カリンと言う、地味に憎たらしい特殊な巨乳予備軍がいる世界【8】
……次に、相手が抵抗すると、簡単に弾かれてしまう。
つまり、ここも『不意を突く』と言う必要がある訳だ。
相手に睡眠魔法を発動させている意図を悟らせてしまったら、その時点でアウトでもある。
そして最後が……恐ろしく非効率だと言う事。
飽くまでも、相手を眠らせると言う効果に対しての消費魔力を前提としているのだが……超魔法に匹敵する程の消費魔力を使用する。
ハッキリ言うのなら、そこまで高燃費な魔法であるのなら、最初から高火力の魔法を発動した方が良くなってしまう訳だ。
この様な仕様になってしまったのは……睡眠魔法を使った犯罪が横行したり、戦争で睡眠魔法を使った大量虐殺等を引き起こしてしまった事が原因だ。
例えば、店員を寝かして強盗したり、誘拐時にターゲットを寝かしたり……その他、ここでは書くのもちょっとな方法等、様々な犯罪に使われていたりもする。
ただ、戦争に関して言うと、対睡眠魔法シールドを張る等の対策がされている為、こっちの方は最終的に睡眠魔法が効かない形で対応して行く事になっていたりもするのだが。
どちらにせよ、犯罪の温床になるのはよろしくないとして、世界冒険者協会が睡眠魔法に一定の制限を付ける様にルールを設けたのだ。
最初は色々な非難をあちこちから受けたし、世界の色々な人の意見を取り入れて改良して行った結果、今の様な無駄に使いにくい魔法へと変化して行く様になるのだが……まぁ、余談だな。
余談序でに言うと、スリープ系は上位魔導師程度の資格がないと覚える事が出来ない上に、わざわざ複雑な魔導師式へと組み替えているから、一般的には使う事の出来ない特殊魔法でもあるぞ。
ま、会長たる、私は使えるんだがな!
……と、説明が長くなってしまったな。
それじゃ、本文に戻ろう。
「……あ…ああ……っ!」
素早く正面に飛んで行った私は、間髪入れずに睡眠魔法を発動させると……アリンは口から力の無い声を吐き出してから、そのまま意識を失った。
……と、まぁ。
こんな感じで、完全なる騙し討ちの様な魔法だ。
だから、本来の私はあんまり好きじゃないんだよな……この魔法。
けれど、今回に関して言うのであれば、そんな事も言っていられない。
何より、アリンに非は無いし……むしろ巻き込まれている分だけ、申し訳なく思っている。
そこらを総じて考えるのであれば、やっぱりなるべく穏便に……かつ、危害を加えない方法で、アリンに対応して行きたいと考えていたのだ。
よって、魔法が成功すれば相手を無条件で眠らせる事が出来る睡眠魔法と言う手段を取った訳だな?
「……おっと」
意識を失い、前のめりに倒れて来たアリンが居た所で、私は軽く受け止めた。
……と、同時に私は軽くアリンに対しての警戒をしてみせる。
いや……さ?
こないだは、ここで警戒を怠って、思い切り刺されたからなぁ……?
ともすれば、眠ったフリをし……懐に潜り込んだ所で、またもやグサッ! っとやられたら、たまった物じゃ無い。
しかしながら、私だってバカでは無いのだ。
流石に二回も同じ轍を踏む事はしない。
何より、アリンは普通に寝息を立てていた。
……うむ。
なんて言うか、ちゃんと警戒している時に限って問題が発生しないと言うか……なんと言うか。
自分にとって都合の良い話なのだから、そこは難しく考える必要はないのかも知れないが……何とも複雑な気持ちにさせられるのは……何故なのだろう?
……ま、良いんだけどさ。
「変態! アリンを頼む!」
「分かりました! 次回から私を呼ぶ時は『紳士』と呼称する事で引き受けましょう!」
誰が言うか!
「変態紳士だな? 分かった!」
私は素早く頷いてから、力を失ったアリンを変態の近くまで抱えながら向かい、そのまま引き渡そうとした頃、
超紫電魔法!
バチバチバチィィィッッ!
カリンから、極太レーザーが飛んで来る!
しっかりと、こっちの様子を見て、変態ごとレーザーで焼き切る気だった模様だ。
もちろん、その対象に私を含めている訳なのだが……甘い、甘過ぎるわ、巨乳予備軍!
バシィィィィンッッッ!
次の瞬間、私の右手がレーザー光線を弾き飛ばした。
右手にだけ魔導防壁を発動し、そのまま魔導防壁の部分でレーザーを弾く。
次の瞬間、レーザーは真上へと飛んで行き……そのまま見えなくなってしまった。
恐らく、光の速さで天高く飛んで行き、一瞬で大気圏を抜けたんだろうな。
「何かしたか? 巨乳予備軍? デカイのはその胸だけにしとけよ? 態度までデカくなったら、もはや人間として最低の烙印を押されても仕方のない話だ」
「うるさい! 平子に言われたくないし!」
おお、言うねぇ……。
まだまだ、お仕置きが足りない様だ。




