カリンと言う、地味に憎たらしい特殊な巨乳予備軍がいる世界【18】
「……はは。それじゃ、私が教えて貰う立ち位置かも知れないな」
私は苦笑混じりになって答えると、
「そ、そんな事ないよ! やっぱり私は一年生だし! そ、その……おねーちゃんが教えてくれるって言うのなら、私も教えて欲しいよ」
アリンは、少しモジモジする形で私へと声を吐き出して来た。
……ふむ。
「よし、それじゃ、軽く教える事としようか」
私は笑みを作りながら答えると、アリンはパァァァッ! っと満面の笑みになっては、
「うん! よろしく!」
私へと力強く頷いから、元気な声を返して来た。
きっと、これは学力の問題ではないのかも知れない。
なんと言うか、妹が姉に甘えたい……と言う、もっと根本的な物があるのではなかろうか?
何となくではあるんだが、カリンに数学を教えていた私を見ていた時、アリンは心成しか? 少し寂しそうな顔を見せていた様な気がする。
まぁ、本当に心成し程度でしかなかったのだが。
けれど、もしかしたらアリンもまた、姉に甘えたかったのではないか?……そう思えてならない。
なまじバカみたいに優秀なアリンだけに、カリンの様な形でおねーちゃんへと甘える事が出来なかったんじゃないのかなぁ……なんぞと、曖昧ながらに感じていた。
だから、勉強を教える……ではなく、単純に純粋に、おねーちゃんに甘えたい。
……ぐぅむ。
ヤバイ、こっちの世界にいる妹達は、おねーちゃん冥利に尽きる程に可愛い妹達ではないか!
内心で、かなりやる気に満ちた気持ちが大きく生まれている最中……何故か、反発したい気持ちが生まれている。
この世界にいる、もう一人の私だ。
……?
どうしてこんなに反発したいのだろう?
不思議で仕方ない私がいたのだが……間もなく、もう一人の私が主張したい部分をまざまざと知る羽目になった。
アリンは無駄に優秀過ぎるのだ!
ハッキリ言うのなら、私の教える部分がない。
なんなら、一人で勉強した方が、色々と効率も良いのではなかろうか……?
同時に私は気付いた。
きっと、この世界の私はアリンに頼る方の立場だったのではないか?……と。
一応、姉らしい事はしているだろうし、勉強以外の所でアリンがもう一人の私に甘える様な部分もあったのだろうが……それでも、カリンと相対的に見ると、やはりアリンはしっかりし過ぎていて、私に甘える所が極端に少なかったのではないか?
まぁ、実際の所は分からないし、こっちの世界に居る私だって、私である事に変わりはないのだから、それなりにアリンをフォローしていた部分はあったと思う。
けれど……今のアリンを見ていると思うんだ。
しっかりと教えられてなんか居ないけど……でも、楽しそうであると!
なまじ、双子の妹であるカリンが私に頼る傾向にあったとするのであれば、カリンにとっては姉でもあるアリンは、色々と我慢する所があったのかも知れない。
……うむ。
それなら、せめて……そう、せめて。
今と言う時間だけでも、姉としてアリンの好きな様に甘えさせてやろう。
ともすれば、もう一人の私にも出来る事なのかも知れないし、今後の私は、もう少し柔軟にアリンへと対応する様になるのかも知れないけど。
今日の所は、私がその代役をやろうかと思う。
うん……そうしよう。
アリンとカリンの二人に勉強を教えている内に、時刻も深夜になって行く。
そろそろ寝ないとな。
「ありがとう、おねーちゃん」
区切りの良い所まで行った時、時計を軽く見たアリンはにこやかな笑みを作ってから、私へと答えた。
とっても満足そうな、晴れ晴れとした表情だった。
そんなアリンの笑みを見て……なんと言うか、少しだけ肩の荷が降りた……そんな気がした。
結局の所、私はアリンに対して迷惑ばかり掛けている。
勝手にこの世界へとやって来ては、余計な厄介事に巻き込んでばかりいたのだから。
この程度の事で罪滅ぼしになるとは思っていないけど……でも、少しだけ、迷惑を掛けた事への代償を払う事が出来た……そんな気がした。
本当に些末な事ではあったけど、私としても細やかでも良いから、この世界で迷惑を掛けたカリンとアリンの二人に、何かをして上げたかったのだ。
そう言った意味合いを含めるのであれば、やっぱりパラレルの言葉に従って良かったと思う。
アリンやカリンの為にも……そして、私自身の為にも。
私の身体をしっかりと休めると言うメリットだって、確かにある訳だからな?
よし! 今日はしっかり寝て、明日に備えようか!
そう考えつつ、私は自宅の寝室へと向かい……
ガチャッ!
……っと開けた所に、パジャマ姿になって先にベットで横になっていたパラレルを発見した。




