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リダさん、死闘の果てに!【5】

 ......そう。


 もしかしたら、私がもう一つの宇宙意思に飛んで行った可能性は十分にあった。


 そして、そのちょっかいを掛けて来ている宇宙意思こそ......伝承の道化師なのだろう。


 そこあったのは、ほんの少しの差。

 もはや、誤差にも等しい細やかな差異によって、私とアインに展開して行くその後は、大きく変わってしまった。

 逆に言うのなら、今のアインと同じ運命を辿っていたのは......私かも知れないのだ。


 ......。


 そう考えると、なんか......いたたまれないな。


 しかし、過去はどうあれ、今のアインをそのままにしておく訳には行かない。


「アインは......闘技場にいるんだな?」


「はい......恐らく空間転移魔法テレポートで闘技場に侵入して、そのまま陣取る形で居座っている模様です」


「分かった」


 短く、頷きだけを返した。


 今の私がアインにしてやれる事は......せめて、これ以上の被害を増やす事なく、ヤツのいまわを見届ける事だろう。


 アイン......お前も言ってみれば、悲しい被害者なのかも知れない。

 決して好きで来た訳でもない来世の世界で、やりたくもないゲームをやらされた、悲しい被害者だ。


「行こう......アインの元へ」


「はいっ!」


 毅然とした顔のまま言う私に、ユニクスはとっても強い意思を持ったハキハキとした声を私に返して来たのだった。




  ●○◎○●




「ルミは寝てるのか?」


 闘技場に行く途中、私はそれとなくユニクスに尋ねて見せる。


「実際にルミ姫の部屋に向かった訳ではないのですが、恐らくそうだと思います」


「そうか。それなら寝かせておいた方が無難だな」


「はい、私もそう思います」


 私の言葉に、ユニクスは穏和な笑みを作ってみせた。

 

 そこから、私達は闘技場の前にやって来た。

 程なくして、私はユニクスを制止する。


「すまん、ユニクス。お前は取り敢えず、ここで待っていてくれないか?」


「......え?」


 ユニクスは露骨に眉を寄せた。

 まぁ、ユニクスからすれば私の言ってる事は謎でしかないかも知れないな。


「何をおっしゃいますか! 私は、リダ様と運命を共にする事を天命であるとまで考えているのですよ!」


 それは大仰だ。

 ついでに言うのなら、だ?


「お前が私と一緒に死なれては困るから、ここに残れと言っているんだ」


「リダ様......?」


「いいか? 仮に私が死んだとして。更にアインが暴走してこの学園を襲ったとしよう?」


「そんな最悪の事態など、考えたくもありません!」


 ユニクスは目を背ける様に叫んだ。

 私は少しだけ苦笑する。


「確かに、考えたくはないよ、私も......だけど、常に最悪の事態を考えて行動する必要が、今はあると思うんだ」


 その上で言いたい。

 私はいつも以上に真剣な顔になってユニクスへと答えた。


「お前は、最期の砦にして最期の希望だ。私がもし敗れて死んでしまっても......次世代のお前が......いや、お前達がしっかりとみんなを守ってやってくれないか?」


 切実な想いをぶつける感じで答え、そして頭を下げた。


「......」


 ユニクスは無言になった。

 きっと、今でも尚、その心境は複雑で......ぐちゃぐちゃな気持ちが雑多に混ざり過ぎて、言葉を出す事が出来ないでいるのだろう。

 

 そうと判断した私は、やや間を置く形でユニクスの口が動くのを待った。

 しばらく、私とユニクスの間に沈黙が生まれる。

 

「分かりました」


 ユニクスの頷きによって、沈黙は破られた。

 断腸の思いで言っているのが、近くで見ていた私にひしひしと伝わって来る頷き方だった。

 瞳から出た涙が頬を伝い、歯を激しく食い縛っている。

 本当は頷きたくなんかない......これで死ぬ事になるのなら、一緒に喜んで死んでやる!


 けれど、それを私は望んでいない。


 理由は先の通り。

 ユニクスは......間違いなく、私の次の世代を担うだろう、新時代のリーダーになる存在であるからだ。


 まだ死ぬと決まった訳ではないし死ぬつもりもないけど、仮にここで死ぬ事になったとしても......私はきっと後悔はしない。


 私には、次の新時代を生き抜く事が出来る、頼もしい仲間がいるのだから。


「じゃあ、ちょっと行ってくる」


 自分でも不思議なくらい、陽気な笑顔を作ってた。

 本当、どうしたんだろうな?

 現状は陽気な笑顔なんか作ってる場合じゃないと言うのに。


 でも、それでも......やっぱり笑顔が作れた。

 きっと、それはユニクス、フラウ、ルミがいてくれたからだと思う。


 よし! 頑張ろうっ!


 気合いを入れ直し、私は闘技場の中へと入って行くのだった。

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