そもそも名前などあろう筈もない新世界【16】
私は補助スキルのレベルを7から二つ上げて9まで上昇させる。
ぐぉぉぉぉ………ぅっ!
ズズズンッッッッ! っと、身体に重りみたいなのが乗った様な錯覚に陥った。
実際にはそうじゃない。
私が未だかつて経験した事のない様な、強烈な勢いでエナジーがスキルに吸われている!
こ、これは……マジで一分もたないんじゃ……?
私単体であったのなら、一秒保てば敢闘賞だったろう!
やっぱり、半融合による能力上昇ってのは凄まじいぞっ!
ハッキリ言って、自殺行為級にエナジーを吸われている私であったが……しかし、思う。
これで、突破口が開かれた!
今の……この状態なら……レベル9まで上昇している今なら……行けるっ!
超炎熱爆破魔法ォォォォォォッッッッ!
カッ……
チュドォォォォォォォォォォォォォォォンッッッッ!
直視する事が出来ない光と同時に、これまた私の予想を大幅に超える、超爆発が起こった。
まさに、真っ白い世界であったからこそ可能にした魔法と言える。
発動した術者には一切の被害を受けないと言う、魔導式の中にある安全装置的な術式がなかったのなら……下手をすると、発動した本人である私もろとも全てを塵にしてたんじゃないだろうか?
「……はぁ……はぁ……」
私は肩で息をしながら虚空を見据えた。
同時にレベルは7まで戻している。
ハッキリ言って、一秒でも9にしていれば、それだけでかなりのエナジーを吸われるからな。
見据えた虚空には、巨大隕石の姿は影も形も無くなっていた。
……うむ。
直径数キロはあった巨大隕石だっただけに……今回ばかりはマジで死ぬかと思ったのだが、頑張ればどうにかなるな……根性要るけど!
「……驚いたよ……まさか、あの隕石を逆に吹き飛ばすとは……畏れ入る」
直後、空間転移で再び戻って来たN65が、嘯き加減に私を褒めて来た。
そんなN65はノーダメージだ。
空間転移で逃げていたのだから、当然と言えば当然だな。
それに対し……私は、さっきのレベル9超炎熱爆破魔法によって、大量のエナジーを消費してしまった。
……くそ。
このアドバンテージは……少し大きく響きそうだ。
だが、分かった事がある。
まず、レベル7では……残念ながら、こいつには勝てない。
ある程度までは互角にやりあえては居るが……やはり、私が少し押されている。
つまり……もう一つ上げる必要がある。
そうなると8以上となるが……ヤツを圧倒出来るかは未知数だ。
今の私に残されたエナジーは、決して高くはない。
そうなれば……チンタラ8で戦えるだけのスタミナがあるのか? と言われたのなら……恐らく、答えはノーだ。
ここは、ヤツを一撃で仕留める程度の気概と覚悟が必要だ。
そうなれば……レベルを更に一段階……9にする必要があるだろう。
恐らく9まで上げれば、ヤツを圧倒する事は可能だと思う。
これまでの戦いから考えても、ヤツがわざわざ私に手を抜いて戦っている様には見えなかった。
仮に敢えて実力を隠していたとしても、8でトントン、9で圧倒!……と言った所か?
この目算が正しいかどうかは……もちろん分からない。
だが、今の私に残された手段は……これしかないっ!
「お前も、さっきの隕石同様……消してやる……覚悟しとけ」
私は屹然とした面持ちでN65を睨みながら答えると、
「へぇ?……さっきの一撃で、かなりパワーダウンしている見たいだけど? それでも、そんな減らず口をきく事が出来るのか?……ははははっ! 面白い! やれる物なら、やって……っ!」
N65は余裕の高笑いをしてみせた……が、その高笑いは途中で止まった。
……どうやら、ヤツは気付いた模様だ。
一気に勝負を決めようと、補助スキルのレベルを9まで上昇した私に……だ!
見せてやろう? これが会長の力だっ!
ドォォォォォォォォンッッッッ!
爆発を起こしているが、鉄拳の一撃がN65にヒットしだ『だけ』だ。
もう……自分でも少し思ったよ。
もはや……これは、人外の戦いなんじゃないのか? と。
拳がヒットした瞬間、衝撃エネルギーがデカ過ぎて、全ての概念から衝撃波が生まれていたのだ。
結果、爆発した様に見えるのである。
これを一つ一つ言うと面倒だから、端折って言う。
まず、N65に向かう時の速度。
これが衝撃波を纏うに値している。
次に、N65へと突進しながら拳を振るう。
ここも衝撃波が出る。
最後に衝突……つまり、拳がN65に当たった時の衝突エネルギー。
ここが一番デカイな。
衝突と同時に出て来た轟音も含めて、全てが衝撃波に変わってしまうレベルだ。
それ以外にもあるが……割愛。
ともかく、これだけで地面にクレーターが出来上がる程の威力があった事だけは間違いない。
エネルギー保存の法則に従って、地面にも衝突エネルギーが伝わったのだろう。
……普通に考えて、こんな事にはならないけどなっ!




