リダさん、死闘の果てに!【8】
『最期に一つだけ言う......リダ、愛してる』
「アインッッッッ!」
ドォォォォォォォォンッ!
強烈な爆風が周囲に吹き荒れた。
私の超炎熱爆破を大幅に凌駕した威力の超絶魔法とも言えた。
「ぐっ......く、くぉぉ......」
生きて欲しかった。
ただ、それだけだった。
もっと、ちゃんと......違う形で、前世からの私達をやり直したかった。
砂煙と爆風で視界が見えない。
どうなっているのか何てサッパリだったが......その爆風の中心にいるアインが無事で済む筈はないだろう。
「くそ......くそぉぉぉぉっ!」
魂の哭き声が、私の口から轟いた。
どうする事も出来ない焦燥感ばかりが何歩も先を行ってた。
その時だった。
「困りますねぇ......アインさん。勝手に死なれては」
ヤツの声が私の耳に転がって来た。
「こ、このおぉぉっ!」
私の怒りが臨界点へと一瞬で到達する。
瞬時に私は補助魔法を自分に掛けた。
超攻撃力上昇魔法レベル99!
超防御力上昇魔法レベル99!
超身体能力上昇魔法レベル99!
そこから一秒掛ける事なく、ほぼ同時にスキルも発動した。
龍の呼吸法【極】
ドンッッッ!
瞬時に能力が超上昇した事で、周囲に私のエネルギーが波動として撒き散らされる。
完全本気モードになった私がいた所で、砂煙が完全に消え去った。
そこにいたのは、完全に意識を失って倒れていたアインと......その隣で暗黒球の様な物を右手に持っていた伝承の道化師の姿があった。
「貴様ぁっ!」
怒りそのままに、私は伝承の道化師へと鉄拳をぶつけ様とする。
......が。
「なんだ...と?」
確実に伝承の道化師の顔面を捉えた筈だと言うのに、殴った感触がまるでない。
多分......否、間違いない。
私が殴ったのは、ヤツの幻影か残像だ。
「くくく......みかんさんと言い、貴女と言い......どうして、そちら側の連中は好戦的なのでしょうねぇ? 私はアインさんを救出しに来ただけと言うのに」
「ふざけるな!」
お前がアインをそんな身体にさせたんだろうがっ!
諸悪の根元が、いけしゃあしゃあと能書きを垂れるんじゃない!
私は再び、伝承の道化師に攻撃を仕掛けるが......全てかわされるだけに終わる。
更に、ヤツは私の攻撃を避けながら、右手に持っていた暗黒球の様な物をアイン目掛けて飛ばして見せた。
......刹那。
ドンッッッ!
尋常ではない力が、アインの中に生まれた。
......マジか。
思わず愕然となった。
別に私は自分を最強だと自負はしないし、そうとも思ってはいない。
けれど......敵知らずなレベルには、自分なりになっていると思っていた。
どうやら、それすらも私の驕りだった見たいだ。
『おおおおぉおぉぉおぉぉぉおっ!』
魑魅魍魎染みた雄叫びを上げたアイン。
目が完全な深紅に染まり、瞳がただの赤い眼球へと変貌する。
意識もない。
もう、完璧に伝承の道化師の操り人形だった。
「貴女の相手は、アインさんがやってくれる見たいですねぇ......くくく。どちらが力尽きても美しい最期だ......我ながら、中々の演出だと自負しておりますよ」
下卑た......もう、反吐が出るまでに醜悪な笑みを色濃く作り、悪趣味にしても笑えない演出を自画自賛しつつ、
ブゥウゥゥゥン......
歪んだ空間と同時に、伝承の道化師は姿を消した。
後に残ったのは......深紅の瞳をした混沌の魔神みたいな姿のアインだけ。
「結局......こうなるんだな」
覚悟はしてたよ。
アインと戦う事は。
そして、あるいは死ぬんじゃないかって言う覚悟も。
「やってやろうじゃないか!」
ここでジタバタしても始まらない!
完全に腹を決めた私は、アインへと攻撃態勢を取った。
『おぉおぉぉおおぉおおぉおおぉ』
もう、言葉としての意味も持たない咆哮の様な雄叫びを上げつつ、アインは私に向かって拳を振り抜いて来た。
ブゥゥゥンッ!
大振りながら、振るっただけで強烈な風圧が生まれる程の一撃だった。
当たれば、下手すると即死かも知れない。
「メチャクチャしてくれる!」
叫びつつ、私は鉄拳を振るった。
ドンドンドンッ!
立て続けに三発。
連続で振り抜いた私の拳は全てクリーンヒットした。
......?
違和感を覚える。
戦闘的な強さは、私の見る限りならアインが圧倒していたと言うのに。
自我崩壊した事で、戦う方法を忘れてしまったと言うのだろうか?




