ドーンテン一族なのに、何故か胸元が大きい女性がいる世界【18】
「並行世界を勝手に行き来した罰……みたいな事をN65パラレルは言ってますが、そこでリダさん達が気に病む必要はありませんよ?……そもそもの根本を意図的に操作したのは、他ならないN65パラレル本人なのですから」
「どうやら、その様だな……」
まぁ、私としてはその事実で、幾分かは肩の荷が降りた事だけは間違いない。
結局の所、私達にも一定の非があると思って居た事実が、これでほぼ無くなった様な物なんだからな。
「……さて。その上で言いましょう。伝承の道化師によって急激な能力を上昇させたN65パラレルは、意図的にあなた達に並行世界を移動する事が可能な装置を作らせる事で、大義名分を得るのです」
「大義名分?」
「そうです。如何に並行世界を管理する者であったとしても、他の並行世界へと干渉する権限はありません。もちろん、無許可で他の並行世界へと移動するなど、言語道断です」
「……そうなんだな」
パラレルの言葉に、私は曖昧ながらも相づちを打った。
正直、ここらは私には良く分からないし、特段興味もなかったからなぁ……。
「しかし、他の並行世界へと移動する愚か者が居る……となれば、他の並行世界へと向かう必要があります。何故なら、他の並行世界へと向かった者を強引にでも捕まえて、元の世界へと戻さなければならないからです」
……まぁ、管理者だからな。
そのぐらいの事はやらないと行けないかも知れない。
「結果……N65パラレルは大義名分を得ました。尤も、彼の行った事は、完全なる規律違反の何物でもない行為ではあったのですが……」
「そうだろうな」
私は短く頷きだけを返した。
仮に他の並行世界へと向かう……または、一定の干渉を行う権利を得たとしても、その目的に沿った物でなくてはならない。
だからこそ大義名分が成立すると言う物だ。
しかし、パラレルの話を耳にする限りでは、明らかに目的とは全く違う事をしている。
いや、そればかりか……干渉しなければならない世界とは、全然違う並行世界への干渉までしている。
これは、大義名分の内容を加味しても、筋が全く通っていない。
「恐らく、N65は色々と試していたのかも知れませんね? どの程度までの規律違反であれば『我々が動かない』と思ったのか?」
少し考える様な仕草をして言うパラレル。
……?
「……どう言う事だ?」
「そのままの意味ですよ……N65パラレルも、規律違反を起こせば他のパラレルから何からの警告ないし罰則を受ける事は知っていました……が、それが具体的にどの程度なのか? そこまではN65パラレルにも分からなかった。実際、N65パラレルは一応の大義名分を作っておりましたし、他の並行世界へと干渉する所までは『問題なく行動出来る』と考えていたと思います。問題は次です『どこまでなら規律違反をしても、他のパラレルからの警告を受けないか?』ですね?」
「普通、ちょっとでも規律に違反すれば、警告程度ならやるんじゃないのか?」
「言いたい事は分かります。実際に警告程度なら行うと思います……が、多少であれば大目に見ると言うのは、実際に現実として起こります。規律違反と言っても軽い物から重い物までピンキリですし……無限に限りなく近い並行世界の中で、些末な規律違反まで几帳面に細かく取り締まっていたのなら、もはやそれは規律違反の宝庫になってしまいます。この様な事から、細かい部分は大目に見ると言う傾向にあるのですよ」
「……なるほど」
確かに、並行世界の数はとてつもない数になる。
抽象的に言うのなら、世界にある巨大砂漠があったとして……その砂漠にある砂粒の一つ一つが世界であったと仮定しても尚、並行世界の数の方が多いレベルだったりもするのだ。
巨大砂漠にある砂粒の数なんて……きっと、数えるのもバカらしい数だと思うけど、それ以上の数があるんだから、もう……管理するのもかなり大変である事は、パラレルからの説明を受けるまでもない。
だから……まぁ……これは、妥協の一種なのだろう。
そう考えれば、私達の世界にいるパラレル……N65がやっている行動と、その理由が段々と見えて来た。
つまる所、警告や罰則を受ける『規律違反のライン』が、どの程度なのかを知る為、軽い規律違反から順に試していた訳となる。
きっと、これで大丈夫であったのなら、もっと重い規律違反をするつもりだったのかも知れない。
そして、それも大丈夫であるのなら、更にもう一つ上の物を。
こうやって、徐々にエスカレートさせて行く予定だったんじゃないのかな?……と、私なりに予測する事が出来た。




