ドーンテン一族なのに、何故か胸元が大きい女性がいる世界【20】
「……と、ともかく……です? はぁはぁ……わ、私が……はぁはぁ……この場所にやって……来たのは……はぁはぁ」
「……いや、なんで瀕死になってるんだよ? お前は?」
「これは瀕死ではありません。単純に、リダさんのパンツ姿を妄想してたら興奮して動悸が……」
ドォォォォォォォンッッッッ!
だから! そう言う小ネタはもう良いんだって!
額に怒りマークを付けた状態のまま、私はパラレルを爆破した。
……でも、ケロっとしていた。
……くそ。
やっぱり、次回は補助スキルを発動してから撃ってやろう。
「そろそろ真面目に話せ? 私をここに匿う理由を言え。ちゃんと私が爆破したくならない様な、真っ当な理由を、だ!」
「N65は、自分の管轄ないしその周辺区域に生きている者の意識を自由に操る事が可能だからですよ、リダさん」
「……なぬ?」
「本来のパラレルには無い能力ではありますがね? 恐らく、伝承の道化師によってパワーアップした結果、新しい能力が目覚めたんだと思います。この関係上……同じNから始まる並行世界の人間であれば、その意思を自由に扱う事が可能になります……ま、ここもN65にとっては一種の試験だったのでしょうね? この世界がM776である所からも予想が付きます。そして、ヤツは『まだ』Mの管轄区の人間を意のままに操る事は出来ないと言う事を知った」
「……つまり、ヤツは実験も兼ねてこの世界に私達を飛ばしている……と?」
「そう言う事です。Mの管轄区の人間を操る事が出来るか出来ないか? また、操るとするのなら、どの様な改良が必要か?……そして、次がリダさん達が大きく関わって来ます。M世界に住む者と同じ人間の精神に『N世界の人間の精神を混ぜたら』どうなるか? その実験も行いました」
「さながら人体実験だな……」
人の命をなんだと思っているんだよ……全く。
ただ、これでN65だか言うパラレルが、私達をこの世界へと『精神だけ飛ばした』理由も理解したよ。
全て、こいつの実験体として利用されていた……と言う訳か。
ハチャメチャに迷惑な話だなぁ! もうっ!
「そして、もう一つ……この世界にヤツが求めていた物があります」
「まだあるのか……?」
尚も続くパラレルの言葉に、私は辟易した顔になってしまった。
「それは……身体です」
「身体?」
「そうです。ヤツが元来持つ身体は最下級のパラレル……伝承の道化師から能力を貰ったとしても、その能力を十分に使いこなすだけの器を持っては居なかった……よって、ヤツは伝承の道化師から得た能力をしっかりと使い熟す……熟せるだけの身体が欲しかった」
「……それで、この世界に?」
「そうです。この世界にはNの並行世界には存在しない……カリンが居ます。ここが大きな! とてつもなく大きな拘りがあるのです!」
「……? そうなのか?」
私からすれば、どんな拘りがあるのか? サッパリ見当も付かない。
そもそも、強靭な肉体が欲しいとか……そう言う理屈で良いのなら、私の身体ではダメだったのだろうか?
うーむぅ……。
もしかして、カリンには私の身体と言うか、潜在的な能力があったのだろうか?
パラレルの話を聞く限りだと、どうやら『器』の部分が重要だった模様だし。
……と、こんな事を考えていた頃、パラレルが超真剣な顔になって叫んだ。
「胸です! 胸なのです! カリンと言う存在はかなり希少な存在なのです! このMエリアでしか生まれない、実に希少な! 希少過ぎる存在! つまり『胸のあるドーンテン一族』なのです!」
超龍の呼吸法レベル5!
超炎熱爆破魔法ォォォォォォォォッッ!
カッ…………ドォォォォォォォォォォォォォォンッッッッ!
その日、トウキ郊外にある、長閑な農村で、巨大爆発が起こったと言う三面記事がトウキ新聞の朝刊に掲載されたらしいが……余談だ。
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全く本気でムカつくんですけどっっ⁉︎
結局の所、N65とか言うヤツも変態だった!
何が、胸だよ⁉︎
胸のあるドーンテン一族の世界だよ!
つか、この章のタイトル回収の為に、わざとやってんじゃないのかっ⁉︎
……はぁはぁ!
いかん、あまりにも頭に血が昇って、少し興奮してしまった。
と、ともかく……なんて最低なヤツなんだよ!
胸のあるなしと言う尺図で物を語るのであれば、私の身体で十分じゃないかっ!
そもそも、カリンだってまだそこまで大きいって訳でもあるまい!
そりゃ……若干15歳にして、もう既にDカップの域まで到達してはいるけど!
トップ80の大台はおろか、85のラインまで到達しそうな所までやって来ているから、私よりはちょっと…………うん、ほんのちょ〜っとだけ? 少しだけ大きいかも知れないけど!
たったそれだけの為に、わざわざ並行世界を渡って来るんじゃないよっっ!
私は心の底から呆れ……そして憤慨していた。




