カリンと言う、地味に憎たらしい特殊な巨乳予備軍がいる世界【9】
アリンを変態に預けた私は、ゆっくりとカリンの方に身体を向ける。
……途中。
「……おお、アリンちゃんって柔らかいのですな? しかも、こうやって抱きしめてみると予想以上に小さい! しかも良い匂いまで……こ、これは役得なのではっ⁉︎」
なんぞと言う変態の台詞が聞こえて来たので、エロい真似をする様なら即座に戻って爆破してやろうとも思ったんだけど、途中で私の殺気を感じ取ったのか? 数秒後にはリガーがいるだろうエリアに空間転移させていた。
最初からそうして置けよ! このド変態がぁっ!
ともかく、変態による貞操の危機は去った模様なので、今度こそカリンに集中する私がいた。
「……どうした? 来いよ? 平子?」
軽く構えを取った状態のまま言う巨乳予備軍。
まぁ、コイツの言いたい事は分かる。
私は、カリンの眼前に対峙した状態のまま、構えすら取らずに立っていたからだ。
よって、妙にビビってるんじゃねーよ? 的な台詞をカリンに吐かれても仕方がない行動を取っているとも言える。
……ま、そんな訳がないのだが。
「私は先制攻撃をお前に与えてやっているだけだぞ? 言うなれば、これはハンデだ」
「ああ、そうかい!」
私の言葉と同時にカリンが動いた。
……うむ。
素早い身のこなしで、ハイキックを私の横顔に狙って来る。
ガシィッッ!
……鈍い音。
ふぅむ……なんと言うか、やっぱりコイツは私と同じパワータイプなのかねぇ?
避ける気になれば簡単に避ける事も可能なのだが、敢えてガードしてやると……少しばかり手が痺れる。
直撃を受けたら、少しばかりダメージを貰いそうだ。
「……良い蹴りだ。どうだ、カリン? スプリンターを引退したら、冒険者協会の人間にならないか?」
「私は砲丸投げ選手だ!」
……え? そうなの?
それなら、別に胸の空気抵抗とか気にしなくても良くね?
微妙に素朴な疑問を持つ私がいた頃、
シュバッ!
カリンの身体が二つに増える。
……ん? こ、これは……?
ちょっと驚いた。
この技は……なんて言うか、私の技でもある。
残像連脚と言う技だ。
実は、私も剣聖杯の決勝でユニクスに対して使った技だな?
知っている人が居たら、序盤からしっかり読んでる凄い人だ!
……って、そこは良しとして。
この技は、超高速で動く事で残像を複数作り出し……一気に全方向から蹴りを入れる技だ。
果たして、カリンは私の予想通りの動きをして来る。
二つに分裂した残像は間もなく四人になり……そして八人になる。
「八つの蹴りを全部避ける事が出来るか? 平子ぉぉぉっ!」
えぇい! 平子って言うのやめいぃぃっ!
私はお前の姉だぞ? もう少し敬え! 尊敬しろ!
八人になったカリンは私をぐるっと囲むと、一斉に蹴りを入れて来た。
前後左右に、斜めも含めた八方位からやって来る蹴りは……まぁ、ある意味で避けるのが極めて困難ではあるな?
しかも、これ……逃げ道が上しかないのだが、上に避けると更に神龍三連脚と言う技に繋げられて、大ダメージを負う羽目になる。
……ま、避けないんだが。
八つの蹴りがやって来た瞬間、私はすべての蹴りを『受け止めて』やった。
厳密に言うのなら、最初の一撃目の足を掴んでやっただけなんだが。
「……おい、愚妹。その技を誰に教えて貰った? 私じゃないのか?」
右手でカリンの足を掴んだ私は、少し呆れた顔になってカリンへと答えた。
蹴りを止めた瞬間、これまで八人居たカリンが一瞬で一人に戻る。
……何でか?
それは、この技の名前にある通り『残像』であるからだ。
簡素に言うのなら、八方向からの一斉攻撃『に見える』だけで、実際には一人しか攻撃する人間は居ない。
この技の本質を知らない人間であるのなら、いきなり敵が八分裂したかの様に見えるし、一斉攻撃を受けていると錯覚してしまうかも知れない。
だが、それは『そう見えるだけ』の話で、実際には残像が生まれる程の超高速で動いているだけに過ぎない。
まぁ……な?
それって、メチャクチャじゃね?……残像が出来る程の速さで動いたら、音速の壁を突き破るから、足音とかですら衝撃波とか生まれるんじゃないのか? とか、色々とツッコミを受けそうな話ではある。
そもそも、そんな動きしてたら陸上部で世界新どころじゃない記録取れるんじゃ?……とか、考えられる事は山の様にあるだろう。
ここの答えは、短距離・長距離問わず世界新が狙えそうだと思う……思うけど、そこは置いておこう!
ともかく、スピードが速いだけであり、実際には八分裂している訳ではない。
……よって、本体を強引に制止してやれば、それだけで済む話なのだ。




