんだろう?


 様子がおかしい。

 N65のエナジーは、ほぼ消滅している。

 つまる所が……完全消滅までには至らなかったとしても、身体を動かす事までは出来ないだろう状況には陥っている……筈だ。


 けれど……いや……でも、なんか……違う。

 

「……いや、待て?」


 この時、私は一つばかり気付いた事がある。


 今回の『黒幕』についてだ。


 今回の黒幕はN65ではない。

 ……厳密に言うと今のN65に仕立て上げた存在がいる。


 ……そう。


 故に、今回の一件に置いて『本当の黒幕』とは、別に存在しているのだ。


 だけど、私は思う。

 その黒幕は、全く私達の前に現れてなど来なかった。


 そして……。


「まさか……このタイミングで……とか、ない……よ、な?」


 私は思い切り顔を痙攣ひきつらせてしまった。


 その心には、絶望的な何かに繋がる感情。

 仮に、ここで……今回の黒幕なんぞが出て来たら……。


「……はは、ははは……」


 そして、私は乾いた声を口から漏らしてしまった。


 次の瞬間、完全に昏倒していたのだろうN65を抱えた……道化師ピエロの姿が、グニャリと曲がった空間から出現したからだ。


「じょ、冗談……だろ?」


 万事休す……か?


「……おやおや? またお会いしましたねぇ?……くくく……えぇと、冒険者協会の会長様でしたか? 以前お会いした時は、何故か学生をしていらっしゃいましたが……まだ、学生をしておられる様ですねぇ? くくく……」


 とぼけているのか? それとも、素でうそぶいているだけか? 相変わらず気味の悪い笑い声を出しながらも、私へと口を開く道化師。


 相変わらずなのは、その不気味な笑い声だけではない。


 圧倒的かつ、絶望的な能力もまた健在だ。


 ……どうする?


 今の私には……1%の勝ち目すらないぞ。


 エナジーの大多数を消費してしまったと言うのもあるが……万全の態勢であってもコイツに勝てる気がしない。


 恐らく、万全の状態で初めて1%程度の勝ち目が見えて来るんじゃないだろうか?


 私単体の状態ではなく……リガーと半融合している、今の状態である事を加味して……だ!


 私の中で、どの様に逃げるかで、色々と逃走手段を考えていた……その時だった。


「やぁ、N世界の宇宙意思君。キミと会うのはいつ振りかな?……いや、この世界のキミと会うのは……あるいは初めてかも知れないね?」


 さっき吹き飛んだ変態が戻って来た。


 どうやら無事だった模様だ。

 ……ま、この変態って存外頑丈だから、あんまり心配はしてなかったのだが。

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