ドーンテン一族なのに、何故か胸元が大きい女性がいる世界【21】
ただ、これで確実に分かった事がある。
カリンは、この世界では当たり前の当然の様に実在している人間だ!
正直に言うと、実は少しだけ私はカリンを疑っていた。
あんな胸のデカいドーンテン一族は居ないからな? やっぱり異端過ぎるから、てっきり私は実在しないヤツなのかと………ん?
い、いや! 胸のあるドーンテン一族なら、私が居るし!
胸があるのは、カリンの専売特許って訳じゃないしっっ!
……はぁはぁ。
くそ……また、ちょっと無駄に興奮してしまった!
と、ともかく、地味に不本意ではあるのだが、私のボディ・ラインが気に食わないとか言う、途方もなく下らない理由から、わざわざこの世界までやって来ていた模様だ。
マジふざけんなぁぁぁっっ!
しかし、そうなると……だな?
N65パラレルを叩くには、色々と骨が入ると言う事になる。
カリンは、私にとって本物の妹だったのなら……今のカリンと戦う訳には行かない。
N65に乗っ取られているだけの話で、カリンには罪などないからだ!
しかし、今のN65はカリンを完全に乗っ取られており……見事に融合されている。
まずは、この融合をなんとかしなければならない。
恐らく、これは私の予測に過ぎないのだが……N65とカリンの精神は完全に融合されてはないと予測している。
今の私と同じ状態……半融合だったか? ともかく、そんな状態なのではないのか? と私は予測している。
現状のN65にとってのベストはカリンかも知れないが……広い広い、この並行世界には、それ以上にベストな身体が眠っている可能性がある。
……そう。
例えば、私の巨乳バージョンとか!
………。
まぁ、それはヨシとして。
無限に存在するだろう並行世界の全てを把握している訳ではないだろうから、今のカリンは飽くまでも暫定でベストだと考えているに違いない。
そうであれば、着脱可能な状態にして置く必要がある。
完全に融合してしまったのなら、よりベストな身体を見付けても、すぐそっちの身体へと移行するのが大変になってしまう。
なら、今後の事を想定した融合の仕方をするのは私じゃなくても予想出来る物だし、私とこの世界のリダの精神を半融合にしていたのも、きっと試験的な実験だったのかも知れない。
話を聞く限りだと、伝承の道化師から新能力を得たのは、つい最近である様子だし……色々と実証または実験してみたい段階なのかも知れない。
まぁ、その実験に付き合わされる身にもなれ!……って言う話なんだけどな⁉︎
どちらにせよ、ふざけた話だ。
ただ、その実験があったお陰で、私とこの世界のリダとを簡単に引き剥がす事が可能らしいので……まぁ、そこは良かったと思う。
また、半融合であれば、変態が簡単に引き剥がす事が出来るらしいのだ。
話によると、より上位のパラレルであれば、普通に可能になる特殊能力らしい。
だから、伝承の道化師によってパワーアップしたのなら、自然の成り行きで手に入れていてもおかしくはない能力でもあるんだそうだ。
ついでに言うのなら、自分の管轄する管理エリアの人間の意思を自由に操る事が可能になる能力も……だ。
ここが二番目の大変ポイントでもある。
私はN65の管理区に存在する人間だ。
つまり……私は、ヤツに操られる存在になってしまう。
しかも、魔法の様な物ではない為、抵抗すると言う様な事も出来ないんだそうだ。
……くそ。
なんて反則的な能力なんだよ!
しかも、この世界の人間であったとしても、その世界の人間にNのエリア……つまり、私の世界に住む人間の精神を混ぜる事で、強引に有効化する事が出来るらしい。
本当に厄介過ぎる能力だ……一方的に相手の精神を操る事が出来る時点で大問題だと言うのに。
変態が、私をトウキ郊外に匿おうとした理由はここにある。
現状を踏まえると、パラレルにとって私は足手纏いにしかならないと言う訳だ。
……そうか。
アリンやリガーの二人がおかしかったのは、N65パラレルの能力によって操られていたからなのか。
………。
……あれ?
そこまで考えた所で、私は気付いた。
あの時、私はアリンに刺された。
それは、アリンがN65に乗っ取られたカリンの操り人形になっていたからだ。
そうとも知らず、間近で背中を見せていた私は、そのままアリンに刺されてしまった。
……なんで、アリンだけではなく『私も操らなかった』のだろう?
アリンを操る事が出来たのは……きっと、私の知っている三歳児のアリンちゃんが、この世界のアリンの中に混じっていたからだろう。
ただ、記憶のメインはこの世界のアリンであった為、私の知っている方のアリンちゃんが前面に出て来なかっただけに過ぎない。
その証拠に、N世界の人間しか操る事が出来ないN65がしっかりとこの世界のアリンを操っていた。
……でも、その理屈で行くのなら、どうして私だけ刺されたのだろう?
普通に操れば、むしろ私を駒として扱う事が出来て、都合が良いレベルではないのだろうか?




