カリンと言う、地味に憎たらしい特殊な巨乳予備軍がいる世界【10】
……タネを明かしてしまえば、なんて事のない技でもあるな?
そして、その仕掛けを私が知らない『訳がない』のだ!
「この技は、さ? 私の『オリジナル』だぞ? そうなれば、お前の師匠は私って事になる」
カリンの足を軽く離してやり、足を引っ込めたカリンに対して軽い口調で言う私がいた。
そんな中、カリンは唖然とした顔のまま立ち尽くし、思わず呆然自失状態で私を見据えていた。
私的に言うのなら、お前がどうしてそこまでぼーぜんとした顔になってしまうのか? 理解に苦しむ。
理由は簡単だ。
この技の元祖は私なのだ。
もちろん、元祖でもある私が、この技を見破れない訳がない!
「他に出したい技はあるか?……まぁ、ほとんどが私の教えた技か、その派生なんだろうけどな?」
そして、私の技を元にしているのなら、そのタネも大体の予想が付くし、突破する方法もなんとなく想像が付く。
「……ね、姉ちゃん……ごめんなさい!」
そこから、カリンは私の前にやって来ては跪いて来ては、頭を下げてみせる。
……ふむ。
完全に白旗を上げたと言う事か。
……そうな?
ハッキリ言おう? お前じゃ、私の足元にも及ばないよ。
サッサと降参した方が良い。
実力としては、かなりの強さではあっただろう。
場合によっては、世界を牛耳る程度の実力だと表現しても、決して過言ではない。
だが、お前は運が悪かった。
お前の前に立ちはだかったのは……この私であったからだ。
これがカリンの持つ能力なのか? それとも、やっぱり伝承の道化師の能力が加算されているからなのか?
そこは私にも分からない部分が多いが……確かにお前の実力は極めて高いよ。
混沌龍ですら、アッサリ凌駕する程度の実力はあるな?
だけど、お前に言いたい。
世の中……ってのは、上には上が居ると言う事だ。
自分と言う小さな物差しの中では、超絶パワー・アップを果たしたからと言って、それで世界最強になったと思ったのなら、それは大きな思い上がりだ!
世の中は広い……どんなに強くなったとしても……尚、自分より強い奴はまだ存在していると言う気概を持つ必要はある。
ちょっと強くなったぐらいで奢る様であれば……ま、お前は『その程度の人間』って事になるな?
……と、さて。
少し講釈を垂れてしまったが、
「……頭を上げろ、カリン。お前の気持ちは伝わった」
「お姉ちゃん……」
「……なんて言うと思ったか、巨乳予備軍! 貴様の根性を叩き直すのはこれからだ! 一回謝った程度で簡単に許して貰えると思うな! お前は絶対に泣かしてやる!」
「え? えぇぇっっ⁉︎」
えぇぇっ⁉︎ じゃ、ないよ!
そんなの当然じゃないか!
お前が私にやった失礼千万な態度が、一回の土下座で済む訳がないだろう!
「祈れ……取り敢えず、死なない事を、な?」
「ひぃぃぇぇっっ⁉︎」
殺意の波動すら出ているんじゃないのか? と嘯きたくなる私がいる中、カリンは腰でも抜けたのか? 半ベソの状態で立つ事すら出来ずに怯えていた。
その時だった。
ヒュゥゥ……ンッッ!
カリンの頭上から……何かが抜けた。
「……うむ」
なるほど、あれが……本体か。
まるで幽霊だ。
……まぁ、精神体だから、そう言う風に見えるのだろう。
透明な……人型をした光の様なモノは、カリンの身体から抜けおちる感じで離脱すると……間もなく消えた。
「………」
私は無言のまま、苦い顔になってしまう。
同時に心の中で叫んだ。
しまったぁぁぁぁぁぁぁぁっっ⁉︎
そ、そうだよ! こっちの変態だって、空間転移が使えたじゃないか!
それなら、カリンを操っていたN65パラレルとか言うヤツだって人間ではないのだから、空間転移魔法を発動する事が可能だったと言う事だ!
く、くそ……。
な、何でそんな根本的な部分に、私はすぐ気付く事が出来なかったと言うのかっ⁉︎
「……チッ!」
苦々しい顔になりながらも、私は大きく舌打ちした。
そこからワンテンポ置いて、
「……あ、あれぇ? カリンは……なんでこんな所にいるんだろう?」
カリンが、かなり本気で驚きながらも周囲を見回してから、
「リダ姉?……何してんの? 散歩?」
しれっとボケた事を口にして来る。
……うむ!
「これが散歩に見えるのか?」
私は片眉を捩りながら答える。
ただ、表情は穏やかな物に変わっていた。
理由は簡素な物だ。
今、私の前に居るのは……カリン本人だ。
なんとなく……本当になんとなくではあるんだが、私がこの世界に来たばかりの時に初めて顔を合わせたカリンと全く同じ空気を醸し出している様に感じたのだ。
ついでに言うと、オリジナルのカリンは一人称が『カリン』だったなぁ……と、地味に納得もしてた。




