カリンと言う、地味に憎たらしい特殊な巨乳予備軍がいる世界【12】
「……うー。分かったよぅ……リダ姉ちゃんのケチンボ〜。それならブラを買いに行くのはアリンと一緒に行って来るからさ? せめて、数学は教えてよ〜。次の試験、割とヤバイんだよ! 特に微分と積分! もうね? 微分・積分・良い気分! って感じなんだよ!」
どっかのコンビニみたいなフレーズのボケをかますんじゃないよ……。
「良かったな? 良い気分なら、問題ないぞ?」
「ああ! そうだね! 悪い気分に言い換えて置く! だから、教えておねーさま!」
カリンは必死になって拝み倒すような態度で私に訴え掛けて来た。
……やれやれ。
「仕方のない奴だな。じゃあ、家に戻ったら教えてやる」
「おおおっ! やったぁ〜♪ リダ姉の教え方って、担任より上手だから、私は好きなんだよね〜! ってかさ? リダ姉って将来は教師になっても良いんじゃない? 絶対に教える才能あると思うし!」
カリンはキラキラした瞳のまま言う。
……うむ。
こう言う態度をしてさえいれば、カリンも可愛い妹だと思えるな。
きっと、胸さえ無ければ最高に可愛い妹なんだと思う。
胸さえ無ければ!
「どうやら終わった模様ですね?……お二人とも、大丈夫でしたか?」
間もなくして、変態が私達の前にやって来ては、温和な笑みを作りながら声を掛けて来た。
……刹那。
「えっ! す、凄いイケメンッッ! だ、誰? この、芸能人見たいな人っ⁉︎」
カリンが思い切り目を瞬かせながら私に尋ねて来た。
カリンの態度を見る限り、驚きと喜びが程よく混ざったかの様な感情が表情から見て取れる。
そして、そんなカリンの心情も理解する事が出来ない訳でもない……ないんだけど、だ?
「分かった、紹介してやる。変態だ」
「変態さん、よろしくです!」
「あなた、どんな紹介してるんですか⁉︎ そしてカリンさん! 変態と言う名前で素直に納得して、私に頭を下げないで下さい! もう少し疑念を持つべきではありませんかっ⁉︎ この世界で『変態』なんて名前の人間なんで居ませんから!」
的確な紹介をしてやった私に、これまた素直な態度で礼儀正しく頭を下げてみせたカリンに対し、変態はいきなり喰って掛かって来た。
おかしいな? 私は普通にお前の事を紹介しただけだぞ?
別段、特別な事はしてないと思うんだが?
「改めて私の方から自己紹介させて頂きます。私の名前はパラレルと申します。紳士のパラレルと覚えて置けば、基本的に間違っておりません」
間違いだらけなのだが?
「パラレルさんですか? 分かりました! よろしくお願いします! 紳士のパラレルさん!」
そして、間違えて覚えてしまうカリンが居るのだが?
「はぐわぁっ!」
だけど、何故からカリンの言葉を耳にしたパラレルは、無意味に悲鳴の様な物を上げて蹲っていた。
……お前は何がしたいと言うんだ?
「ヤバイです……この子は、正真正銘……純朴かつ純真無垢な美少女でした……まさか、この私の事を素直に紳士と呼んでくれるとは……」
自分が呼べと言ったんじゃないか……。
良く分からないが、変態はやっぱり変態と呼ばれる事に慣れ過ぎてしまい、その反語に値する表現をされると、妙な拒絶反応みたいな物を精神が起こしてしまう模様だ。
相変わらずコミカルな精神構造をしているヤツだな。
「それで? この紳士なパラレルさんは誰? お姉ちゃんの彼ではないでしょ? だって、凄いイケメンだもん。しかも紳士なんでしょ? どう考えてもお姉ちゃんとは釣り合いが取れないよね?」
「うん、分かったよカリン。爆発したいんだな?」
「誰もそんな事言ってないし! つか、右手向けてないでよ! マジで怖いからっ!……ああ、うんうん、カリンが悪かったです、リダおねーさま! 謝りますから! だから右手は勘弁!」
右手を向けられたカリンは、必死になって何回もペコペコと私に頭を下げて来た。
……フンッ! まぁ、今回は勘弁して置こう。
この変態の彼氏ではないと言う一点に置いては、確かに当たっているからな!
「変態とは、ちょっとした縁があってな? まぁ、知り合いと言う所だ」
私は無難な台詞をカリンへと答える。
実際の所は、並行世界の管理者……いや、その管理者を統括する存在だったりもするのだが、正直に全てを言っても、良い所が『厨二ですか?』で終わりそうな気がする。
……いや、思えばアリンも割りと素直に私の言う事を聞いてはいたな?
しかも、カリンもカリンでビックリするまでに私の言う事は素直かつストレートに受け入れているし。
……うーん。
いや、だけど言うのは止めよう。
やっぱり、私はカリンを巻き込みたくない。
なんだかんだで、可愛い妹だしな。




