そもそも名前などあろう筈もない新世界【6】
「このまま……と言う訳には行きませんねぇ……言うなれば、このカプセルは生命維持装置であると同時に、N65が支配しているカプセルです。よって、このままだと、フラウさんはN65の駒として私達の前にやって来る事でしょう。当然、ここはどうにかしないと行けません」
……ふむ、なるほど。
パラレルの話を聞いて、私は即座に納得した。
簡素に言うのなら、今のフラウは完全にN65の管理下に置かれている。
ただでさえ、その世界に存在する人間は、無条件で操る事が可能なのだからして……フラウだって、このまま行けば少し前のアリンやリガー、カリンの様に私達の敵になってしまうのだろう。
それなら、どうするのか?
「よって、このカプセルの管理権を『私に変えます』……こうする事で、このカプセルの中に存在しているフラウさんの管理者はN65から私の管理下に変わるので、私に『脱ぎたてショーツをよこしなさい!』と言えば、そのまま素直に……」
ドォォォォォォォォンッッッ!
……あ、いけね。
うっかり、爆破してしまったぞ。
まぁ、しかし一発程度のエナジーなんて些末な物だし……まぁ、ヨシとして置こう。
「おい、リダ……パラレルを吹き飛ばしてしまったのなら、管理とか言うのが出来ないんじゃないのか?」
………。
……ふ、仕方のないヤツだな!
素朴なリガーの言葉を耳にして、私は渋々ながらも回復魔法を発動させた。
治療魔法!
「……はっ! ここはっ⁉︎……ああ、そうか……私はリダさんの爆破魔法によって気を失っていたのですね……くっ! あれだけ余計なエネルギーを使っては行けませんよと、釘をさして置いたと言うのにっ!」
治療魔法を受けたパラレルは、両目からドバドバッッ! っと大量の涙を流しながらも、私に思い切り非難がましい喚き声を上げて来た!
お前がふざけた事を言わなければ、私だって余計なエネルギーを消費する様な真似をしないんだよっ!
「私的に言うのなら、お前にだけは言われたくない台詞だと思うぞ……」
「ああ、そうだなパラレル……アンタも、もう少し下着の執着心を抑えてくれないか? 今、ここだけで構わないからさ……」
眉を釣り上げて言う私がいた一方で、リガーが少しお願いをする感じでパラレルへと答えた。
こんなヤツ相手に、そこまで謙った態度をする必要なんぞ無かろうに……?
「やれやれ……仕方ないですね。本来、紳士が紳士たる崇高なる思考を欠落させる事は、淑女に対する冒涜であると考えているのですが……今回に関しては、私も紳士の心を封印して置きます。感謝して下さいね?」
そして、この言い草である。
私は、この戦いが終わった後、絶対にコイツを数回は爆破してやろうと心に誓っていた。
うむ! 取り敢えず、今回の所はそれで妥協してやろうか!
「言いたい事は分かった……お前が妥協するのであれば、私もしっかりと譲歩する。譲歩してやるから、さっさとやる事をやれ」
「ふふん! 良いでしょう! 今の私はとっても良い気分です! キッチリと私のやらなくてはならない仕事を熟してみせましょう!」
言うなり、パラレルは右手から仄かな光を作り出す。
そして、右手の光をカプセルに向かって放出した。
すると、カプセルは、パラレルの放った光で覆われ……消える。
……?
「何をしたんだ?」
「加護を与えました。私の加護です」
「……加護、だと?」
それはアレだろうか?
私が、他の世界に居た時に貰った物と同じ様な代物だろうか?
……ふと、こんな事を考えている私がいた頃、
「ほら、リダさんだけN65の支配を受けなかったじゃないですか?……その理由は、加護を受けていたからです。まぁ、この辺りは既にリダさんも理解していた事だと思うので、説明は省きますが……」
ああ、なるほど……と、思える台詞をパラレルは私達に言ってみせた。
つまり、そのパラレルの加護を受けると言う事は、管理される権限も加護を作り出した者へと変化する……と、こうなる訳だ。
ここらの関係上、私はN65の支配を受ける事なく、自分の意思で動く事が出来る様になった訳だな?
余談だが、リガーもパラレルの加護を受けている。
恐らく、リガーを管理する権限も、これによって眼前の変態に変わる為、N65の支配下から脱却しているのだろう。
……まぁ、その反面……眼前の変態に支配されているのが、私的に不安でならない部分が間々あるのだが。
まぁ、しかし……大丈夫だろう。
だって、リガーは男だから!
うむ! 私じゃなくて良かった!




