そもそも名前などあろう筈もない新世界【5】
……ふ。
結局は、この下らない小芝居をするのか……お前は。
こう言う、果てしなくどうでも良い様な物を間に挟むから、お前が居ると話の進み方が無駄に長くなってしまうんだよ!
「……おい、パラレル。そろそろ真面目にやれ。もう、これが最後なんだろう? 最後までグダグダとか……マジで勘弁してくれないか?」
バッタリ倒れてしまったパラレルが居る中、完全に呆れ眼になっていた私が、ぼやき半分に変態へと口を開いた頃、
「……おい、リダ? これ……フラウ達じゃないのか?」
リガーが少し驚いた声を私に飛ばして来た。
……なぬ?
「フラウ達だと?」
リガーに言われた私は、足早にリガーの方へと顔を向けると……っ⁉︎
確かに、フラウ達が……居た。
服装から察するに……私達の世界に居た時の格好を維持したまま……眠っている様に見える。
あと……これは何だろう?
機械の様な物……だろうか?
私には良く分からないが……妙にメカニカルなカプセル状の物に、フラウは目を閉じたまま眠っていた。
「……そのフラウさんは、リダさんの住んでいる世界のフラウさんですよ……ほら、公園でN65パラレルが皆さんをさっきまでいた並行世界へと引き摺り込んだでしょう? あの時……精神だけを分離させて、肉体はこの新世界へと保管して置いたのです」
「この世界に……か?」
見れば、少し先には別のカプセルが設置されているのが分かる。
かなーり遠い所にあるので、視力の低い者では『何かある』程度のレベルだったかも知れないが。
まぁ、私の視力は6.0はあるからなっ!
どっかの部族張りの視力があったりするからなっ!
そして、リガーも同じだったらしい。
「……あのカプセルには、ルミが眠っているな」
間もなくリガーが、真剣な顔になって口を開いた。
……ふむ。
「すると……N65によって吸い込まれた連中の肉体が、全てこの世界にある……って言う事か」
私は、何処か納得する形で声を吐き出すと、
「察しが良いですね? ズバリそうです! 私としては? 可憐なフラウさんのショーツと、豊満なバストを誇るルミさんのブラを拝借したい気持ちで一杯ではあるのですが、今回は涙を飲んで紳士の行動を休止して置こうかと……いや、だからですね? リダさん? 休止しますから! そんな事はやりませんから! ちゃんと信じて? ね? これから戦闘があるんでしょう? 余計なエナジーとか消費出来ないでしょう? 頼むから、右手は止めて下さい! それ、最近夢に出て来そうで怖いんですよ!」
パラレルは私達の言葉に頷き……そして、ついでに余計な台詞までほざいて来た。
どうしてお前は、そう言う余計なのを付け足すの?
そう言う事を言わないと、生きて行けないのっ⁉︎
下着の話題を会話に入れないと、呼吸出来ないのかっ⁉︎
アホ過ぎて、マジで爆破してやりたいのだがっ⁉︎
しかし、パラレルの言う事にも一理ある。
ここで余計なエナジーを使った事で、致命的な結果になってしまったのなら悔やんでも悔やみ切れないのは確かなのだっ!
本当に不本意極まるんだけどなっっ!
まぁ、良い。
ともかく、今はフラウの肉体をどうするかが問題だ。
「それで、変態? フラウのヤツが、この良く分からないカプセルの中に入っているが……このままで良いのか? 恐らく、こいつは肉体だけの存在だろ? 精神が中に入っていないと言う事は、言うなれば植物人間も同然と言う事だ。普通にカプセルを開ける訳には行かないよな?」
「おお、中々に鋭くも、良い質問ですね! そうなのです。このままカプセルに入れて置かないと、フラウさんの生命維持が困難な状態になってしまいます! 特に下着! ここの保存状態がですね?……はい、冗談です! 右手は下げて下さい! 主に脳の問題と、身体を維持する栄養……つまり、エネルギーが問題になります。一日や二日程度なら問題はないのですが、それ以上になってしまうと、生命の危機にすら直結してしまうでしょうね」
私の質問にパラレルは真剣な顔になって答えた。
途中、真剣な顔のまま、かなりふざけた変態発言をしていたけど、コイツはエロい内容を含めないとまともに口を動かす事が出来ない病を発症しているので目を瞑る。
アホな事を言った瞬間に右手を振り上げるだけの話だからな。
「だけど、それなら……フラウはこのままにして置かないと行けないのか?」
そう答えたのはリガーだ。
リガーは、どうにも口惜しい顔になってパラレルへと尋ねる。
きっと、純粋にフラウの身を案じて口を開いているのだろう。
うむ! こう言う態度を取るのが普通だと思うぞ? ちょっとは見習えよ、変態っ!




