カリンと言う、地味に憎たらしい特殊な巨乳予備軍がいる世界【3】
「さっさと逃げろ!……はぁはぁ……ぐぅぅ……っっ!」
苦しみながらも、私へと警告する形で叫ぶリガー。
間違いない。
これは、リガーなりにカリンからの操作を拒んでいる!
しかし、操ろうとする力が強過ぎて、完全に拒む事が出来ない……と言うのが、私からも良く分かった。
………参った。
こんなリガーを相手に戦う事なんて出来ない。
何より、私の中にいるリダが、リガーと戦う事を全力で拒んでいるのが分かった。
もう、ビックリするまでに切ない気持ちが、私の中にも溢れて来るんだ!
リガーを傷付けたくない!
この人は……私にとって大切な人なんだ!
……切実な激情が、私の精神へと徒らに転がり込んで来る。
私は……どうすれば……っ⁉︎
次の瞬間、リガーが私に向かって、
超炎熱爆破魔法!
ドォォォォォォォンッッッ!
おわっっっ!
咄嗟に魔導防壁を張り巡らす!
あ、危なかった……今のは、間違いなく私を本気で吹き飛ばす、脅威の一撃だった。
後、もう一瞬だけ魔導防壁を張るのが遅かったのなら、確実にやられていたに違いない!
どうにか爆破魔法の一撃を防御した私は、
ドゴォォッッッ!
一瞬後に背後へと回られたリガーの回し蹴りを受けて、
ズドォォォォォォォンッッ!
そのまま森林公園にある地面へと落ちて行った。
落ちると言うより、墜落と言った方が良いだろうか?
轟音と同時に地面へと激突した私は、そのまま周囲に大きなクレーターを作り出してしまう勢いで地面にめり込んでしまった。
このぉっっ!
ドンッッッッ!
クレーターの中心にめり込んでいた私は……その数秒後には、穴の中から飛び出していた。
まだまだ不明瞭な事が多いし、やっぱりリガーは操られているみたいだし……この調子だとアリンも完全に操られているんだろうなぁ……と予測する事が出来た私ではあったんだけど、今はもう……余計な事を考えるのはヤメにする!
今は、ただ……目の前にいる敵を……リガーを沈黙させる!
幸いにして、リガーはまだ本気を出していない。
厳密に言うのなら『本気になれない』心理状態になっている。
それなら……リガーを無効化するチャンスは、今しかない。
この時、私は思ったのだ。
リガーには、しばらく眠ってて貰おう!……と。
クレーターから勢い良く飛び出した私は、強い意志を以て、リガーへと一直線に突き進んで行く!
ポイントは、強い意志を『持たないと行けない』事。
心の中で、もう一人の私が無駄に暴れてくれるのだ。
やめて! リガー君に酷い事しないで!
……痛烈かつ、切実な心の咆哮が、言霊として私の精神に突き刺さる!
そんな事は、お前に言われなくても分かってるんだよっ⁉︎
多少は痛い目をみるかも知れないけど……悪い様にはしないから、ちょっと黙っててくれないかなっ!
心の中で、文字通りの葛藤が激しく巻き起こっている中、
ドゴォッッッ!
私の右拳が、リガーの腹部を捉えた。
「ふぐぅ……っ⁉︎」
リガーは苦悶の表情のまま、身体をくの字に曲げる。
……綺麗に入ったな。
まさか、ここまで綺麗に入ると、逆に驚いてしまうぞ。
……いや、違うな。
それだけ、リガーが強く争っていった……と言う事か。
なんとなくだけど……私は悟ったのだ。
この世界の私が感じている葛藤がある様に、リガーの精神にもまた……この世界に存在するリガーの精神がヤツの中にあり、そして大きく暴れていたのだろう。
この強い精神……意志が、リガーの精神を完全に支配する寸前の所で、ギリギリ止まらせていたんじゃないかと思う。
そう考えると……リガーの中に存在している、この世界のリガーも私の事を……。
……っと、いかんいかんっ!
そんな事を考えると、私の中にいるリダが、妙に意識して……心拍数を無秩序に加速させてしまう要因になる!
一瞬の判断ミスが、そのまま命取りになり兼ねない危機極まる状況で……ドキドキが止まらないのはマジ勘弁っ!
もう……本当に本当に、ここの世界のリダはリガーが好き過ぎだろ!
そう言うのは、この一件が終わった時にでもやってくれませんかねぇっ⁉︎
この世界の私とリガーは、どうしてか全くの別人として存在しているから、普通に付き合う事も出来るし、その気になれば結婚とかだって可能だろうし!
ともかく、マジでやめてくれ!
超炎熱爆破魔法!
かなり切迫した心境と……圧迫されているんじゃないかと勘違いしてしまう心臓の動悸に苛まれながらも……私はくの字になっていたリガー目掛けて必殺魔法を発動させる!
ドォォォォォォォォンッッッ!
瞬間、周囲が吹き飛ぶ程の、強烈な爆発が巻き起こった。




